第4話
三大寺はルール説明を開始する。
「このゲームは夏井様、布川様、にそれぞれ5枚のカードが渡されます。
机の上にあるカードですね」
ユカと布川がそれぞれ自身の目の前にあるカードを手に取る。
「夏井様、説明のためにお手持ちのカードを全員に見えるように表向きで机に並べていただけますでしょうか?」
「え?あ…はい……」
ユカが5枚のカードを並べる。
このカードはトランプのように裏と表があるが、
この表にはそれぞれ『水の雫のマーク』『草のマーク』『炎のマーク』『光のマーク』『闇のマーク』がデザインされている。
「では順を追って説明して行きます。
まず原告の夏井様と被告の布川様はここでカードゲームで対決して頂きます。
そして大前提として、
サロゲートのお二人…
花桐様と蜂須様は別室に移動してもらいます」
「…!」
「別室…ですか」
蜂須がそう言った後に三大寺は続ける。
「ええ。つまり原告と被告はこの部屋、サロゲートのお二人はこことは別室に二人で一緒に行ってもらいます。
そしてサロゲートのお二人はその別室にて用意されたパイプイスにそれぞれ座り、
念のためトラブルが起こらないように両手両足を椅子に拘束させていただきます」
「…!」
「お手洗いなどの休憩は随時受け付けますのでご安心ください。
あくまで暴力沙汰などのトラブルを懸念しての処置です」
ユカは緊張しながらルールを聞く。
「まず原告と被告のカードゲームのルールの説明です。
いったんサロゲートお二人の役目は忘れて聞いてください」
三大寺は続ける。
このカードゲームのルールはこうだ。
ユカと布川はライフポイントとなるチップが10枚渡される。
毎ターンごとにカードを1枚同時に出し、勝負が成立した場合にのみそれぞれ勝敗が決まる。
勝負が成立か否かの条件はあとで説明がある。
カードは最初に裏返しで出してオープンする形ではなく最初から表向きで出す形式である。
負けた方がライフポイントのチップを1枚失う。
奪い合いではなく単純にライフが減る方式だ。
用意されたカード5枚はそれぞれ『水』『草』『炎』『光』『闇』と言う属性が割り振られている。
『水』『草』『炎』は簡単に言うとジャンケンの三すくみの形になっている。
『水<草』
『草<炎』
『炎<水』
…そして『光』と『闇』のカード。
どちらもゲーム中に1度しか使えないカードで
『光』カードは『水』『草』『炎』のどれにも勝つ事ができる。
ただし代償として『光』を使ったプレイヤーは『水』『草』『炎』のうちどれか1枚を捨てないといけない。
捨てたカードは二度と使えない。
そして『闇』カード。
これは『水』『草』『炎』どれにも勝てない。
その代わり『闇』カードを出した時に相手が『光』カードだった場合、
『闇』カードを出したプレイヤーが"ゲーム自体"に無条件に勝利する。
ライフポイントも一切関係ない。
裏裁判に勝利。
上手くかみ合えば一撃必殺のカードとなる…
「闇、 ね…」
花桐がそう言う。
『水』『草』『炎』のカードはゲーム中に繰り返し無限に使えるカードだ。
「以上がまずカードゲームの基本ルールです」
ユカは必死に5枚のカードを見てルールを覚えている。
「そしてこのゲームの肝となるのは原告と被告ではなくサロゲートのお二人」
「…!」
蜂須と花桐はお互いに視線だけをぶつける…
「お二人は別室にて拘束状態と説明しましたが、お二人の役目は勝負に乗る『コール』をするか勝負を放棄する『フォールド』をするかを判断してもらいます」
「…!」
「ポーカーの用語の『コール』と『フォールド』とは少し違います。単純に勝負を成立させたい場合は『コール』…勝負を放棄する場合は『フォールド』です」
「私たちが勝負するかどうかを決めるんじゃないって事?」
と布川が三大寺に聞く。
「そうです。サロゲートのお二人はただ勝負に乗るかどうかを判断してもらいます」
「え?え?カードを裏返しじゃなくて見えるように出して勝敗がすぐわかるのに?」
とユカがハテナマークで言う。
「ええ。ですからサロゲートお二人は夏井様と布川様の様子を視覚で把握できないように別室にいていただき"音声"だけは聞こえる形式にします」
「…!」
なるほど、と言う意志で花桐が鼻で笑う…
「そしてここから詳細のルールを説明しますが複雑に感じるかもしれません。
ですが当日 私が進行とともにリアルタイムで随時説明しますのでご安心ください。
まず原告と被告の夏井様と布川様がカードを出す前にカード選択時間が1分間ございます。
この1分間は会話可能です」
…ユカが恐る恐る布川の顔を見ると自身を睨んでいる。
慌てて目をそらす…
「カードを出した後は原則、夏井様と布川様は私語禁止です。
そして私がゲーム進行にともない別室のサロゲートお二人と原告および被告との質疑応答時間を1分間儲けます。
簡単な話、カードを出した直後
花桐様は布川様に1分間音声で質疑応答ができ、
同様に蜂須様は夏井様に1分間音声で質疑応答ができます。
その順番は先攻後攻で入れ替わります。
今回は原告である夏井様側……つまり花桐様が先攻とさせていただきます。
勝負を成立させる『コール』か『フォールド』の判断も
そのターン時の先攻後攻の順番でお聞きします」
「………」
「なお、禁止事項と致しまして、質疑応答中に許可がない原告および被告、サロゲート、は私語禁止です」
どう言う意味かと言うと、
例えば花桐と布川が質疑応答中は
ユカと蜂須は私語禁止と言う事だ…
「サロゲートが両者ともに勝負をコールした場合のみ勝敗が決まります」
…ルールを聞いている上で花桐は自身の頭の中で策を構築していく。
「そしてこのゲームの特別措置といたしまして、
10回連続で勝負が成立しない場合…
つまりどちらかが『フォールド』で勝負を降りる事が10回連続起こった場合、
今回の"裏裁判"自体を引き分けでの終了とさせて頂き、
日を改めて新規ゲームをしていただきます…」
「…!!」
「…!!!」
…このルールを聞き花桐と蜂須は小さく反応する。
お互いが(そう来たか…)と…
「勝利条件は相手のライフであるチップを0にする事か、『闇』カードを出した時に相手が『光』カードだった時に勝負が成立した時です」
布川はむすっとした表情で三大寺を睨み口を開く。
「整理も兼ねて私が言ってる超ざっくりなルール認識があってるか聞いてくれるかしら?」
〇ゲームルール
・原告と被告は机に対面同士で座る
・サロゲートは別室に隔離される
・原告と被告のカードゲームの様子はサロゲートは音声のみ認識できる
・原告と被告はそれぞれカードが5枚とライフポイントであるチップが10枚渡される
・水のカード、火のカード、草のカード、はジャンケンの3すくみ理論で、『火<水』『水<草』『草<火』
・光のカードと闇のカードは特殊なカードで両方ともゲーム中に1度しか使用できない
・光のカードは全カードで一番強い。しかし「使用した場合は火か水か草のカードどれか1枚を生贄に捧げないといけない」「生贄に捧げたカードは二度と使用できない」
・闇のカードは光のカードのみに勝てる唯一のカードだが「水と火と草」には勝てない。つまり『光<闇』だが『闇<水と火と草』
・闇のカードで勝った場合は無条件で勝利
・お互いカードは表向きで出す
・別室のサロゲートは原告と被告のカードや表情は見えない
・原告と被告はカード選択時間の1分間は会話可能
・カードが出た直後に別室のサロゲートは相手の原告または被告に1分間の質疑応答する
・その際に質疑応答していない原告または被告は私語をしたり質疑応答の邪魔になるような妨害はしてはいけない
・質疑応答の結果で勝負をコールするか降りるかサロゲートが決める
・サロゲートが両者ともに勝負をコールした場合のみ勝敗が決まりライフポイントであるチップが減るかどうか決まる
・全ラウンド回数は決まっていない
・10回連続で勝負が成立されない(コールされない)場合は引き分けで終了となる
・ライフが0になった方が負け
・ライフの有無に関わらず闇のカードで光のカードを打ち破った方が無条件で勝利
「ええ。その認識であっております」
ユカは汗を流しながら必死にルールを覚えようとしている…。
「では、リハーサルを…」
と三大寺が言った途端に花桐がさえぎる。
「いや、リハーサルはいらない」
「!?」
超絶反応するユカ。
「蜂須さん…あんたもいらないだろ?」
含み笑いをする蜂須。
「それもあなたの策略でしょうか…?」
「いや。単純に時間の無駄だ」
「ふふ……思ったより賢い人だ。同意ですね」
布川が蜂須に詰め寄る。
「大丈夫なの蜂須さんっ…!?」
「布川さん、リハーサルなんてしなくても、このゲームの"肝"は大体なにかわかるでしょう…?」
と言われる布川は汗を流し無理やり得意げな表情をする。
「え、ええ!もちろん」
「え!?え!?花桐さん!わたし不安なんですけどっ!!!」
とユカはギャグマンガで見るような"ぐるぐるの目"で花桐の脇腹を小突きまくる。
「ちょっ!ひゃっ!やめてってそれ!こしょばいっ!ひゃっ!」
ユカの攻撃に素っ頓狂な声をあげて花桐は逃げる。
「なにイチャイチャしてんだ小僧と小娘が…!!!」
布川が威嚇でそう言い
"イチャイチャ"と言うキーワードを聞き
顔を真っ赤にしてユカが叫ぶ。
「イチャイチャ!?そんなんじゃないですっ!!」
「おばさん三流詐欺師な上に短気でイライラしやすいんだなー」
「…!!!」
花桐はわざと挑発するように薄ら笑いで布川にそう言う。
布川は怒りにプルプルと震える。
「何様だ小僧…!?お前の倍以上は生きてんだぞこっちは…!?」
「倍以上も生きてるのにそんなすぐ熱くなるのはダメでしょ…?
感情的になりやすいのに詐欺師ってなれるんだ…?」
「黙れっ!!!」
…実際布川は実は言葉を選ばず言うと知能のレベルは高い方ではない。
低い訳でもないのだが詐欺師をやるにしては高い訳ではない。
ただ数打ちゃ当たるの精神で圧倒的にダマされやすい人種をひっかけるだけの詐欺師だ
「花桐さん…」
と冷静な声で蜂須が割り込む。
「どうお考えかわかりませんが…この裏裁判は引き分けで流れるかもしれませんよ?」
「え…?」
ユカが蜂須の顔を見る。
「花桐さんだって気付いてるでしょ…?ロジック的に…」
蜂須が溜め息混じりにそう言うと花桐は笑顔で口を開く。
「蜂須さん…あんたのその言葉が聞けただけでもだいぶ"俺達が勝てる可能性"が上がったよ……」
「…!」
今まで柔らかい表情だった蜂須が鋭い目で花桐を見る。
「ほう…」
花桐に歩み寄り口を開く。
「面白いですね……引き分けで流さずに勝てる方法があると?」
「ああ…。あくまで"可能性"だ…。こう言うゲームにおいて俺は"必勝法"なんて言葉は嫌いだから使わない」
ユカはハテナマーク満載で2人を見ている。
引き分けで終わる…?
可能性…?
意味がわからない
と言うかルールを覚えるだけでも必死だ…
「ではリハーサルなしでよろしいでしょうか…?」
裁判長、兼、ディーラーの三大寺が問いかける。
「俺はいいよ」
「なら私もいいですよ…」
花桐と蜂須が合意し、
その姿を見たユカと布川も渋々合意する…
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
花桐とユカは予約したホテルの1階にあるオシャレなフレンチ料理レストランで作戦会議をしていた。
「もうっ…!!!花桐さん優しいと思ってたのにめちゃくちゃ自分勝手に話進めるじゃないですかっ…!!!」
「ごめんて…」
とユカがぷんぷんしながら料理を食べる。
「で、ユカちゃん」
「なんですかっ!?」
「いや、ユカ様。今日はお酒禁止でお願いします」
「飲まないですよっ!!!」
ポトフをかきこむユカ様…
「あの…ユカ様」
「なんですかっ!?」
花桐はワインを一口飲み口を開く。
「まずはかなり重要な作戦を話しとくね」
「…!」
食べる手を止めるユカ。
花桐は鋭い目で意味深な笑顔で言う…
「明日のゲーム…『光』のカードは一切使わないでね…」




