第八十六話 厄災は振り向いたらそこに
「と言うわけで、南の島から帰っての久しぶりの配信!!異土チャンネルの時間だーー!!」
”いぇぇぇい!!”
”まーっておりましたたぁ!!”
”でも水着イベントがスルーに近い状態だったのは、口惜しい…(血涙)”
…南の島での合同配信も終わり、戻ってきた日常。
本日は中級ダンジョンの一つ…主に、鳥系のモンスターが多く出る『バドロリピア』に、異土たちは訪れていた。
「さて、今日の配信場所は中級ダンジョン『バドロリピア』!!数多くある中級ダンジョンの中で、ここを選んだのには一つ訳があって…見えるかな?この大空を!!」
”おおー、洞窟とかがポピュラーなところが多いけど、ここは鳥が出る場所だからこそ、大空が広がるダンジョンだったか”
”外と大差ないように見えるけど、雲と空の色が逆転しているのがちょっと不気味かなぁ”
ダンジョンの形態にも様々な物があるが、その中でもこの中級ダンジョンはちょっと特殊な場所。
洞窟や塔の様相を見せるものも多いが、このダンジョンに限っては出入り口が巨大な扉であり…中に入れば、広大な草原が広がっているのである。
もちろん、ダンジョンの例にもれず階層構造は一応存在しているようで、別の場所へ向かう扉が存在しており、各階層ごとに夕焼けや夕立、台風に流星群などの様々な空の景色が見られるらしい。
そんな中で今回、異土たちが訪れたのはその中でも平和的な青空が広がる階層だが…ここに来たのには一つの訳がある。
「先日の化け物との戦闘時、一つ足りなかったことがある。…よく考えたらこの面子、まともに飛べるのがいないってことをね」
”ほぅ?飛ぶことに関して?”
”言われてみれば、確かに‥”
「いや、一応エリーゼなら手足からジェット噴射もして飛びそうだけどね」
”たしかに”
【やろうと思えば、出来なくはないデス】
戦闘力も必要不可欠だが、そこまではいらないだろう。
耐久や籠城戦ならサクラ、搦手や回復ならクロハ、攻撃力や道具ならばエリーゼ…先日の化け物に対しては誰一人歯が立たないほどのやばさがあったとはいえ、あれは例外として、全員のバランス自体は悪くはない。
異土自身も速攻や隠密が可能でもあるし、皆の得意分野を活かせば、全体のバランスは悪くはない。
ただし、見直してみると皆地上の方ばかりであり…
「配信者を行っている以上、様々なダンジョンへ赴く必要があるだろうけれども…対空戦に関しては、結構厳しかったんだよね」
道中でのワイバーン戦もどうにかなる部分はあったが…それでも、持っておいておくに越したことはない。
「画面の前の視聴者、サクラやクロハが出た運を考えれば、またあの召喚石で、空を飛べる誰かを従魔にすればいいんじゃない?とか思っているかもしれないから行っておくけど、本来ポンポンこんな風に得られるものじゃないからね。ドロップ運が良かっただけで、普通に手に入れようとしたら相当大変だし…」
”そりゃそうである”
”と言うか、異土君の運がおかしい”
「…連続で彼女たちを召喚した影響もあってか、召喚系のマジックアイテム自体が高騰して、入手が非常に困難になっているのもあるよ」
”””高騰の原因になってどうすんの!!”””
ごもっともである。耳が痛い。
そんなわけで、そうやすやすと新たな仲間を得ることは難しくなっており…聞いた話では、そのせいでより一層ギャンブル性に火をつけてしまう人がいるのか、例年よりも自己破産申請が多くなったとかそうだとか…人の欲望って怖い。
噂だと、どこかの大国である研究所が爆発したのも、資産を賄うために必要設備の部品を少しづつちょろまかした結果だと言われているらしいが…流石にそんなのは嘘だと思いたい。そんな理由だったら、何を考えているんだと言いたい。
「そんなわけで、どうしたものかと悩んだ結果…色々あって、パワーアップしたエリーゼがその解決策を作りました」
【ハイ。ご主人様のご要望にお応えして、皆の装備を対空戦闘も可能なものに、一新したのデス】
”その色々あって、の部分が気になるんだけど?”
”そういえば、確かに全員の装備が…前に比べてグレードアップしている?”
”何かこう、きらめいてるというか‥‥”
コメントにもある通り、今、異土たちの装備はほのかにキラキラと輝いていた。
【ふふふ…私、この間の姉の手も加わったのもあって、量産型ではロックがかかっていた部分が、いくつか解放されたのデス。その中に『メイドプリンター』がありまして、より精密な加工及び強力な素材を扱えるようになったのデス!!】
”何、ソレ”
【そうですね、わかりやすく言えば3Dプリンターですかネ。ミクロレベルでかつ、一部の魔法金属も扱えるようになったレッドコアブロックの合わせ技で、以前よりもはるかに性能が良くなったマジックアイテムを作り出す手段になったのデス】
”思った以上にストレートでわかりやすいかつ、やばいものだった”
”と言うか、レッドコアってあの賢者の石の!?アレでさらに魔法金属で扱えるようになったものがあるって、どういうこと!?”
”あれ?てことは組み合わせと言うか技術力次第で、これまで以上のものが・・・”
その通りである。
エリーゼの基礎スペックが引き上げられたが、その基礎の中には、彼女のコアブロックも含まれていた。
通常の量産型には支給されない代物に換装されたらしく、全性能が桁違いになったという。
【流石にオリジンやオーダーメイド、ナンバーズにカラーズ等…性能がもう比べることすらできない姉機たちには負けますが、それでも十分な代物デス】
”さらっと他にヤバい姉たちがいる情報が出たぞ”
”ええ…今までのエリーゼさんの性能だけでも相当なものだったのに、どれほどパワーアップしたの…”
ツッコミどころがあるような、深堀したらそれはそれで世界の深淵を覗けそうな言葉が出てきたのはともかく、エリーゼのパワーアップは必然的に、異土たちにとっても大きく戦力を向上させた。
そして今、わかりやすくその力を配信で見せることができるのあった…
「というか、どれだけ姉がいるの、エリーゼ」
【えっと…数えるのは難しいですネ。番号が消去された廃棄や実験機などもありますシ…】
前置きはさておき、色々と改造されまくった部分は多い
その分、異土たちの能力アップにつながるが
どのぐらいなのか…次回に続く!!
ぽこあで溶ける・・




