第八十四話 ちょっとした嵐の前に
―――さて、遭難やらダンジョンやら、色々なことがあったが、元をただせば何だったのか。
「そう、元々合同配信にかこつけた、南の島でのバカンス的なものだったはずなんだけど…いつの間にか、最終日かぁ…」
【救助される時間も考えると、むしろよく間に合いましたヨネ】
ざざーんと音が鳴り響く、夕暮れの波打ち際。
そこで異土は遠い目をしながらつぶやけば、同意するように水着姿になっているエリーゼが答える。
…あの海中ダンジョンからの脱出劇に、その他騒動も何とか過ごして救助されたのは良いのだが、いかんせん当初の目的…この南の島での配信活動はほぼできなかった。
周囲への迷惑なども考えると、非常に申し訳なく…
「というか、もっと大本をただせばクロハのやらかしもあるからな」
【うっ…】
異土のつぶやきに対して、時間が経過して落ち着いたことで、少々自覚を持っていたのか都合が悪そうな声を上げるクロハ。
遭難した経緯を考えると、何とも言えないが…まぁ、それでも最終的には怪物騒動でうやむやになった部分もあるだろう。
それでも無事に全員、帰還できたのだから良しとしたい。
最終日の方も、体調を気遣ってか色々と周囲が気にかけていたところもあったが…それでもどうにか、短い時間だけでも南の島を満喫できたのだ。
「しいて言うのであれば、またクロハが暴走しないように、全員しっかり蟲系特攻の道具を調達していたことぐらいか」
【うむ、オレも鋼の鱗を活かした鎖を用意しておいたしな】
【私も、レッドコアブロックの賢者の石で、アダマンタイト製の拘束具を要しいておきましたからネ】
【皆の、私に対する評価、酷くないですか?】
…やらかしたからこそ、全員ガチ武装をしていたのは言うまでもない。
それだけのことをしたんよ、クロハ…涙目になっても、皆警戒は解いてないからね?
それはともかく、色々とあり過ぎたとはいえ、明日にはもうすぐに戻り、いつもの日常が帰ってくるだろう。
「あとは、エリーゼのパワーアップもお披露目できたらよかったけど‥」
どこがどう変化したのか、見た目だけでは判断しづらいモノ。
しかし、それでも飛躍的に全能力が上昇したのだとエリーゼは説明する。
…それが割とシャレにならない性能になっていたということが詳しくわかるのは、後日のことであった。




