第八十五話 ここにカオスを一つまみ
―――一国が、ダンジョンを失った。
その一言だけでも、国としてはかなりの打撃を受けるというのは分かるだろう。
ダンジョンを世界全体で、様々な理由から管理しているとはいえ、それでも産みだす資源を考えればどれほどのものになるのかも換算しきれないものも多く、だからこそ、失うだけでも相当な損害。
しかもそれが、各国にばれないように、思惑を乗せて秘匿していたものだった場合はさらなる打撃も大きく…
「…かの、海の底に隠されていたダンジョンを失ったことで、軍事的優位性も、将来への投資も全てぱぁになったとのことだ」
「い、痛ましいものだな…やっていたことが駄目だったこととはいえ…まさか、一介の配信者に遭難で見つかったうえに、ダンジョンが化け物によって崩壊とは…」
‥とある大国の建物の中にて、諜報機関から上がってきた情報を耳にして、思わず同情の表情を浮かべる大統領の姿があった。
ダンジョンから算出できるものを利用した、世界へ向けての野望に関しては思うところがあるとはいえ、大きな資源を失ったその未来を創造すれば、国を担うものとしては痛ましいことこの上ない。
だがしかし、いなくなったのであれば、国同士の勢力争いから脱落したも同然であり、そう考えると何とも言えない表情になる。
「しかし…それでも、出てきた化け物を倒したのはあのマジックアイテム、いやその姉妹機か」
そう言いながら渡された資料を読み進め、中にお菊は言っていた画像を目にする。
空高く舞うように動き、高速で移動するメイドの姿。
情報によれば、この映像内の配信者が持つマジックアイテムのメイドの、その姉機…量産型の妹機とは異なる、想像を絶する性能の高さ。
そもそもの話として、その妹の砲撃で強固なダンジョンが貫通するのに、それが通じなかった化け物を、さらに容易く破壊するだけの力と言う時点で、色々ツッコミどころがあるだろう。
「そう、例えばインフレバトルのように…それでも度が過ぎているだろう!!」
空に浮島を出しただの、量産型のメイドを超える特注品だからこそもっと上だの、目にするだけでも眉唾物だとぶっ飛ばしたいのに、思いっきり配信のせいで証拠映像が出るわ出るわで、否定する方が難しいモノ。
幸いなことに、一時的に来ているだけであり、既にこの地を去ったとは聞くが…それでも、第二、第三のやばいメイドが出現してくる可能性だって否定できない。
「ぐぬぬぬ…このようなものがいれば、この量産型でさえ、最新技術をもってしても難しいマジックアイテムをやすやすと作れるのならば…どれほどの、国益につながるのか」
ずらりと追加で並べられているのは、そのメイド…エリーゼとやらが、自身の主である一介の配信者、異土に渡したとされる様々なマジックアイテムの数々。
本来であれば、ダンジョンからの産出以外では、現代技術の粋をもってしたとしても厳しいような代物ばかり。
それが、こうも容易く入手できるのは、正直言ってふざけるなと言いたい。
「だが、この主が幸いにして野望を抱くような輩ではないのが救いか。過去の家庭環境を見れば、どこかでゆがんでいてもおかしくはなかったが…」
「ええ、それは確かにそうですな。これでもしも、悪となれば…」
…出来れば、想像したくもない最悪の未来があったかもしれない。
そう考えると、まだこの配信者が主で良かっただろう。
それでもなお、得ているものを考えると…
「やはり、我が大国でもこのメイドと同機種を求める必要があるか…採掘具合はどうだ?」
「それが、やはり掘り当てるのは難しいかと。どうやってあのダンジョンに埋まっていたのか…」
そう、実はエリーゼが発掘されたその時から、可能性を見越してこの国はダンジョン内での採掘がおこなわれていた。
そのうえこの国だけではなく、他諸外国も同様のことをしており…確実に出ると決まったわけではないが、それでも第二第三のメイドを求め…
―――それから数日後、配信業界に一つのニュースが入った。
ある大国の保有していたダンジョンが崩壊したと…
さらっと起きたやばそうな事態
やらかしたのは何であれ、迷惑は被りたくはないモノ
触らぬ神に祟りなし…次回に続く!!
…色々あって微妙にペースダウン
まぁ、元から不定期な更新なので、そこまででもないかもだけど…




