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第八十九話 ゴスロリ危機

【へぶぅ…】


「…エリーゼがぶっ倒れているけど、何かあったの?」

【血縁者のやらかしに、色々と対応しているそうだが、中々捕まらないとかで…】



…昼食時、食堂内。


 珍しく、机に体を預けてぶっ倒れているエリーゼの姿を見て、異土が聞いたことに関して、クロハが答える。


「血縁者?この間の、ジェッターさんみたいなの?」

【災害兵器みたいなものらしいぞ】

「いきなり物騒だな…」



 かくかくしかじかと話を聞けば、どうやらエリーゼとは異なり、問題しかないからこそどこかへ廃棄された存在のモノがいるらしい。



「それで、何をどうしてか廃棄されたはずの存在が、この世界に今いると…」

【そうらしのですよ。明らかにやばすぎる代物なので早めに見つかってほしいですが…】



【…いかんせん、廃棄されたものとはいえ、量産型とは比較にならない性能は有していますからネ。信号自体は持っているのでしょうが…それに気が付いて、切っている状態となるとなかなか難しいものデス】


 むぅぅっと、珍しく悩んでいる顔でそう説明するエリーゼ。


【ステルス性能が非常に高いのも、考えモノですネ。身内にまでその効力を発揮しては、どうしようもないのデス】




 災害に対応する手段としては、単純に正面からぶつかるだけではなく、やり過ごすということも可能にしており…今回はその機能を利用して、捜索の手にかからない状態になっているらしい。


【ご主人様認識用の回路も問題しかないですからネ。相応しくない相手ならばやらかすのがもう…はぁ…】

「そこの基準、厳しいのか」

【ハイ。求めているとはいえ、それなりに理想もありますし…彼女の趣味嗜好回路に関してのデータを得ても、まぁまず見つかるかどうかって話も有りますネ】


 かくかくしかじかと聞けば、主を求める部分はあれども、誰でも良いというわけではないらしい。


 異土がエリーゼのご主人に成れたのは採掘できたからと言うだけではなく、認識時に彼女の中の基準を色々と満たしているのもあったようだ。


【ちなみに聞くが、それは全員同じ基準とかではないな?】

【そんなわけ、無いのデス。個性はありますからネ】

【その子の、求める基準で何かわからないの?】

【廃棄前のデータを見ると、求めるのがゴスロリ系男の娘のようなものらしいので、物すっごい狭い門なのですが…】

「何だよ、その基準…」



 色々とツッコミどころがあるのはさておき、狭き門過ぎるのも考えモノである。


 下手すれば辻斬りならぬ辻ご主人様探しをやって、あちこちの都市や国々を灰燼にしかねないとか…どれほどの爆弾と言うべきようなやばいやつなのやら。



「そういうの、本当に早く捕まえないと、絶対に面倒なことになるよなぁ…」

【そうなんですよネ。本当にできればその基準を満たしそうな…ン?】


 ふと、何かに気が付いたのか、エリーゼが異土の方を見る。


 その視線に一瞬、嫌なものを感じ取る。


「…凄い嫌な予感がするんだけど、変な考えを思いついてないよね?」

【えっと…いやまぁ、ハイ。思いついちゃったというか…基準からして、ご主人様をゴスロリ女装させれば…いけるカモ?】

「いや、全然いけないからね!?何でそんな考えになるんだよ!!」



 廃棄品以上の、やばい思考をしていないだろうか、このメイド。


 そう思ったが、その言葉に対して、喰らいついたのは、他にもいた。



「え、何異土君女装するの?」

「それ、面白そう!!配信で、やってほしい!!」

「見たい見たい!!前々から思っていたけど、絶対に似合うって!」



 食堂で話したのも不味かったのだろう。


 話を耳にして食らいつく、周囲の同級生たち。


「ちょ、まって、やらない、絶対にやらないからね!!そんなことして誰が何の得に…!!」



 気が付けば壁際に追い詰められ、異土の逃げ場が奪われる。


 助けの手を借りたいが、こういう時に限って他の面子もそのアイディアに興味を惹かれるようで、異土の味方をしてくれる存在は、この場にはいない。



「や、やめっ…あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」












…その日、哀れな配信者の声が響き渡ったが、誰も助けの手を差し伸べる者はいないのであった。

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