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第105話 私、若君に外出緩和を交渉する

「いかがでしょうか?」

「全面外出禁止の緩和を願うか」

 私は待った。春先に初遠出をした私たち。その時に、プチ神隠しにあい、それが晶露様を危険にさらしたと見なされ、外出禁止を言い渡された。

 私と晶露様はそれに耐えて、2ヶ月あまり大人しく過ごしていたのだ。

 いつまでと言われれば、そこまで我慢すればと思えるのに。期限が区切られていないと、一層に堪えた期間であった。

 そして夏休み寸前のこの時期。

 頃合いであろう。

「外出先は、お前の自宅のみか」

 そう、近くにある親戚の家に、ちょっと遊びに行くていである。

 これならば、いいであろう?若君よ。

「はい。晶露様は隠しておられますが、外出を禁止されてからずっと心を落ち込ませておりまして。それを私に隠そうとしているのが、さらに痛々しく」

 少し大げさに言ってもバチはあたるまい。気落ちしているのは本当であるからな!

「その原因は、お前がしくじったからだな」

「は。それは重々反省しております」

 認めます。申し開きをしたところで事実は変わらない。私の考えの浅さが晶露様を危険、いや危険まではいかぬまでも、護衛もなしな無防備な状況においてしまったっことは、否定できない。

 それイコール即外出禁止にまでなるとは思わなかったのもまた、私の人物を見る目の浅さである。

 正直に言おう。ここまで若君が、厳しく対応するとは思わなかったのである。

 若君を甘くみていた、私の不徳である。

 それを重々反省する私である。

 確かにまだ4歳とお小さい晶露様である。

 ご家族以外との外出などあまりないのが普通かもしれぬ。

 いやな言い方であるが、若君の御身に何かあった場合に、代わりに一族を率いていかねばならぬ大事な身体である。

 用心をするならば、外出を制限するのは仕方がない。

 ならば、ご家族が連れ出してくれたらいいのであるが、そんな暖かい家族関係ではない。

 加えお役目があるご家族である。若君も含め、大変ご多忙なのだ。

 だからこそ、若君が特別に許可を出してくれたであろう。

 私はそれに応え、問題なく、遠出を終えなければならなかったのだ。

 私はそのワンチャンスを、しくじってしまった。

 くう。晶露様、申し訳ありません。

 お前は大雑把なところがあるからな。

 私がいないのだから、自分で抜けをカバーしなければなるまいよ。

 私の前世の友の小言が聞こえる。

 うむ。まさにその通り。ぐうの音もでない。

 しかし過ぎてしまったことは、どうしようもない。

 少しでも待遇を改善するように、尽力しなければなるまい。

「幸いにして、私の自宅は、ご本家宅から大変近い位置にございます」

 晶露様の為に、本家が用意した家だから、当たり前である。

「加え、我が両親は、本家経営の会社にて勤めておりますれば、護衛もできまする」

 護身術などの武術はともかく、マナーなどはまだまだらしいがな。

「ふむ」

「私が恥を忍び、こうしてご提案しているのは、晶露様の笑顔を取り戻したいと願えばこそでございます。晶露様は若君を大変慕っておられます。その為、それに背くことはしますまい」

「慕う慕わないの問題ではない。俺の命令には従わなればならぬのだ」

 相変わらず、若君は固いのである。

 私は知っている。そう言いつつも、若君は弟君である晶露様を、大変気にかけておられることを。

 今回の遠出で、晶露様が若君にと買った土産を、大事にしていることも知っているのである。

 それは晶露様が母君から愛情が与えられないことも、大いに影響しているだろう。

 どうにも不器用な若君である。

 しかし私は非情な女児。そこを突かせてもらう。

「しかり。ですが、それをぬいても、弟君から溢れる程の親愛の情を頂いておられるのはおわかりかと。そんな弟君に、今喜ぶお顔をさせられるのは、若君をおいてござりませぬ」

 その言葉に、若君が眉間に皺を寄せる。

「お前は本当に口がうまい」

 ふふふ。口がうまくなければ、前世の軍隊生活で、配給を多くぶんどることができなかったのだよ。

 戦地において、食事は唯一の楽しみである。

 それはお前だけだよ。周囲は、酒に、女に、楽しみを見いだしていただろう?

 背中を預けた戦友の声が聞こえる。

 酒は頭がぼうとするから、飲みたくない。女性はまあ、人それぞれである。

 だから、お前はなんの未練もなく、潔く死んだんだぞ。そこを治せ。

 うん。まったく私の脳内妄想である戦友は、どこまでも真をつく。

「……よかろう。お前も含め、晶露も十分反省しているようだ」

「はっ。深海に沈むがごとくに、猛省しております!!」

「ふん。最初は日帰り、頃合いもみて、泊まりも許す」

「誠にありがたきお言葉!晶露様もさぞお喜びになられるでありましょう!!」

 なんと!日帰りだけでなく。お泊まりも許可いただけるとは!

「その代わり、本家の護衛も1人連れていけ。泊まる部屋はあるだろう?」

「はっ!問題ございません!」

「今の言葉通り、問題を起こすなよ?次はないぞ?」

 私は知っている。それフラグを立てるというらしいと。

 やめて欲しい、若君!

 私はその突っ込みをぐっと飲み込み、はっきりと言い切る!

「かしこまりまして!必ずや無事に何事もなく!お過ごしいただけるように、勤めます!」

 やったぞ!晶露様!外出許可をもぎ取ったのである!

 あれ?私ももしかしてフラグを立てたのであるか?!



いつもお読みいただき、ありがとうございますv

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― 新着の感想 ―
はっきり言って、本家および分家の人間は考え方(人としての本質)がおかしいです。 齢6歳の大海に全ての責任を押し付け、自分たちの責任をすべて転嫁しています。 本来、親、兄弟がその愛情のもと保護すべきこと…
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