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第103話 私、本家子分に厳しい眼差しを向けられる

 ほとぼりが冷めるまで、少し時間をおく。

 その考えの(もと)に、私と晶露様は学園に通い、本家で共に過ごすという、平坦な日常を過ごしていた。

 若君の心を和らげる為に、そーっと大人しくしていたのである。

 説教されたのにも関わらず、まだそれが薄れないうちに、こちらからの要望を強く押し出すのは悪手。

 それくらい私は心得ているのである。

 えっ。外出禁止令を解いてくれと、事ある(ごと)に若君に迫っていたのは誰かと?

 こほん。禁止令を出された直後は、焦りもあり冷静でなかったのである。

 若気の至りと見逃してもらいたい。

 今は本当に大人しく日常を過ごしているのである。

 とはいえである。

 少しでも早く改善したいとも思っている。

 時間は有限。若さゆえに自由に動けるのも限りがあるのである。

 大人に近づくにつれて、制限されることは増える。

 ならば、怒られないぎりぎりのところを狙って、行動すべきなのである。

 そう晶露様も徐々にお元気になられているが、やはりどこかしょんぼり感が残って居る。

 これもそのままにしておけない。

 それに、本家子分、特に松也さんの視線が鋭く、辛いものになってきた。

 私は、本家子分、松也さんからの要望も熟慮しないといけないのだ。

 なぜに私は引き受けてしまったのであるか。

 はあ。私はすでにいくつかの難問を抱えていると言うのに。

 ここで引き受けるに至った経緯をお話しておこうか。 

 時は遡り、新宿御苑の帰り道。

 車中での一時(ひととき)である。

「晶露様、お疲れではないですか?」

「はい。だいじょうぶです」

 そう返事をしながらも、少しトロンとしている晶露様。

 今日はお昼寝をしてないから仕方がなかろう。

「晶露様、もうお家に帰るだけです。少しお眠りになってください」

 私はそう言いつつ、晶露様の頭をぽんぽんとたたく。

 本当はお膝を貸したかったのであるが、チャイルドシートで固定されているので、それもままならない。

「わかりました。ではすこしだけ」

 今度は素直に目を瞑ってくれた。

 やはり疲れの限界だったのだろう。

 すぐに寝息が聞こえてくる。

 その寝息が私の眠気を誘う。

 私もまた幼児である。昼寝は必要である。

 晶露様に続き、眠りの船出に出ようとした時。

 それを引き留めるように言葉が響いた。

 続いておけばよかったのにと思ったが、後の祭りある。

 その一言とは。

「ありがとうございました」

 本家子分の松也さんからの感謝の言葉。

「え?」

 私は眠いながらも、向かい側に座る松也さんに顔を向ける。

「晶露様がこんなにも楽しそうにしているのを見るのは、初めてでございました。これも大海様のおかげでございます」

 そう告げると、深々と頭を下げてきた。

「頭を上げてください!」

 松也さんは分家序列からいっても、個人の序列からいっても、私より上である。

 学園において私は異能は低位とされた。つまりは底辺である。

 私が松也さんに傅かれているのは、若君の筆頭許嫁候補という肩書きだけでである。

 後、晶露様のお世話係としても一目置かれているかもしれない。

 けれど、それもいつ外れるかわからない。外れた場合、立場は逆になるのは必定。

 調子に乗ってはいけないのである。

 晶露様の付き人である松也さんは、その立場からか、積極的に自分の意見を言って来たりしない。

 それでも晶露様に仕えてきて、情もあるのだろう。

 だからこその私への言葉だ。

 格下への私へ、頭を下げる。

 それはある程度、私を認めてくれたということだろうか。

 それとも若君の筆頭許嫁絵候補としてではなく、あくまで、晶露様へ仕える同僚としての承認かもしれない。

 できればそうであって欲しい。

 私は端から、若君の嫁になる気はないのである。

 同僚と認めてもらったほうが嬉しい。

 だからこう答えよう。

「これからも、晶露様が笑って過ごせるよう、微力を尽くします」

 本家から出禁を食らわない限りは、そうしようと思ったからな。

 私はそこで限界を迎え、昼寝へと旅だったのである。

 実はそんなやりとりがあったのである。

 確かに私はそう言った。約したと言ってもいいだろう。

 なのにだ。端からみたら、そうは見えないかもしれないが、やはり当分お出かけがないのが響いているのか、寂しそうな悲しそうな晶露様ある。

 時々、持ち帰ったお子様ランチの旗を立てた粘土を見ては、しょんぼりしているの晶露様を見ると、私の胸がずきりと痛むのである。

 そして松也さんもそんな晶露様を見て、私を責めるような目でみる。

 やめて欲しい。

 私が外出を禁止した訳ではないである。

 その気持ちを込めて見返すが、松也さんはそれがなにか?早く改善しろとの眼差しが厳しい。

 待って欲しい。私は微力を尽くすと言ったのだ。全部を改善するとは言っていない。

 私はまだ6歳であることを、忘れないで欲しい。

 とはいえ、晶露様を復活させる為の打開案を考えた。

 私だって、しょんぼりな4歳児をずっと見ているのは、いたたまれないと、考えていたのであるからな!

 そこ!やっとかという厳しい指摘は、やめて欲しいのである!

なぜか皆、大海に厳しい(笑)

いつもお読みいただきありがとうございます!

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