第7話 超能力者と魔法使い
「C級魔法使いって何なんですか?」
天野がわけのわからない顔をして質問した。
「うん、魔法使いの見習いだよね。C級魔法使いは三級魔法使いとも呼ばれているよ。C級魔法使いとしてある程度の経験を積んだらB級魔法使いに昇格できるんだ。B級魔法使いは二級魔法使いとも呼ばれている。ベテランのB級魔法使いがやがてA級魔法使いに昇格するってわけだよ。A級魔法使いは一級魔法使いとも呼ばれている。落語の世界で言えば真打みたいなものだな」
異能の言葉に天野は深く頷いた。
「どうしてC級とか三級とか言うのですか?」
天野の素朴な疑問だった。
「うん、国際化が進むにつれてA級B級C級的な呼び方もしようとなったのさ」
天野はまだ自分が超能力者になったばかりだったので、魔法使いという言葉に驚いていたのだ。
魔法使いがいるってことに驚いていた。
そんな世界が本当にあるのだ。
「僕達超能力者は狼みたいな存在だな。魔法使いや仙人は虎やライオンみたいな存在さ。狼は一対一では虎には勝てない。僕はそれが悔しくって魔法使いになることにしたのさ。狼から虎になるんだよ」
異能の言葉には熱がこもっていた。
「超能力者と魔法使いの二刀流ってのも悪くないかもね。じゃあ、僕は帰るわ」
異能はそれだけ言うと帰って行った。
「じゃあ、僕も帰ろうかな」
天野も立ち上がって帰ることにした。
いつの間にか弥生が横に並んで歩いていた。
「また授業がない日に山へ修行しに行くよ」
天野が言うと、弥生が天野の前に出て笑った。
「その時はまたお弁当持ってくるわ」
弥生はそのまま走って行った。
天野は自分が住んでいるアパートの近くのコンビニでアルバイトを始めていた。
大学の授業のない日にバイトすることにしていた。
念力の修行もしなければならないから結構忙しかった。
天野は前から株のデイトレードをしていた。
バイトで貯めたお金を増やすためだった。
学生だからと言って親の仕送りに頼っているわけにはいかなかった。
天野は株の研究をするのが趣味だったのでトレードの勝率も高かった。
大体七割は勝っていただろう。
弥生のように未来がわかればもっと稼げるのになあと思った。
日常生活の中でも念力の修行をすることにしていた。
歩く時に念力で足を少し浮かす練習をしていた。
両足の底に念を込めて地面を押すのである。
これは念波の応用でもあった。
最初は上手くいかなかったが、慣れてくるとできるようになるのだ。
地面に足底をつけずに歩くのである。
何とも不思議な気分だった。
大空君が空を飛ぶのに夢中になる気持ちが少しわかった。
あまりこれをやっていると周りから変な目で見られるから気をつける必要があった。
木の葉が落ちる時には、木の葉めがけて念波を出して当てる練習もよくやった。
念波が当たって木の葉が揺れる度に心の中でビンゴと叫んでいた。
自分の部屋の中でも念力の訓練はよくやった。
こたつに座ったまま机の上に置いてある本やノートやペンなどを念手を使って取ってくるのだ。
初めはなかなか上手くいかなかったが、慣れてくるとできるようになるものだ。
暮らしの中での念力の活用が念力修行になっていた。
天野はある日授業がなかったのでいつも行く山で修行をしていた。
服装は黒いジャージ姿に黒いマスクだった。
弥生の提案を受け入れたのだ。
念手で大木を掴む訓練をして、念糸でその大木を縛るのだ。
念糸で大木を縛って引っ張ってみても簡単には念糸は切れなかった。
放り投げた石めがけて念波でそれを打つ練習も行った。
念波が当たった石が吹っ飛んでいくのは心地良かった。
自分は超能力者なんだという手応えを感じたのだ。
こういう小さな訓練の積み重ねが念力の技を上達させていくのだろう。
「お待たせ。お弁当持ってきたよ。ああ、その格好いいわ。超能力忍者っぽいじゃん。私の提案受け入れたのね。嬉しいわ」
いつの間にか弥生が現れていた。
弥生も黒いジャージ姿に黒いマスクをつけていた。
「わーい、お揃いの格好だよ」
二人は大きな石の上に座って弁当を食べたのであった。
「ところで、天野君さあ、忍者の修行はやらないの?」
「ああ、そうだよね。今は念力の修行をしているけれど、忍者の修行にも興味あるよね」
「興味あるんなら、うちに来ない。久野井忍法を道場で教えているのよ。私の父の弟子になるか私の弟子になるか選べるわよ」
「弥生さんの弟子になるのも面白いね」
「やってみる?」
「ああ、いいよ。今日は走って帰ろうか」
そういうわけで二人の黒いジャージ姿に黒いマスクをつけた忍者っぽい若い男女が山を下りて街に向かって凄い勢いで走り出したのであった。




