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4番目の僕

 パンクロッカー姿に身を包んだフアは、驚いたカイに高らかに笑うと、左耳から肩まで下がるツイストした深い緑のポウナム(翡翠)がきらりと揺れる。そして、彼の声は風に乗るとステレオのように辺り一帯に広がった。

「あんた、なんやその格好。ぷっ、わははは」

 ウルタプは堪えきれずに吹き出すと腹を抱えて大笑いする。

「ファッションセンスのないウルタプちゃんに言われても気にしないわ」

 若干気分を悪くした形相のフアは大笑いするウルタプを見下ろすと両肩を軽く上げる。

「そちはいつも滑稽でござるな」

「全くだ」

 フワの右肩を掴んだフェヌアに続いて、反対の肩をモアナに掴まれると、弾むように振り返り両腕で二人の僕を同時に抱きしめた。

「フェヌアっ! モアナっ! 久しぶり」

 周りの目も憚らずパンク姿の長身男が二人の男にくっついている姿にカイは心が軽くなった気がして、小さな笑みが零れた。

「もしかして、あの背の高いハードロッカーみたいな人が4番目か?」

 パンケーキロックに辿り着いていた壮星達は、カイと僕達が後ろに続いていないことに気付くや速足で引き返してきた途中で、長身の男3人が抱き合っている姿に目が留まると、彼等の傍で立つカイに声を掛けたのだ。

「フアだよ」

「フアっていうんだ。楽しそうな僕さんだね」

 カイの隣に戻ってきたレイノルドも会話に参加すると、抱き合う僕達に視線を送る。昨夜から表情が硬かったカイから笑みが零れたことに、レイノルドの心も少し軽くなった気がした。

「だなぁ。僕の姿はロン毛に男爵みたいな恰好してたんだけどな」

「そのギャップは見てみたいね。で、ござる」

「その口調続けているレイも楽しい奴だよ」

 カイはそう告げながら、レイノルドの肩に手を置き、パンパンと2度軽く叩くと、レイノルドは満面の笑みを浮かべた。

「大男が道のど真ん中で抱き合うな。迷惑やろ」

 彼等の足元に絡むウルタプの姿もまたカイの目には滑稽に映り、再び笑みが零れる。


 最後の僕フアと出会うことができたカイは、自分のせいで余り時間をさけなかった壮星達と一緒にパンケーキロックやブローホールをじっくりと見学した後、アリの車に戻ってきていた。

「カイちゃん、改めて初めまして、アタシの名は、フア、主様から風を任されたモノ。アタシのポウナムは Pikorua」

 右腕を交差させ自分の胸前に添えたフアはカイの前に立つと、彼の頭上から自身を簡単に紹介した後、左耳を振ってポウナムを揺らして見せる。

「フア、よろしくお願いします」

「よろしくね」

 カイに応えるようにそう告げるとウィンクをする。

「さてと、4人の僕が集まったよ。俺はこの後、どうしたらいいんだ」

 フアと合わせていた目を僕達全員に移したカイは、覚悟が決まったのか、肝が据わったような力強い言葉で尋ねた。そんな彼の凛とした態度に僕達は直ぐに返答ができずに一瞬静かな時間が流れる。

「まずは、あの子に事情を聴いたほうがいいと思うわ」

 フアが一つ提案をすると、他の僕達も納得したように同時に首を縦に振った。

「あの子って誰だよ」

「ああそうだったわ、カイ君には分からないわよね。このおバカさん達が何も説明していないもの」

 フアは目を細めるとウルタプ達を眺める。いつもは勝気なウルタプとモアナだが、フアから蔑まれた言葉を投げられても反論せずに視線を落とす。

「どう言うことかちゃんと説明してくれ」

 背筋を伸ばしたカイから説明を求められた僕達は、静かな場所で話をするためフェヌアの屋敷に移動することにする。

 レイノルド達に真実を聞かれたくないカイは、パパロア国立公園を壮星達と探索するようアリに頼んだ。


 落ち着いた日本家屋のフェヌアの屋敷に辿り着いたカイと僕達は、フェヌアがウルタプとカイのために用意した急須が置かれた円卓を囲んでいた。

「やだ、ウルタプちゃん、人間の物なんて口にしてるの」

「この時代は食べ物もファッションも、なかなかイケる」

 そう応えたウルタプは湯呑を上手に両手で抱えると白く上がる湯気に息を吹きかけた。

「早速本題にいこう。あの子って誰だ?」

 カイが真顔でフアに尋ねる。

「太陽の女神タマや」

「呼び捨てかい」

 茶をすすっていたウルタプが身体だけでなく態度もでかいフアに突っ込みを入れる。

「太陽の女神? 俺のTIKIを狙っているのが太陽の女神なのか?」

「違うわね。でも月族や海族の異変を知っているはず」

 ウルタプが飲む茶に興味を持ったフアはそう告げると、おもむろに立ち上がり台所に入ってカップを探した。

「お主であれば既に手配済みであろう?」

「勿論よ。もうすぐ着くわ」

「手際がいいな。さすがだ」

「あら、モアナに褒められたわ・・・ あっ、到着したみたいね」

 フェヌアの家であるため、元来の姿に戻っていたフアは、肩にかかる長い紫色の髪をはらうと嬉しそうにカップを手にする。

『ガタガタ』

 突然発生した強風によって屋敷の窓や扉が強く揺れる音が部屋中に響くと同時に、屋外で放たれた光が辺り一面を赤く染めた。

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