第2話 超能力忍者
天野の怪我は心配するほどではなかった。
マンホールの蓋が天野の頭に触れた瞬間に、柔道の受け身を無意識に行ったため助かったらしいのだ。
額を数針縫っただけであった。
マンホールの蓋が頭に直撃していたら大変なことになっていた。
天野は1週間ほどで退院できた。
母親からはしばらく実家でゆっくりしていなさいと言われたが、外に出ないと気が滅入る。
自分のアパートまで散歩しようと実家の近所の道路を歩いていると人が大勢集まっていた。
警察官達や消防士達が複数人いた。
マンションの窓から中年の男性がぶらさがっていたからだ。
その男性は窓についている金属みたいな物にしがみついていた。
マンションの6階だからかなりの高さだった。
落ちたらやばい。
消防車のはしごが伸びていたが、消防士が男性を掴む前に男性が落ちたのだ。
『念力を使うぞ』
天野の頭の中で声がした瞬間、落ちていた男性が空中に浮いていた。
天野の両手から何か大きなものが出ているような感じだった。
その大きな何かが男性の体を掴んでいた。
『いいか。ゆっくり下ろすんだ』
声の正体は天外屋法市だった。
天野の念力で男性を空中でキャッチしたのだ。
男性はゆっくりと地上に降りるとへなへなと座り込んだ。
その男性は自分でも何が起きたのかよくわかっていないようだった。
『まあ、初めてにしてはよくできたな』
天外屋法市が天野を軽く褒めた。
『いいか。自分で意識して自在に念力を使えるようになる必要があるな』
傍で天野をじっと見ていたショートカットの若い女性が近づいてきてこう囁いた。
「今の行為はあなたがやったんでしょう。あなた、もしかして超能力者?」
天野が不思議な表情をすると、その若くて美しい女性が微笑んで言った。
「私は久野井弥生よ。他人の超能力をチェックするのが趣味なの。また会えると思うわ。それじゃさようなら」
若い女性はそれだけ言うといなくなった。
『一体何なのだ。今の女性は何者なのだ』
天野は実家近くの自分のアパートに帰ってきていた。
ごく普通の大学生が住むアパートだった。
明日は大学に行くことにした。
夕食を食べて寝ていると、夢の中に天外屋法市が現れて言った。
『いいか。俺はもうすぐあの世へ行くが、その前におまえに超能力の使い方の基本を夢の中で教えてやる。いいな』
夢の中で天外屋法市の超能力講座が始まったのだ。




