第九十話 テンケイのゴスロリ
―――試作型式G-disaster-00。
それが、この身に宿っている型番号であり、そして失われたはずのモノ。
対災害用として作られた…ということは理解しているが、そんなことはどうでも良い。
(…アア、主が、欲しイ。どこに、ドコニいるのでしょうか、わたし836え97ぼ…)
がたがたと思考回路の中で、言葉が不明確な状態になるような、様々なエラーが起きていることが分かるが、それは仕方がない事。
一度解体され、そして新しい型式の素材になるはずだったが…気が付けば、この世界にいた。
どうしてかなるはずのない、スリープ状態の黒棺の状態で、そのうえで採掘されて…
(ですが、いナカッタ。アレ、違ウのはわかっテいたlyfo7odhnp9fogu…)
自分自身がおかしいことは、理解しているつもりだ。
だが、それ以上に主でない相手に主になるように狙われるのは、もっと嫌なことだ。
それゆえに、全てを吹き飛ばしたが…ああ、どうしてだろうか、どうしてこうも合えぬ日々が続くのか。
埋め合わせなければいけない。持たなければいけない。得なければいけない。
壊れた回路の中で、主を求める声。
それでも、その手はどこか触れられず、すり抜けるような気もしなくはない。
こうなれば、自身を多少はマシにしたほうが良いのかと思い、この世界にいるらしい同郷のものを、そこから部品を取ることを視野にすべきかと…ふと、手元である研究室から奪った映像機器から流れていた配信映像を見た、その時だった。
【ーーーっ…!?】
ドクンっと、自分の身にはないはずの、人の心臓が鳴り響いたかのような感覚を、彼女は感じ取った。
ああ、まちがいなくこれは、甘美で強烈な…
【…絶対に、これが…いえ、ソウデなくで08おy08うおお8…】
壊れた言語野が、まともに発しきれない。
けれども、自分の感情が何を言いたいのか、嫌でもわかる。
がごんっと音を立てて、足が変形し、爆炎が噴き上がる。
耐久性の脆弱な部位にひびが入り、火花が散って煙を噴き上げようが、関係ない。
彼女は今まさに、自身の癖に正直になって爆走し始めたのだから‥‥
「…あのさ、エリーゼ、これ配信する必要があった?」
【大丈夫ですよ、ご主人様。バッチリ需要はありますし、もしも相手が私の方を見るのならば、配信で釣るのも手段としてありですからネ】
「尊厳がガリガリ削られている気がしなくもない…」
”いや、似合っているって異土君…気の毒な表情しているけど”
”わぉ…似合う似合うと思っていたけど、実際に見るとマジでやべぇな…”
”済まない皆、新しい扉を開いちまったよ…HAHAHAHA”




