第5話 超能力修行
天野は静かなある山の中にいた。
周りには誰もいない。
今日は授業がないので山の中で超能力の特訓をすることにしたのだ。
『いいか。念力の基本は念手と念波と念糸だ。この三つを覚えて応用していけばいいだろう』
天外屋法市の夢の中での言葉を思い出しながら動いてみた。
『念手は、おまえがマンションから落ちた男性を助けた時に使った力だ。あの時の感覚を思い出すんだ』
天野は両手から念手が出てくる感覚をイメージしながら集中してみた。
あの時は必死だったから何が何だかわからなかったのだ。
大木に向かって念手を出す練習をした。
『いいか。深呼吸をして呼吸を整えて下腹部から息を吐くような感覚で念を出すんだ』
天外屋法市が頭の中でアドバイスした。
念手が出たり出なかったりと安定性に欠けた。
念力の使い方は武道に通じるものがあった。
念力を出す訓練を数多くやるしかないのだ。
何回もやっているうちに段々と要領のようなものがわかってくるのだ。
大木を掴むような感覚がじわりとわかってきた。
次に念波を出す訓練だった。
念波というのは念を波のように出していって対象物にぶつけて動かす力である。
これが自由に使えれば念力で物を動かすことができるのである。
頭の中でイメージしながら念を出していくのだ。
気持ちを集中してとにかく数多く練習したのだ。
練習の回数を重ねることでコツみたいなものがわかってくるのだ。
じわじわと念波が出るようになってきた。
次は念糸である。
これは念を糸のように使って対象物を縛るのである。
頭の中で繰り返してイメージして念を糸のように使う訓練を重ねていった。
数を重ねるうちに大木の周りを念糸で縛ることができるようになってきた。
天外屋法市が天野の眠っていた超能力を覚醒させたのだ。
だから念力を使うことができたのだ。
天野のやることはその超能力をコントロールする方法を身につけることであった。
そのためには訓練するしかなかったのだ。
天野は自分が何のためにこんなに一生懸命になって超能力修行をしているのかわからなかったが、不思議と使命感みたいなものが芽生えてきていた。
自分は安定した人生を望んでいたが、何かそれだけでは物足らないとも感じていたのだ。
組織人として平凡な人生を送るのもいいが、果たしてそれでいいのだろうかという迷いもあった。
その時、空から人が降ってきた。
「ねえ、天野君さあ、お弁当持ってきたよ」
いつの間にか久野井弥生が天野の後ろに立っていた。
さすがはくノ一である。
「どうしてここにいることがわかったの?」
天野は驚いていた。
「だから、わかっちゃうって言ったじゃない。私はテレパシーが使えるのよ。だから人の考えがわかるのよ。おわかりかな?」
弥生がいたずらっ子のように笑って言った。
「天野君の頭の中にいる人って誰なのよ」
弥生が不思議そうに天野を見ていた。
天野は天外屋法市が自分のことを言ってもいいと言っていたので、天外屋法市のことを弥生に話した。
「なるほどね。それで超能力を使えるようになったわけか。でもそのおかげで私達は出会うことができたのよ」
二人は休憩しながら弁当を食べることにした。
大きな石の上に座って食べたのだが、何だかピクニックをしているような気になった。
「私には未来が何となくわかるの。私達の将来も見えるのよ。いわゆる予知能力ってやつよ」
弥生が遠くを見ながら言った。
「ああ、そうそう。超能力忍者を目指すんだったら、服装もそれっぽい物にしなくちゃね。黒いジャージ姿に黒いマスク。うんこれに決まりね。じゃあ私はもう帰るわ」
そう言うと弥生は風のように走っていなくなった。
弥生が帰った後、今日の復習をして天野も山から下りて家に帰った。
夕食を食べると、今日の特訓のせいか疲れがどっと押し寄せてぐっすり寝たのであった。




