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力の正体

「お前何者だ?」


「!?」


あれ、魔王護衛軍幹部の話じゃなくて僕の話?

というかさっきまでの話しやすい感じじゃない。

明らかに僕を見定めているような眼だ…。

返答を間違えてはいけない気がした。


でも僕が何者かなんて…


「それは…僕にもわかりません」


「そうか、では質問を変えよう。お前は自分のおかしな所には気づいているか?」


おかしなところ…。

ああ、それならいっぱいある。

丁度ギルフォードさんにも聞いてみたかったことだ。


「気づいています。僕は普通の人間とは違う気がします…」


「そうか」


あからさまに違いすぎる…。

死んだのに生きがえったり、初級魔術で魔王護衛軍幹部の攻撃を防いだり、

魔力が急に回復していたり。考えないようにしていたけど、

僕って…


「もしかしたら僕は人間ではないのかもしれません…」


ギルフォードさんの目つきが少し変わった。

だけど、何を考えているのかわからない。

でも明らかに僕が人間ではないという発言に反応していた。

ギルフォードさんは人間ではない僕の処置をどうするか考えているのかもしれない。


「な、なに言ってんのよ!オーデンスは小さいころから私と一緒にいたでしょ!?

生まれた年も一緒だし、オーデンスの両親はちゃんと人間じゃない!」


アイリはギルフォードさんの表情と質問から僕と同じことを思いついたのかもしれない。


「でも、アイリも見ただろ?僕は死んだんだ…確実に」


「そ、それは…」


アイリは僕のそのさまを間近で見ていた。

確かに感じ取ったであろう、僕が息を引き取るところを。

アイリは反論しようとしたが、思いつかなかったようだ。


「いいんだアイリ。僕は人間じゃなかったおかげで、アイリを守れたんだから。後悔はしてない」


「私は嫌!オーデンスは人間だもん!オーデンスが人間じゃないって言うならなんだって言うのよ!」


それはきっとギルフォードさんが僕に質問した「お前は何者だ?」という意味と同じだ。

僕はそれがわからない。多分人間ではない、じゃあなんなんだ?

そこで僕は昨日のギルフォードさんの言葉を思い出した。


“魔族には人型もいる”と。

僕は魔族なのか…?


「あ、あ…」


僕は最悪のことに気づいてしまった。

僕がなにものかわからないままなら、まだ良かった。

けど、僕が魔族だったとするなら、ここで殺されるかもしれないのだ。

いや僕は死ねないのだ。

じゃあきっと王宮に連れてかれて尋問、もしくは拷問に…。

それも僕が死ぬまで永遠と…。


「ぼ、ぼくは…」


声が震える。言葉にするのが恐ろしかった。

昨日のあんなに恐ろしかったあの男と同種?

魔族ということは人類の敵?

じゃあ僕はアイリと父さんと母さんの敵なのか?


僕は父さんと母さんの間に生まれた子供じゃないのか?

ああ、辻褄が合うじゃないか…、僕が父さんと母さんの才能を受け継いでいない理由が。


「オーデンス?」


アイリが心配した様子で僕に声をかける。

けど僕はその声に返事を返すことはできなかった。

僕はアイリと目を合わすのが怖かった。

魔族と知られたら拒絶されるかもしれないからだ。


「オーデンスよ…」


ここでやっとギルフォードさんが口を開いた。

どう処置をするのか決めたのかもしれない。

きっとギルフォードさんは僕が魔族と見当はついていたのだろう。

僕はどうなってしまうんだ…。


「言い忘れていたが、魔族には魔術は扱えんぞ?」


「え?」


魔族には魔術は扱えない?

僕って初級魔術1つ使えるよな?ということは…


「ぼ、僕ってもしかして人間なんですか!?」


「人間から生まれてもいるのだ、人間と呼んで差し支えないだろう」


「でもさっき何者かって!」


僕はだんだん早口になっていることがわかりつつも、止まることができなかった。

僕は魔族じゃないのだとはやく納得したかったのだ。


「それはあの生命力と、初級魔術の強さを見ればそう言いたくなるだろう…」


な、なんだそりゃ。

もっと言い方があっただろ!

僕また泣くところだったよ…。

アイリの件といい、家族との件といい、さすがに涙が枯れそうだ…。


「言い方が悪かったな、申し訳ない」


「い、いえ…」


ギルフォードさんに謝らせてしまった。とてつもない罪悪感が…。

で、でも僕正しいよね?


「はあ、ほんとに良かった…」


ああ、本当によかった。

ひとまず安心していいってことだよな?

ってあれ、今誰が言ったんだ?


「アイリ?」


アイリは胸に手を置いて、安心した顔つきをしていた。


「え、あ!これは違うの!別にオーデンスを心配していたわけじゃなくて…」


「違うのか…」


僕は余裕が出てきたのか、わざと落ち込んだふりをした。


「!? ち、違うこともないかな~、あはは」


「へえー」


僕は落ち込んだふりから、すぐににやけ顔になって適当に相槌をうった。


「な、なによその反応! まったく落ち込んでないじゃない!騙したわね!」


アイリが僕を心配してくれることは純粋にうれしい。

昨日も心配されてたけど、嬉しさを噛みしめる時間があまりなかった。

今は時間がある、噛みしめよう。

そう考えていたらギルフォードさんが咳払いをした。

さすがに気まずかったのだろう。


そういえば昨日もこれでだれかを困らしていたような…。


「「すいません」」


いや被せてくるな…。


「よい、実に子供らしくて微笑ましかったところだ」


絶対困っていたな…。


「話を戻すぞ。確かにお前は人間ではあるが、その力は人間離れしている」


「は、はい…」


その通りだ。

さっきは舞い上がっていたが、死んでも生きがえるなんてさすがに人間のなせる業ではない。


「そしてオーデンスよ、お前は自分が生きがえったと思っているらしいが、

なにもそう確定したわけじゃない」


「そうなんですか?」


僕は死んだわけじゃないっていうことか?

たしかにあり得ないことだけど…。


「お前のその守りたいという想いが死の底から己を這いあがらせたのだろう」


「ほんとうにそうなんですかね…」


さすがにそれでは説明がつかない気がした…。

隣にいるアイリも納得できていない様子だった。


「俺も死の底から這いあがった経験はある。もあり得ないわけではない」


ギルフォードさんにもそんな経験が。

それほど険しい道のりだったのだろう。


「それに、完全に死んで生きがえったという話と、

ギリギリのところで息を吹き返したという話では後者の方が明らかに信じやすい」


「それは、確かにそうですね」


たしかにそれなら他の人に状況を説明するときに混乱しにくい。

きっとギルフォードさんが言いたいことは、

今はそういうことにしとけということだろう。

僕がいつかその真実を突き止めればいいのだ。


「ほかになにかおかしな所があるなら聞かせてくれ」


「じゃ、じゃあ息を吹き返したと思ったら魔力が元に戻っていたことについては…」


「わからない!まったく聞いたことも無い事例だ!」


「そ、そうですか…」


やけにはっきり返事したな…。

本当に全くわからないのだろう。

まあ魔力というのは不思議な点がいっぱいあるのだ。

ギルフォードさんがわからないのも無理はないか。


「他にはあるか?」


「では最後に…」


僕はこの話も、死んで生きがえったということと同じくらい気になっていた。


「僕が唯一使える初級魔術ゲイトについてなんですけど…」


「ふむ…」


これもさすがにわからないか…?


「これは俺の予想ではあるが…」


「はい…」


僕は密かに息を呑んだ。


「お前はおそらく魔力濃度が異常に高いのであろう」


「魔力濃度?」


それは聞いたことも無い単語だった。



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