第104話 私、若君と禅問答
「本日はお時間をお取りいただき、ありがとうございます」
そこで深々と頭を下げる。
今居るのは、恐れ多くも若君のお部屋である。
通常若君が私と話をする時には、晶露様の部屋を使用することが多いのであるが、今回は晶露様を抜きに話を進めたい為に、こちらに出向いた次第である。
若君の部屋。およそ7歳児の部屋とは思えない作りである。
扉を入った先にまずは中央に応接セットが。その先には子供用の机ではなく、まさしく執務をするぞというような重厚感があるものがある。両の壁際には本棚。
私の若君の部屋に入っての感想は、遊びがない部屋である。
よく見ると、入って左側の奥に扉がある。おそらく寝室へと続く扉かと思われる。
その奥のお部屋にはどうか、若君が安らげるものがあるものと思いたい。
私は招かれるままに、ソファに座る。
若君、働き過ぎである。
どうか、少しでも遊びを覚えて欲しい。
「なんだ?その憐れむような目は、やめろ」
「は、申し訳なく!」
いや、この部屋が7歳児の部屋と言われたら、悲しくなるのは、正常な反応であろう。
しかし、今は頭を切り替えるべきか。
「いい。それより要件をいえ」
「ははっ」
「……相変わらずな物言いだな」
すまない。切り替えると言いつつ、胸にこみ上げるものがあって、言葉にまで気を遣う余裕がない。
加え、いくら許嫁候補であるとはいえ、相手は一族の上澄み、それもほぼほぼ頂点におわす方である。翻って自分は底辺を地で行くものである。
個人序列を考えれば、直接話しかけるなど、できないお方なのである。
大げさなと思われるかもしれない。
しかし、常に弁えておかないと、大変なことになるのは、体験上身にしみているのである。
「おい。何を遠い目をしている。早く話せ」
はっ。また考えに集中してしまった。
「はっ。申し訳ございません!」
「お前との話し始めは、いつも手間取るな。俺は忍耐を試されているのか?」
「試そうなどとは!」
とんだ濡れ衣である!私は誠心誠意、序列を意識し対応しているだけである。
「はあ。早く話せ!」
「はい!」
私は若君の忍耐の糸が切れぬうちに話し出した。
意味のない言葉のやりとりだけで終わってしまいました。
ですが、こういった大海と篁のやりとりも好きデス。




