第106話 私、晶露様にグッドニュースを伝える
私は若君の部屋を退室すると、晶露様のお部屋に戻った。
扉を開けると、晶露様がロウと一緒にテレビを見ていた。
その横顔がちょっと寂しげに見えるのは、私が負い目を感じているからであろうか。
「晶露様」
私は部屋に足を踏み入れつつ、声をかける。
「ねえさま」
すると、晶露様はぱっとお顔を輝かせて、こちらに駆け寄ってきた。
可愛すぎる。
これから告げるニュースは、きっと更に晶露様のお顔を明るくしてくれるであろう。
私は晶露様と並んで、ソファに座る。
ロウはテレビに夢中で、こちらに気づいた様子はない。
そんなに面白い番組をやっているのか?
まあいい。好きなだけ見ていろ。
「ねえさま、にいさまへのごようじはおわったのですか?」
「はい」
「それでしたら、これからわたしとおはなしをできますか?」
「ええ、もちろんです。でもその前に。晶露様、よいニュースがあります」
「よいニュースですか?」
「はい。先程若君と交渉した結果、晶露様の外出する許可が下りました」
「ほんとうですか?!」
「ええ!若君が2人とも十分反省しているだろうと」
「うれしいです!」
うんうん。その満開の笑顔が、見たかったのである。
「とは言っても、都心への外出は引き続き出来ません。週末だけ、しかも私の自宅への外出のみですが」
「ねえさまのおうちにいけるのですか?!」
なぜにそんなに嬉しそうなのか。うちには娯楽はあまりないぞ。
「え、ええ。面白みもない普通の家屋ですが、気分転換にはなろうかと思います。どうでしょう?お越しになられますか?」
「いきます!いきます!たのしみです!」
晶露様が目をキラキラさせて、思った以上に喜んでおられる。
私は、逆に少し怖じ気付いてしまう。
本家に慣れた晶露様からしてみれば、私の家など、犬小屋のようなものである。
面白みもない、窮屈なものに感じてしまうやもしれぬ。
いや、庶民の暮らしを感じられる、いい機会になるか。
「たのしみです!ねえさま、にいさまからごきょかをもらってくれて、ありがとうざいます!」
「いえ。元はといえば、私が晶露様の待遇を悪くしてしまったのですから。それの改善を働きかけるのは当然でございます」
「いえ。それはちがいます」
「は?」
「ぼくがねえさまとであわなければ、がいしゅつなどまったくできぬままであったでしょう」
ああ、いけない。地雷を踏んでしまった。
確かに私との出会いがなければ、憑きものつきとして本家に隠されたままであった可能性も高い。
こんなお小さいうちから、寂しい思いをずっとしてきたのである。
その傷は未だに塞がっていないのかもしれない。ならばそれを塞ぐ手助けをしなくてはならぬ。子どもは笑っていなければならなのだから。
かく言う私もな!
「そうですね。私も晶露様と出会わなければ、親と離れて色々な体験ができなかったでしょう!晶露様に感謝しなくては!」
「ぼくとであって、ねえさまもたのしくなったのですか?」
「もちろんですとも!そしてこれからも楽しいことをどんどん増やして行きましょう!」
「はい!」
「では!しおりを作りましょう!我が家に来て、何をしたいか?項目を出していかないと!土曜日までに仕上げないと行けませんよ!さあ、紙とペンの用意をしましょう!」
「はい!」
晶露様はぴょんとソファから飛び降りると、机へと向かった。
「なんだ?どうした?俺もまぜろ!」
テレビに夢中になっていたロウがここで遅まきながら、参加してくる。
どうやら、興味をひいた番組は終わったらしい。
ちょうどいい。
これから具体的なしおりの作成だ。
ロウも参加するがいい。
引き出しを開ける晶露様のお顔。
憂いない。
ふう。これで、松也さんからのプレッシャーはなくなるであろう。
私、いい仕事をしたのである。
誰か、私を褒めて欲しいのである!
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