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転生忍者天外屋法市  作者: 萩武


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第29話 久野井忍法対不死蔵忍法

 ある土曜日の朝。久野井富士子の実家。

 「パパ、私さあ、最近知らない男に襲われたのよね。」

 富士子がコーヒーを一口飲んでボソッと言った。

 富士子の父親の隆三が読んでいた新聞紙をさっと置くと、かっと目を見開いて言った。

 「なぜすぐに言わないのだ。どこのどいつだ。そのバカ者は。おまえみたいな強い女に襲いかかるとは」

 「だから言いたくなかったのよ。パパがすぐ怒るからさ。確か不死蔵当魔とか言っていたかな」

 富士子は面倒臭そうに言った。

 「そいつさ。私に一目惚れしたんだって。それで勝負してくれって言ってきたのよ」

 「まあ、何て大胆な男なのかしら」

 母親の由紀子がウーンと唸っていた。

 「お姉ちゃんたら相変わらずもてるのね」

 弥生がニタニタ笑って言った。

 「不死蔵と言えば、不死蔵忍者の人間じゃないのか。不死蔵源蔵の息子に違いない。抗議してやる。それでおまえ負けたのか?」

 「相手がキックしてきたから、かわして空気拳を叩き込んでやったわ。そしたらさ私に衝撃波を放ってきたのよ。結構強かったのよ。でもそのまま去って行ったのよね。変な奴よ」

 富士子はそれだけ言うと自分の部屋へ戻った。


 「富士子。私が不死蔵源蔵に抗議してやったぞ。電話で私に謝っていたわ」

 隆三が富士子の部屋の前でドアを開けずに言った。


 その日の昼過ぎに二人のお客が久野井家にやってきた。

 紺色のスーツ姿の中年男性の不死蔵源蔵と当魔の親子だった。

 母親の由紀子が玄関の扉を開けると不死蔵親子が深々と富士子達に頭を下げた。

 「この度はうちのバカ息子が大変失礼なことを致しました。どうぞお許し下さい」

 不死蔵源蔵が謝罪した。

 源蔵は手に持っていた袋に入ったお菓子を由紀子に差し出した。

 隆三は少し何か考えていたが口を開いた。

 「富士子、この前の勝負の続きをして決着をつけたらどうだ?おまえが負けたら一回くらい当魔君とデートしてみたらどうだろう?」

 「何よ、それ。わかったわ。やってやろうじゃないの」

 富士子は不死蔵当魔を睨むと笑みを浮かべた。


 久野井忍者道場に富士子達は立っていた。

 富士子は黒い忍者服に着替えていた。

 当魔は青いジャージ姿だった。

 お互いに礼をすると間合いをとった。

 当魔は軽く飛び上がると前転しながらキックしてきた。

 富士子は当魔の足に触れるとスーパー合気の技で投げ飛ばした。

 当魔はクルクル回りながら床に降りた。

 当魔は念力で富士子を宙に持ち上げた。

 富士子は宙に浮きながら背中からひもの付いた十手を取り出すと当魔に向かって投げた。

 ひも付き十手は当魔の足に蛇のように巻き付いた。

 床に降りた富士子は当魔の足に巻き付いたひも付き十手を引っ張って当魔を倒した。

 富士子が飛び上がって当魔の顔に蹴りを入れた瞬間に、当魔が消えたのだ。

 気がつくと当魔が富士子の後ろに回って首を絞めていた。

 富士子が体を捻って当魔を前に投げた。

 「はい、そこまで」

 隆三が声を出して試合を止めた。

 「富士子が当魔君を投げたが、その前に当魔君が富士子の首を絞めたよな。その時当魔君が刃物を持っていたらもう富士子の負けだよな」

 確かに隆三の言う通りだと富士子は思った。

 「わかったわ。一回くらいコーヒー飲みに付き合ってあげるわよ。それでいいんでしょ」

 富士子は渋々承知した。

 不死蔵当魔は嬉しそうに微笑んだ。

 富士子と当魔は今度会うことを約束すると別れたのであった。



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