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裏裁判のサロゲート -心理戦ゲーム小説-  作者: 二兎追うものは三兎どころか5兎くらい得るよ
第一章『エレメンタル・カード ~光と闇の交錯~』
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第3話


――あれから1週間後。


時刻は朝。


ユカは自宅のベッドで上半身だけ起こしている。


「結局、教えてもらえなかったな…」


なぜ自分に親切にしてくれるのか花桐に聞いたが答えは教えてくれなかった。


スマホを見る。


「……」




――あれからユカは"裏裁判"の申請を済ませていた。


そしてどう言うロジックで審査がされたのかはわからないが


申請が通り裏裁判は行われる事が決定した…




応募申請してきたサロゲートは花桐と他数名のみ。


最低金額の5万円だから仕方がない。


ユカは当然花桐を指名した。




今日は土曜日。


学校に行かなくて良い。


ただ行かなければならないところがある。




それは裏の司法機関『トリビュナル』から指定されたビルの一室。




今日は"賭けるものの話し合い"と"ゲームルール説明"が行われる。




つまり、今日はゲーム自体は行われないが


あの女社長 布川(ぬのかわ) と付き添うサロゲート(代理闘士)…その2人と顔をあわせ、賭けるものの話し合いをする。


そしてお互いの条件が合意した上でゲームルール説明とリハーサルが始まる。




ここで条件が合意しない場合は無条件でトリビュナルが設定する事となる。




集合時刻は夕方17時。


指定された場所はユカの自宅から遠い。


ゲームルールを聞いた後にギリギリまでユカと作戦会議がしたい花桐はユカのためにホテルを取った


花桐の話だとゲームはたいてい原告と被告が絡む内容が多いとの事。


つまりサロゲート同士1VS1のみで行われるゲームはまれな事らしい。




ぱちんっ!


とユカは自身の両頬を叩く。




「よしっ…!!」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「今回もよろしく頼むわよ…?蜂須(はちす)さん」


女社長 布川 が電話越しにそう告げる。


電話の向こうの男…蜂須恭介(はちすきょうすけ)は続ける。


「任せてください布川さん。前回と同じく返り討ちにしてやりましょう」


お互い電話を切る。




布川忠子(ぬのかわただこ)


職業詐欺師




裏裁判は今回が初めてではない


今まで2回は経験している




いつも訴えられる側だが過去2回は勝訴している。


それはサロゲート蜂須恭介(はちすきょうすけ)と長い付き合いである事も影響しているのかもしれない。


厳密に言えば蜂須はサロゲートになる前から布川と知り合いだ。


言ってしまえば詐欺師仲間。


同じ詐欺案件で手を組んだ事は何回もある。


ここ数年で蜂須はサロゲートとして働き出した。




「かわいそうな小娘……300万円だまし取られた上にさらに私から奪われる運命になるなんて」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




トリビュナルから指定された場所の近くの公園…


時刻は15時…




ベンチに座っている花桐。


寒空を見上げて息を吐く。


白く染まる自分の息。


その息越しに見えるのは羽ばたくカラス


サロゲートなんてカラスみたいなもんだな……


花桐は胸中でそう思う。




「花桐さーんっ」


「…!」




ユカが花桐の姿を見つけて駆け寄る。


「なにも走らなくても良いのに。昨日は眠れた…?」


「あ、まぁ、なんとか…。でも緊張はしてます…」


「だろうね」


ベンチから立ち上がり花桐が近くに見えるカフェを指差す。


「前哨戦の前に甘いもの補給しとく?」


「え!」


ユカは目を輝かせる。


「おごるし好きなだけ頼みな」


「いいんですか!?やった!」




そしてカフェに入ったのだが、


先週と同じく大量の甘いものを頼みがっつくユカの姿に改めてひいている花桐…


「お腹壊さないようにだけしなよ?」と苦笑いで言う。


17時に現地集合にしなかったのは花桐がユカの緊張を少しでもほぐしたかったのが理由だ。


甘いものを餌付けしてちょっとでも緊張がやわらいでくれたらいい。




そして時刻は16時50分。




花桐とユカは指定されたビルに入る―――




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




質素なつくりの部屋。


黒服の10人以上の男女がいる。


トリビュナルの一員だ。




部屋の中心に長身の男が立ち、


少し離れた距離で対面になるようパイプイスが置かれている。


まだ布川達は到着していない。




「夏井様、花桐様、こちらへお座りください」




長身の男から見て右側のパイプイスに座らされる。


16時55分の時点で布川と蜂須が到着した…。


「…!」


ユカは布川の顔を見て汗を流す。


一方の布川はなんの罪も犯していないかのような涼しい表情である…


長身の男が花桐達とは反対側のパイプイスに座るように案内する。


「…」


…蜂須を見る花桐の視線に返すように蜂須が笑顔で会釈する。


蜂須恭介(はちすきょうすけ)


56歳


見た目は非常に清潔感がある紳士に見える


これが詐欺師だからたまったもんじゃない


もっとも花桐は蜂須が詐欺師だって事を知らないが。




「では時間になりましたので話し合いを開始いたします。わたくし裁判長、兼、ディーラーを務めさせて頂きます三大寺(さんだいじ)と申します」



なんとも珍しい苗字だ。


三大寺は続ける。


「この話し合いフェーズは時間を引き延ばしても正直無駄です。簡単に済ませた方が明日のゲームの策を練る時間を1秒でも多く確保できるでしょう」


「その通りね」


「…!」


布川が強気に口を開きユカを睨む。


…ユカは少し怯えながら目を伏せる。


「どうせ300万円返せって条件でしょお嬢ちゃん?」


「あの、えと…」


「300万?」


と言ったのは花桐だ。


「笑わせんな。500万円要求する」


「…!」


布川が目を見開く。


「はぁぁ!?」


蜂須は動揺を見せずに静かに聞く。


「三流詐欺師がなにいっちょまえに怒ってやがる?」


「さっ…!さんりゅ…!!」


「まぁまぁ布川さん」


…と蜂須が布川を静止し、花桐の目を見て口を開く…


「花桐さん、改めて初めまして。サロゲートの蜂須です」


「……」


お互いの名前は事前に知らされているシステムなので知っている。


「やけにすごい自信をお持ちですが…あなたまだサロゲートとしては2年しか経験されてませんよね?」


「ああ」


そう。


花桐は実はサロゲート歴は2年…


ユカは花桐の成績…いわゆる依頼料の総額なんて少しも見ずに指名したが


花桐は全サロゲートの中でもかなり低位の成績だった。


「私はもう5年はやってます」


「歴は関係ないだろ?」


「まぁそうですね」


「つまらない話はいい。500万円の要求だ」


「それなら私たちも同額請求でよろしいでしょうか?」


「いや、お前らが勝ったら600万円やるよ」


「!!!???」


ユカと布川が目を見開く。


「ちょ!ちょっと!花桐さんっ…!」


小さな声で隣の花桐の脇腹を小突きながらユカが言う。


花桐はくすぐったさに身体をびくっ!びくっ!とさせながら小声で返す。


「大丈夫だって…!負けたら俺が払うから…!」


「で、でも…!!!」


「あんたどう言うつもり…!?」


…布川が花桐に声を荒げる。


「なんでそんな不利な条件を自分から…!?頭おかしいの…!?」


「んー……強いて言うならこっちが不利な条件で勝負してあんたらが負けた時にどう言う顔するか見てみたくてね」


「!!!」


顔を真っ赤にして怒りの表情をする布川を再び蜂須が静止する。


なお、ユカも花桐の脇腹を小突きながら小声で「挑発してなんになるんですかっ…!」と焦っている。


汗を流しながら身体をびくっ!びくっ!とさせる


「わかりました花桐さん」


蜂須は笑顔で言う。


「その条件でいきましょう」


「今に見てなさい…!小僧、小娘…」




「では両者の合意が取れました。次にゲームルールの説明とリハーサルに移りたいと思います。別室への移動をお願い致します…」




花桐達は別の部屋へと案内された。


そこにはカジノルームのような装飾がされており


ひとつの机を挟むように椅子が対面に設置されている。




「では、原告 夏井様、被告 布川様、両者こちらとこちらにお座りください」




案内されて対面に座る2人。


机の上には複数枚のカードが置かれていた。




「今回の裏裁判でやっていただくゲームは…『エレメンタル・カード』です」


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