第28話 空間調整師の木村姉妹がやってきた
ある日曜日の朝。晴天。
天野と弥生はK市の市役所前の公園広場の前に立っていた。
弥生の予知によると今から面白いことが起こるらしいのだ。
「一体何があるって言うのさ。普通の公園じゃないか?」
市のイベントがあるみたいだった。
天野が首を捻っているとどこからか太鼓と笛の音が聞こえてきた。
ドンドンひゃらら、ドンひゃらら、ドンドンひゃらら、ドンひゃらら。
公園に設置された機器類から太鼓と笛の音が流れていた。
お祭りか何かがあるのだろうか。
公園の中央部にはイベント用のステージが設置されていた。
するとどこからともなく3人の若い女性達が現れた。
カラフルな衣装に身を包んだ女性達が太鼓と笛の音に合わせて弾むように踊っている。
女性達は両手を盆踊りをするように動かしていた。
一人の女性が手に持っていた木製の大きなハンマーで空間を叩いてみせた。
「みなさーん、こんにちは。私は空間調整師の木村遥です。今私は悪い気に満ちた空間を調整しています。何か見えますか?」
公園にいた人達は何が起こっているのかよくわかっていないようだった。
木村遥という女性は右手にマイクを持っていた。
このイベントの司会者なのだろうか。
「この公園はあまり空気がよくないですね。私達空間調整師というのは空間を調整してきれいな空気と空間を造る活動をしています。今日は市のイベントのひとつとしてこの公園広場をきれいにするためにやってきました。よろしくお願い致します」
木村遥はそう言うとステージから飛び降りてピョンピョン飛び跳ねて木製の大きなハンマーで公園内の空間を叩いて回った。
他の2人も同じようにして木製の大きなハンマーで公園内の空間を叩いて回った。
すると今までどんよりとしていた公園内の空間がピカピカに光って輝き出した。
確実に空気の流れが良くなって浄化されて公園広場の空間が快適な状態へと変わっていったのだ。
「みなさーん、自己紹介させて下さいね」
木村遥がステージ上でそう言うと、
「さっきも言いましたが、私が木村遥です」
「私は木村静香です」
「私は木村美香です」
「私達3人揃って木村姉妹でーす」
3人がそう言うとパラパラと拍手が起こった。
「私達は空間のツボみたいな所を刺激して空間を浄化しているのです」
木村遥が公園にいた人々にそう説明した。
弥生は公園の中に異能達人の姿を発見した。
「あれ、異能君じゃないかしら」
弥生の指した方を見ると、異能が魔法の眼鏡で動画を撮っているのが見えた。
「あ、本当だ。異能君だ」
天野と弥生は異能に近づいた。
「ああ、君達。来ていたのか」
「異能君、何やっているのですか?」
天野が訊いた。
「実は、僕がK市に木村姉妹を使った公園広場の空間の浄化を提案したのだよ」
異能の近くにK市の職員達が数人立って動画を撮影しながら木村姉妹の活動を見守っていた。
市の職員達は興味深そうに感心したように眺めていた。
「どうやら木村姉妹の活動は成功だったみたいだね」
異能が嬉しそうに天野と弥生に言った。
異能は移動すると、市の職員達と何か話しながら笑っていた。
弥生が妖精使いの鰐川希代香と気功師の山川大気のカップルを発見した。
ワニコと山川大気達は気のスペシャリストだった。
ワニコが我慢できずに吸い寄せられるようにして木村姉妹の所へやってきた。
ワニコの頭の周りには3人の妖精さん達がピカピカ光りながら飛び回っていた。
「あれを見て見て、妖精達よ!」
「きゃあ、かわいい!」
「どういう仕掛けになっているのだろう?」
そんな声があちこちから聞こえてきた。
公園にいる人々は何かのパフォーマンスだろうと思っているみたいだった。
ワニコが木村遥に声をかけた。
「遥ちゃーん、元気だった」
「あら、ワニコじゃないの。お久し振りね」
「気に導かれて来ちゃったわ」
ワニコがフフッと笑ってみせた。
気功師の山川大気も結構興奮していた。
「いやあ、この気の使い方は本当に勉強になるわ」
「みなさーん、これから私達ときれいになった公園の空間で盆踊りをしませんか?」
木村遥がそう叫ぶと盆踊りっぽい音楽が流れてきた。
木村姉妹がステージ上で両手を大きく振って盆踊りを始めた。
すると公園にいた人々も面白がって踊り出したのだ。
しばらく踊り続けると木村姉妹はステージ上で挨拶して去って行った。
その夜、異能達人は魔法協会へ提出するレポートを書いていた。
今回のイベントは異能が魔法協会を通してK市役所に提案したものだった。
異能は街造りもC級魔法使いの大切な仕事のひとつであると今回の経験で実感したのだった。




