第30話 超能力者達の交流戦
天野は授業が終わったので部室に顔を出すと異能と目が合った。
「ああ、天野君。いい所に来た。君さ、異能者と真剣勝負したことないだろう?」
「うん、まだ無いよね。興味はあるんだけどさ。なかなかそういう機会が無くてね」
天野は正直に答えた。
実は天野は自分がどれくらい強いのかさっぱりわかっていなかったのだ。
「実は今度交流戦をやろうと思っているのよね。相手はA市の大山大学の超能力クラブだよ」
「それってどういう内容になるのかな?」
大空航一が訊いた。
「それは今から考えていこうと思うのよね。やっぱりさ、超能力者達には能力向上の場が必要だと思うのよね」
異能がそう言うと、
「確かに仲間だけでわあわあやっていても真剣にはならないもんな」
山川大気が意見を述べた。
「やるからにはお互いにメリットのある戦いをしなくては意味がないと思うのだが」
霞斬想三郎が茶色の木刀をさすって言った。
「やはり自分と似た能力を持った相手と戦わなくては意味が無いような気がするわ」
間忍が口を開いた。
「いや、逆に自分と全然違う能力を持った相手と戦う練習をする意味もあると思うのよね」
弥生が違う見方もあることを言った。
「でもさ、私は千里眼だけれどどういう戦い方があるって言うのよ」
鈴木圭が首を捻った。
「僕もさ、飛行術を使うけれど戦い方がわからないよな」
大空航一が素朴な疑問を口にした。
「私はそもそも戦うことに興味が無いわ」
ワニコが面倒臭そうに言った。
「いや、別にみんなに戦うことを強要しているわけじゃないよ。希望者だけでいいと思う。まあ、どんなことをするかはみんなで考えていこう」
異能が何とかその場をまとめた。
【超能力者天野悟対超能力者佐伯数馬の試合】
ある晴れた日曜日の朝。
K市の静かな山の中にある広い空き地に複数の超能力者達が集まっていた。
薩鹿大学の超能力同好会のメンバー達と大山大学の超能力クラブのメンバー達だった。
簡単な挨拶を交わすと早速試合が始まった。
先鋒は天野悟と佐伯数馬だった。
佐伯は天野と似たタイプの超能力者だった。
天野は初めての異能者相手の試合にやや緊張していた。
この交流戦は勝ち負けを競うものではなくお互いの技術を高めることが目的だった。
試合というよりも超能力を使ったパフォーマンスと言った方がいいかもしれない。
天野は自分の念力がどれくらい他の異能者に通用するのか試してみたかった。
試合が始まった。
天野は黒いジャージ姿で試合に臨んだ。
佐伯という超能力者は天野と似た感じの体格をしていた。
天野は体中に念のバリアを張っておいた。
佐伯がいきなり走ってくると右拳で念力パンチを打ってきた。
パンチに念力を乗せて打ってきたのだ。
天野は体に大きなバスケットボールがぶつかったような衝撃を感じた。
念のバリアがクッションみたいな働きをしたようだ。
天野は態勢を整えて後ずさりしながら両手の平を前に出すと佐伯に向かって衝撃波を放った。
佐伯がドンと飛ばされた。
佐伯は空中で回転するとストンと着地した。
「天野君好きよー!頑張ってー!」
弥生の声援が飛んできた。
「天野君、リラックスしろ!」
異能がアドバイスした。
佐伯が念力で天野の体を持ち上げてきた。
天野は念力で持ち上げられながら不思議な感じになった。
なるほど。念力で持ち上げられるとこんな感じになるのか。
ある意味新鮮な驚きでもあった。
天野は宙に浮きながら両手の平で気と念力で作ったオレンジ色の電気のボールを佐伯に向かって投げてみた。
忍法エレキテルの技だった。
佐伯は一瞬自分の体にビリビリと電気が流れたことで固まった。
天野は手刀で佐伯の念力を斬って着地した。
佐伯が両手で×印を示していた。
電気ショックでやる気をなくしたのだろう。
「試合終了!試合終了!」
野次馬として試合を見物していた魔法烏達が勝手に木の上で喚いていた。
天野は佐伯の傍に行くと「大丈夫か?」と声を掛けた。
佐伯はコクっと頷くと自分の仲間達の所へ帰って行った。
『おいおい、もう試合は終わったのかよ』と天野の頭の中に声が響いた。
天野は思わず周りを見回した。
誰もいない。
『その声は天外屋法市じゃないか』
『おいおい、天野、試合をするなら教えろよ』
『異世界に行ったのではなかったのかい?』
『異世界にいるよ。いるけれど、思念ひとつで俺とおまえはつながれるのだよ』
『誰もつながってくれとは言っていないぞ』
『自分の弟子が超能力者として実戦デビューするんだ。観に来るのは当たり前だろうが』
『わかった。わかりましたから。試合の邪魔をしないで下さい』
『わかったよ』
天外屋法市は天野の頭の中でそう言うと黙った。
天野は、まさか天外屋法市が観ているとは思わなかった.
天野は今回初めて異能者と戦ってみて色々と感じるものがあった。
天野はこういう経験を積んでいって成長していくのだろうと思ったのである。




