第3話 超能力同好会
大学の授業に出るのは久し振りだった。
「天野、おまえ生きていたのか」
天野の顔を久し振りに見た同級生達がそう言った。
天野はただ苦笑いするしかなかった。
みんな事故のことを知っていたのだ。
授業が終わって学内を歩いていると、きのう会ったあのショートカットの美女が目に入った。
「あら、あなたも薩鹿大の学生だったのね」
『薩鹿』は『さつしか』と読むのだが、みんなは『さっか』と呼んでいるのだ。
「君はたしか久野井弥生さんだったよね」
「あら名前を覚えていてくれたのね。嬉しいわ。君の名は何ていうのかな?」
「ああ、僕は天野悟だよ。よろしく」
「君にぴったりのクラブがあるのよ。遊びに行ってみない」
「別に構わないけれど」
久野井弥生に連れて行かれたのは、体育館近くの倉庫みたいな部屋だった。
超能力同好会という名前が書かれた部屋だった。
殺風景な部屋の真ん中に置かれた黒い椅子に座っている青年がいた。
黒縁の眼鏡をはめて、いかにもインテリそうな顔をしていた。
「おお、新入部員か。歓迎するぞ。僕は部長の異能達人だ」
「僕は天野悟です。よろしく」
「それで君は何ができるのかな」
「この人ね。きのうマンションの窓から落ちた人を念力で助けたのよ」
弥生の言葉に異能の目がキラリと光った。
「凄いじゃないか。大型新人だな」
異能は椅子に座ったまま宙に1メートルほど浮いてみせた。
空中でクルリと回ってみせるとゆっくりと床の上に降りてきた。
異能が右手をさっと上げると、部室のテーブルの上に置いてあった野球のボールが宙を飛んでくると、異能の右手に吸い込まれた。
「念力でキャッチボールをしようか」
異能が右手に掴んだボールを念力でゆっくりと宙に浮かせると、天野に向かって飛ばせた。
天野の顔面近くでボールが宙で停まると浮いたまま異能に向かって飛んで行った。
「やるじゃないか。試験は合格だ」
「あら、入部するのに試験なんてあったかしら」
弥生が笑って言った。
「君がマンションから落ちた人を助けた念力というのは多分念手なんじゃないのかな。念を手のように使う念力だよ」
『そう言えば、天外屋法市が夢の中で念手のことを言っていたな』
天野は頭の中で夢の中の超能力講座のことを思い出した。
念手と書いてねんしゅと読むのだ。
「なるほど念手なんだね。まだ超能力については初心者なんだよ。色々と教えて下さい」
「初心者がいきなり念力で人を助けるなんて大したものだよ」
知らないうちに部室に人が数人入ってきていた。
どうやら部員みたいだった。
「みんな、新しい仲間だ。自己紹介したまえ」
異能が言った。
「天野悟といいます。よろしくお願いします」
天野がペコリと頭を下げると、そこにいた全員が軽く拍手した。
『みんな超能力を使うのだろうか』
天野は何だかとんでもない所に入ったような気がした。
「魔剣の霞斬想三郎です」
木刀を右手に持った青年が軽く頭を下げた。
「千里眼の鈴木圭よ」
目がパチリと開いたおかっぱ頭の和風美人が微笑んだ。
「くノ一の間忍よ」
長い黒髪が魅力的な美女がポツリと呟いた。
「飛行術の大空航一です」
大空がニコニコ笑いながら言った。
「気功師の山川大気です」
両手を離した状態で気を操りながら山川が挨拶した。
「今いるメンバーの自己紹介は終わったわね。そして私が副部長の久野井弥生よ。くノ一の弥生とも呼ばれているわ」
天野悟は超能力同好会の新メンバーとなったのである。




