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友情

 父義海の死に関係していたと暴露した叔母の美月に対して、抑えきれない怒りを爆発させたカイは、兄ランギが登場した時のように自分自身を失い、負のマナを放出すると辺り一帯が闇夜と化してしまう。


 いつの間にかマウイ神の姿だけでなく、彼の僕達に加えアロハやキワの気配は消えており、カイは見知らぬ場所で一人呆然と立っていることに気付く。

「ここはどこだ?」

 一帯が白く色も音もない世界で状況が掴めずに辺りを見渡すと、遠くに蹲っている人影が見えた。一瞬、恐怖を抱いたが不思議と見知っている影のようにも思えたカイは意を決して近づいてみる。

「レイ? レイノルドか?」

 懐かしい背中にカイは小走りで近づく。

「カイ?」

 随分と長い間、ここに一人で居たレイノルドは愛しい友人の声に慌てて立ち上がると振り返る。

「カイっ・・・」

 カイとの再会に、喜びで飛び跳ねそうになったレイノルドだが、冷静さを取り戻すと暗い影を落とす。

「レイ」

 レイノルドを包む異様な空気に気付いたカイだったが、構わずに彼を強く抱きしめた。

「会えてよかった。レイ、大丈夫か?」

「カイ・・・ 僕、カイに合わせる顔がない」

 俯いたままで呟いたレイノルドは、自分の両手の平を見つめた。

「忘れられないんだ。カイを刺した時の感覚が・・・ あんなことをしてカイの顔なんて見れない」

 カイに抱きしめられた腕を払うとカイに背中を向けたレイノルドは声を荒げた。

「それはキワにコントロールされていたからだ。レイは悪くない」

「ダメだっ、僕は自分が許せない」

「レイ・・・」

 カイはレイノルドの肩に手を置くと悲しい眼差しで彼の後ろ姿を見つめる。

「だったらさ、キワに勝ってくれよ。コントロールなんてされないでよ。今、結構ヤバイくてさ・・ みっちゃんが親父を殺したとか言い出して、俺も結構参ってるんだ」

「そんな・・ どういうこと? カイ、大丈夫?」

 カイの心情を案ずるレイノルドは振り返ると寂しい表情を向ける。

 白い世界に彼らの話声だけが響いた。

「レイの助けが必要だよ。お願いだから戻ってきてほしい。キワなんてぶん殴ってくれよ」

 カイは右拳を振り上げキワを殴る真似をするとニヤリと笑った。

「カイ・・・ 僕、頑張るよ・・・」


 黒い闇に包まれていたカイは、ハッとすると自分の前に立つレイノルドを見つめた。そこには先ほどまで会話をしていたレイノルドとは違うマナを感じ、グッと唇を噛むが、と同時にレイノルドの瞳の奥に仄かな光を見つけるとニヤリと笑みが零れた。


「アカン、カイがまた暴走してまうで」

「そのようでござる」

 危険を察知したウルタプとフェヌアは慌てて結界を張ろうとするが、マウイ神が右手を掲げた。

「問題ない」

 カイの行動に全く動じないマウイ神がそう告げるのと、ほぼ同時にカイが放っていた黒いマナが徐々に金緑色になると、闇で包んでいた一帯を一気に眩しい光に変えた。

「うわっ」

 強烈な輝きに月族のイヨと犬狼は消し去られ、アロハとキワもその場で仰け反るとよろめいてしまう。


「カイっ!」

 キワの支配から解き放たれたレイノルドは、首にかかるTIKIの紐を引きちぎるとカイの元に目掛けてまっしぐらに走った。

「レイっ!」

 レイノルドから受け取ったTIKIをすぐさまマウイ神に渡すと、同じくしてレイノルドの手を強く握り、キワから完全に分離させることに成功する。

「でかした」

 TIKIを取り戻したマウイ神は人型になると、TIKIから瞬時に自身の槍を取り出した。槍は宙に舞うと2つに分裂し、兄キワとアロハのマナ目掛けて攻撃態勢に入った。

「アロハは、みっちゃんは傷つけないでっ!」

 慌ててマウイ神の攻撃を止めに入ったカイを傷付けないために、作戦を変えたマウイ神はウルタプに合図を送ると植物の蔓で美月を捕らえさせる。

 グレイトバリア島に到着後すぐにカイトケ・ホットスプリングスでTIKIを利用して力を得たキワは、人間の軍隊を盾にマウイ神と僕達からの攻撃を交わすと、美月が捕らえられているうちに姿を消してしまう。

「ちっ!」

 マウイ神は舌打ちをすると捕らえた美月のもとに近づこうとした時、大地が大きく揺れたため、カイ達の安全を確保する結界を張り木々の落下や落石から彼等を守る。

「時が満ちてきたようね。ふふふっあはははっ」

 美月の姿をしたアロハは声を高らかに笑うと、不敵な面持ちを浮かべる。

「テ・イカか・・・」

「そうよ、もう限界なのよ。だから人間に攻撃させてるの」

「そんな・・」

 テ・イカに万が一のことがあれば、テ・イカが支える太平洋諸島や日本だけでなく、オセアニアにアメリカでさえ天変地異が起こることになる。カイは愕然とするとレイノルドと共に肩を落とした。

 大地の揺れはおさまることなく続き、カイの不安を更に煽ったが、大きく呼吸をすると姿勢を正した。

「ヒナ様とテ・イカを助けに行くぞ」

 一瞬光を失ったカイであったが、気持ちを立て直すと強い口調で行動を促すようにマウイ神に告げる。

「カイの言う通りだ」

 マウイ神がカイに同意したとき、風が葉を揺らした。

「フア、イーストケープからか?」

「主様のお考えの通りです」

「そうか」

「イーストケープに行くのか?」

 カイはフアとマウイ神を交互に眺めながら彼等に問うてみる。

「まずはテ・イカを助ける。道中、アロハから母上の居場所を聞き出す。モアナ行けるか?」

「お任せを」

 救出したレイノルドをアリに任せ、カイはモアナのワカでニュージーランド北島の東海岸、イーストコースト地区へと向かうことになった。

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