魔力障壁
「わかるのは僕はアイリを死んでも守ると誓ったんだ!立ち上げれる理由なんてそれで十分だ!」
こうは言っているものの実際は困惑していた。
なんで…。
なんで僕は腕を切られてこんな平然と立っていられるんだ?
痛みはまだあるけど最初ほどじゃない。
というかこれ、血止まってないか?
しかも僕が初級魔術の魔力障壁であいつの攻撃を止めただって?
全く覚えていないんだけど!?
「ふん、ここ数百年生きてきて、こんな理から外れたやつは初めてだ」
「そ、そりゃどうも…」
ここからどうしよう…。
この魔力障壁もずっと発動したままだけど解除しない方がいいよな…?
解除したらまたすぐに殺されそうな雰囲気だし…。
いまだに信じられない、僕の魔力障壁があいつの攻撃を防いだなんて。
「そこでじっとしていろ…」
「え?」
そう言うとこの男は目にも止まらぬ速さで僕の魔力障壁に向かって攻撃をしてきた。
「え、ええ!?ちょ、ちょっと待ってくれ!」
と言ってもその男は止まらなかった。
一瞬で攻撃を何度も繰り出し、一瞬止まったと思えば
また同じことを繰り返した。
この男何も持っていないのに一体何で攻撃をしているんだ…?
「あいつ透明な剣を持っているわ」
「透明な剣…?」
なんだ透明な剣って…。
「そうよ、しかもあいつの剣には実体があるときとない時がある」
「実体?アイリにはあの剣が見えるの?」
「見えないわよ。感じるだけ」
実体?感じる?
アイリはたまに意味が分からないことを言ってくる。
魔力量が多いとそういうのに敏感になりやすいのか…?
「それにしてもすごいわねその魔力障壁。あいつの攻撃をしっかり防いでいるわ」
「あ、ああ。ただの魔力障壁のはずなんだけど。聞いていたのと全く違う」
「ふむ…」
そして攻撃がやっと鳴りやんだ。
そしてその男は目を閉じなにやら考え事をし始めた。
もしかしたらこの魔力障壁の弱点を見つけているのかもしれない。
この魔力障壁が破られてしまえば今度こそ本当に終わりだ。
そこから3分ほど経ちようやく目を開けた。
「これは破れそうにないな…」
え、今破れそうにないって言った?
てことは諦めてくれるのか!?
「じゃ、じゃ今度こそ本当に帰って…」
「このままならな」
その言葉を聞いた途端、僕の視界の焦点は不安定になった。
「え…?」
「オーデンス?」
見えているものがすべてぐにゃぐにゃしている…。
焦点が定まらない。少し頭痛もする。
なんだこれ…?
「それはただの魔力枯渇だ…」
「まりょく、こかつ…?」
まりょくこかつってなんだ?
ああ、魔力枯渇といったのか。
でもなんで…、いくら僕の魔力が少ないからと言って魔力障壁をまだ5分程度しか使っていないのに、
それで魔力が尽きるなんてことはないはずだ…。
だって今まで使っていてそんな事一度も…
「ふん、俺の攻撃を何度も防いだ褒美に教えてやろう。魔力というのは基本的にお前の魔力障壁のように魔術を形として維持し続けるのにも魔力は消耗する」
「そ、そんなことは知っている。でもそれだけで…!」
「それだけではない、貴様は俺の攻撃を何度も受けただろう。魔力障壁はダメージを受け続ければ壊れる。壊れた箇所を修復するために貴様の魔力を補充し続けているのだ」
「な!?」
そ、そうだったのか。
確かに僕はこの魔力障壁を今までまともに実践に使ってこなかった。
使い物にならないとわかっていたから…。
だからこんな初歩的なことにも気づかなかったのか…。
「お、オーデンス?血が…」
「血…?」
今までぼんやりでしか見えていなかったものが少し見えるようになり、見えたそこは自分の足元だった。
ああ、自分はずっと足元を見ながら話していたのか。
そう思いつつ、赤い液体も見えた。僕は鼻に違和感を感じ、自分の鼻を拭ってみると、
手には真っ赤な血がこびりついていた。
「魔力というのは生命の源でもある。魔力枯渇が起きれば当然それくらいの症状は起きて当然だろう…」
こいつ、それがわかっていたからあんなに攻撃を打ち込んでいたのか…!
くそ、まだ魔力は少し残っているみたいだがこれじゃ時間の問題だ…。
奇跡が起きてもこいつに勝つことはおろか、アイリを守ることすらままならないのか。
「貴様はよくやった。もう眠れ」
くそ!なんなんだよ…。
どいつもこいつも僕を見下しやがって。
所詮僕はただ村で平凡に生きていくことがお似合いなのか!
「オーデンス…」
ああ、アイリにはこんな情けない姿しか見せられないなんて。
僕はでしゃばるべきじゃなかったのかな…。
「あなたこんなもんじゃないでしょ?」
え?
「オーデンスはもっとやれるって私知ってるわ!あなたは確かに魔力量は下の下でで魔術の才能は全然ないし、体力もなくて力も女の私よりも弱いわ!」
いやいや今絶対それ言わなくていいでしょう!?
すごい惨めでかっこ悪いじゃん今の僕…。
唐突なダメ出しをくらいさらにオーデンスは俯いてしまった。
「けどね!オーデンスはすっごい諦めの悪い男だってこと知っているんだから!」
「!」
「最後には絶対やり返して勝つんだから!」
「アイリ…」
僕のことそんな風に。
あー、同い年のやつにボコボコに殴られたことや、
9歳になっておもらししたことなんかよりも、
今アイリの目の前で諦めてしまいそうになってしまったことの方が何倍も情けないな…。
僕はもう立てないと叫んでいる足を強く殴り、もう一度立ってほしいと訴えかける。
そして必死に力を入れるが、アイリにそれを悟られないために余裕な振りをして立ち上がった。
「ばーか、わざと辛いふりして油断させてただけだよ。お前のせいでバレちゃったじゃねーか」
僕はそう言いながらも内心はとても興奮していた。
なにも取り柄がないと思っていた自分に、アイリが期待をしてくれていたことを知れたから。
アイリが自分を信用してくれていたから。
僕は初めて自分に自信を持てたかもしれない。魔力はもうあまり残ってないけど、
どこからか力が湧いてくる。
「そうさ、僕は諦めが悪いんだ。お前は僕の‘武器’に負けるんだ!」
「やっといつもの調子を取り戻したわね」
「だから演技だって!でも、まぁ…さっきはサンキューな」
「ん?なんか言った?」
「な、なんでもねーよ、バーカ!」
僕がアイリに感謝だなんて…。
今になってなんか恥ずかしい!で、でも別に間違ってないよな?
うん、感謝はダイジ。
「なによ、せっかく元気づけてあげたのに!オーデンスのばかばか!」
「はあ?ばか1個多いぞ!アイリのばかばかばか!」
「言ったわね!オーデンスのばかばかばかばか!」
子供同士の罵倒が激化し、その口喧嘩はしばらく続いた。
死神はその子供同士の喧嘩をただ茫然と見ていた。
死神は思った。
俺はなにを見せられているのだ…。
少年が魔力枯渇になって今度こそ本当に終わったかとと思えば、少女に励まされ再び立ち上がった。
どこにそんな力があるんだ?
貴様は本当に子供か?
俺の攻撃を防ぐ初級魔術に加え、死んだはずが立ち上がる。
「本当にとことん理から外れたやつだ…」
こいつらを見ていると遥か昔に忘れていたものを思い出させられそうになる。
もう俺はあの御方の右腕となった。
その遥か昔の無駄な出来事など忘れなければいけないのだ。
「オーデンスよ…」
「え…あ、なんだよ…?」
喧嘩し合っていた二人だが、声をかけられてやっと今の置かれている状況を思い出したようだ。
「本当にアイリ=ノイルロットを渡すつもりはないのだな?」
オーデンスは何をいまさら?という顔をした
「ない。誰にも渡すつもりはない!」
あれ、なんか今すごいプロポーズっぽくなかったか…?
どうしよう、アイリにバレたかも…
「ふん!私そんなほいほいとついていくような安い女じゃないわ!」
俺の気にしすぎだったようだ。
「そうか、ならやはり殺すしかないな」
「…? 今までも十分殺すつもりだっただろ!」
「そうだな、その通りだ。もう会話は不要だ、行くぞ…」




