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第107話 私、自宅に晶露様を招く

 若君への外出緩和交渉後に、やってきた土曜日。

 今日この日、我が家に晶露様、訪問予定である。

 晶露様は、本家のお子様である。

 本来なら我が家から車でお向かいにあがるのが、筋であろう。

 が、よりお家訪問感を出す為に、敢えてお向かえに上がらずに、玄関でお出迎えをすることにした。

「ほんじつはおまねきいただき、ありがとうございます!」

 来訪を告げるインターフォンが鳴った後。

 おそらく本家子分に抱っこしてもらって鳴らしたであろう方が、玄関の扉を開けると、緊張した姿で立っていた。ちなみにロウは今日はお留守番である。

 一緒に行きたいとだだをこねたが、今回に限り、遠慮してもらったのである。

 我が家は普通の家であるから、ロウに作用するような何かはない。

 しかしロウは、妖精という特殊な身の上である。

 万が一何かに反応して、アクシデントがあった場合、今度こそ、晶露様は完全外出禁止令が発動されてしまうであろう。

 それをさせない為にも、初回訪問は何事もなく、終えなければならない。

 という理由から、ロウはお留守番になったのである。

 許せ、ロウ。

「いらっしゃいませ。晶露様」

 本家ご子息の来訪である。

 当然家族総動員で、お出迎えである。

 本来であれば、父母が率先して対応する筈であるのであるが。

 なぜか顔に菩薩のような笑みを浮かべたまま、私から一歩引いて立っている。

 まるで私たちは大海の指示があるまでは、あくまで護衛として立ち会うだけですから!と主張しているようだ。

 まあいい。

 それは前日の夜にも言い渡されていたから、呆れはしても驚くまい。

 両親も筋金入りの縦社会の住人なのである。

「さあ、中へどうぞ」

「ありがとうございます」

 晶露様は私の言に従い、玄関の中へ、一歩入る。

 そうしてから、腕に抱えていた、ケーキの箱をすっと私に差し出した。

「こちらをどうぞ」

「ふふ。ありがとうございます。後でみんなで食べましょうね」

「はい!」

 晶露様は友達の家の訪問、私が友達というのはおこがましいかも知れないが、それは置いておくとして。

 知人宅への訪問は初めてだと伺い、ここまでの一連の流れをしおりに作り、練習もすませている。

 今のところ、順調である。

「晶露様、よくおできになられましたよ」

 私が頭を撫でつつ、そう褒めると、晶露様のお顔がぱあっと輝いた。

「ほんとうですか!?よかったです!」

 うんうん。素直な反応でよき。

「ぼく、きのう、ねえさまのおうちにいけるとおもうと、ねむれませんでした!」

 ああ、その気持ちはわかる。友宅へと行けると思うと、わくわくがとまらなかったのであろう。

 それで当日体調を崩してしまうこともある。子どもあるあるである。

「それはいけませんね。だるさや疲れはありませんか?」

「だいじょうぶです!ぜんぜんへいきです!」

「そうですか。ああ、失礼しました。いつまでも玄関で立ち話をしてしまって、さあ、靴を脱いで中へとお入りください」

「しつれいします!」

 晶露様は促されるままに、玄関から家の中へと入った。

 靴を脱いだ後、靴を左側にそろえて置くのを忘れない。

 なんとできたお子様であろうか。

 ここまでしつけを徹底しなくてもよかろうよ!本家よ!

 幼児など、ぶんぶんと足を振って、靴を飛ばしてもいいのである。

 うちに遊びに来た時位は、自由奔放に過ごしていただこうと、私は心に誓ったのである。

「まずは我が家の中を案内しますね」

 私は晶露様と手を繋ぎ、廊下を歩く。

 本家に比べて遙かに狭い我が家ではあるが、通常の庶民の家よりは部屋数が多いと思われる。

 居間、キッチン、そして我が部屋を案内した後、外に出て、庭を見て回る。

 うちの庭。本家に比べるのもおこがましいくらい狭い庭ではある。

 庭の見所としては池である。地下から水を引いており、循環はばっちりである。

 そこの住人は鯉ならぬ、金魚である。

 我が家には鯉よりも金魚ぐらいが似合いの家であり、池なのだ。

 それでも晶露様は金魚を、それはそれは嬉しそうに、きゃっきゃっと眺めて居られた。

 笹舟なども浮かべてみたりして、大層堪能されていた。

 その後居間で一休みとして、恐れ多くも晶露様がお持ちになってくれたケーキを味わった。

 そこで晶露様のお顔が、少し赤いのに気づく。

 私はすっと晶露様に近づくと、そっとおでこに手を当てる。

「晶露様、少しお熱がありますね」

「いえ、ないです。すこしあついだけです」

 いや、それはもう熱が出ている証拠である。

 その後もう少し我が部屋で戯れる筈であったが、急遽本家へと帰宅することになった。

「ぼく、へいきです!もうすこしここにいたいです!」

 と、珍しくだだをこねたが、許される訳もなく。

 本家子分の松也さんに連れられて、泣く泣く帰宅の途についたのである。

 少しして容態を松也さんに電話で尋ねたところ、知恵熱とのことである。

 これも、幼児あるあるである。

 ともあれ、診断を聞いて安心とともに、ほっこりしたのは、晶露様には内緒にしておこう。

 こうして、晶露様の初めての我が家訪問は、しおり通りに行かずに終わった。

 それもまたよい思い出になろう。

 はっ!これはアクシデントになるのであるか!?

 不可抗力であり、子どもあるあるの出来事である!

 はっ!前回の外出でも不可抗力にも関わらず、外出禁止令が出されたのである!

 若君よ!どうかそれはやめて欲しい!


いつもお読みいただき、ありがとうございますv

もし少しでも続きが読みたいっと思っていただけましたら、☆をぽちりとお願いいたします!

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