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追想の逆行【総集編】

 

 「婚約を破棄させて頂こうかエミア・ローラン!」


 これで何度目であるのかも忘れてしまった婚約破棄宣言は、国王に呼び出された修練場の中心で大きく響き渡る。


 私は、執事グレイと共に修練場に待ち合わせしていた婚約者と面会をするはずだった。


 顔合わせをした瞬間のことで、私自信何が起こっているのか理解が出来ない。


 「婚約破棄とはどういう事ですか?」


 「そのままの意味だ。 お前には一切の興味も無い!」


 この無礼者の名はクラリア・バーン


 生まれつき右腕を失っており、グレイと歳が近そうな見た目だが悪人ズラが性に合っていて醜悪な容姿だ。


 私は、ある約束を国王と交わしている。


 クラリア・バーンと名乗る貴族が、グレイの仇の可能性がある。


 早急に調べ上げて、真実を追求して欲しい。


 国王に頭を下げられてお願いされた私は、この男の本性を暴き断罪しなければならない。


 クラリア・バーンは、苛立ちを見せ私達に威嚇する。


 「国王の命だかなんだか知らないが、なんで俺がこんな女と婚約しなければならんのだ! 調子に乗るなよ!」


 周りの物を蹴り飛ばし、破壊している。


 まるで子供だ。


 「国命なのですから少しは我慢出来ないのですか?」


 「あ? 誰に口聞いてんだお前? 殺すぞ!」


 まともに話しが出来そうにないけれど、私は意地になって反論する。


 「あなた程度が私を殺せるとは思えませんけどね。 先程も言いましたが何で婚約を破棄なさるのですか?」


 「お前らといると何故か無性に苛立つんだ! さっさと失せろ!」


 「無理ですね。 正当な理由なく婚約破棄は出来ません。 諦めて下さい」


 煮え切らない様子のクラリア・バーンは、急に騒ぐのを辞めて多少は大人しくなった。


 「理由があればいいんだな?」


 「そうですよ。 正当な理由があるのならですが……」


 何か企んだと、顔が語る。


 それはグレイの前では決して吐いてはいけない言葉であった。


 「その執事は確か有名な聖騎士だったよな? 名前は忘れちまったが良く知っている。 聖騎士であるにも関わらず戦場から逃げ出した無能な騎士だとな! そんな奴を仕えているお前との婚約など破棄されて当然だ。 この国の恥晒しが!」


 「あんたグレイに向かってなんて事をーー」


 あまりにも腹が立ち、殴りかかろうとしたのだがグレイに静止させられた。


 「いいのですよお嬢様。 本当のことですから」


 「だってそれはあなたのせいじゃないでしょ!」


 グレイの為に私は怒っていた筈だ。


 それなのにグレイは、私を慰めて頭を撫でていた。


 「なんで頭を撫でるのよ!」


 「いつまでも子供だなと思っただけですよ」


 傷ついていないはずなどあるものか。


 きっと彼が一番辛いはずなのに、私の事を第一に心配してくれるグレイに頭が上がらない。


 「取り乱したわね。 ごめんなさい」


 「流石はお嬢様です! 立ち直れたのですね」


 痺れを切らし苛立ちが隠せないクラリアは、また私達に罵声を浴びせる。


 「茶番は終わりか? もう帰らせろ!」


 私はお前を絶対に許さない。


 クラリアが反乱軍『エイドス』のリーダー、マルス・レインの可能性があると、国王から情報を事前に流していてもらってたからだ。


 私は逃げ出そうとするマルスに『待った』を宣言した。


 もう覚悟は決めている。


 例え人違いであろうが、グレイを弄んだことを後悔させてやる!


 「私から逃げるのですか? クラリア・バーン!」


 「なんだと!?」


 「怖いですものね。 だって私と婚約してしまったら自分の悪事がバレるのですから!」


 徹底的に追い詰める。


 それが私の美学だ。


 少しだけカマをかけてみてクラリアの動揺を誘っていく内に、何かを隠しているような表情を浮かべていた。


 「あ? なんでお前から逃げねぇといけないんだよ! お前が怖い? ふん! 笑わせんな!」


 「そうでしたか。 ではもう少しだけお話ししませんか?」


 「お前と話すことなんかねぇよ!」


 「貴方にはないだけですよ? 私にはあるのです」


 この言葉が効くかは分からないけど、私は彼に一石投じてみる。


 「右腕が無いのは生まれつきなのですか?」


 今でも忘れない。


 クラリアの顔は恐怖に歪んでいた。


 「生まれつきだと知っていて聞いてるんだよな? お前馬鹿だろ!」


 歪んだ顔は狂気に変わり、すかさず私に牙を剥く。


|(私に威嚇した所で何の意味も無いんだけどね)


 私は毒蛇であってクラリアは被食者だ。


 必ず私は捕食者として、アイツの首元に食らいつく。


 「知ってて聞いているに決まってるじゃないですか。 貴方は馬鹿なんですか?」


 「ーー大分余裕そうだな! お前は俺の無い腕に何か秘密があると言うのだな?」


 そろそろ彼も限界なのかも知れない。


 どこか気づかない所でボロを出さないかと思ったが、この感じだと直ぐに吐いてしまいそうだ。


 余裕が無くなっているのは、彼の方だというのにね。


 「何をそんなに焦っているのですか? まるで何かやましいことでもあるみたいじゃないですか。 もしかして誰かに腕を切り落とされた…… なんてね。 そんな訳ないですよね!」


 この揺さぶりで、クラリアがどう出てくるかしっかり見極めなくてはならない。


 「わ、笑えない冗談を言うな! 俺を侮辱してるのか?」


 「いえいえ、そんなことはしていませんよ? あくまで可能性の話しですから」


 揺さぶりは効いている様で、さっきよりも言動が弱々しく感じてしまう。


 「人を殺したことはありますか?」


 「さっきから何が言いたいんだ! 意味が分からない!」


 「黙って聞きなさい!」


 十中八九、私はクラリアが反乱軍「エイドス」のリーダーであると睨んでいる。


 グレイと私を見た途端に婚約破棄を宣言していたり、グレイに対する当たりの強さ。


 それを加味すると、どう考えても怪し過ぎる。


 確信を突く言葉を彼にプレゼントしよう。


 「貴方は反乱軍『エイドス』のリーダー、マルス・レインで合っていますよね?」


 私はニヤリと口角を上げて、毒牙を振り下ろした。


 「あぁ!! 何を根拠にそんな事を言ってやがる!」


 グレイや修練場の人々も仰天する中、ビシッとクラリアに人差し指を突き立てる。


 「根拠なんて有りません。 そんな物は後付けで良いのですから」


 「証拠がなければ咎めるのは不可能だな。 お前の話しは聴き飽きた! 帰らせてもらう!」


 鼻で笑ってしまって、今の凍てつく空気をぶち壊してしまって申し訳ないが、馬鹿馬鹿しくて仕方がない。


 「分かりました。 証拠があればよろしいのでしょ?」


 「は!? あるって言うのか?」


 「勿論ありますよ。 では披露致しましょう!」


 とっておきを披露する時が来たようだ。


 この『毒』はクラリアの首元に食らいつき必ず服毒させるであろう。


 「生まれも育ちも貴族でしたよね?」


 「それがどうした!」


 「ならいいのですよ。 ()()()()()()()()()()


 まるで爆弾の様な発言に、すかさずグレイが止めに入る。


 「お嬢様! やり過ぎですぞ! 証拠も無いのに!」


 「今から証拠が出来上がるから見届けなさい!」


 威圧をかけて私はグレイの静止を振り解いた。


 「お嬢様がお怒りか? 俺に手を出せばお前らは懲罰送りだ! それでもいいんだな!」


 「覚悟の上です。 グレイ! あの男を殺しなさい!」


 グレイも腹を括ったのか、剣を取りクラリアに刃を向ける。


 「クラリア様、御覚悟を!!」


 さっきまでの温厚な姿とはかけ離れた殺気に、私もあてられて怖気づいてしまった。


 鋼の刃は、クラリアに真っ直ぐと剣鬼の如く振りかざされた。


 「はぁーー!!」


 並の剣士であればまず避けられない斬撃であろうが、私は分かっていた。


 クラリアは死なないと。


 グレイの放つ斬撃は()()()()()()()()()()()()()()


 「この捌き方は!? まさかお前!?」


 これを期待したのだ。


 当時の騎士であれば皆んな知っている。


 見切っているのかの様に体スレスレで回避する、特殊な身体能力を持つ人物なんて一人しかいないのだから。


 「あら? 避けるのが上手いのですねクラリア・バーン いや? 貴方は、マルス・レインなのでしょ?」


 公衆の門前で、自分で自白した様なものだ。


 彼の青ざめる姿を拝めるのも、クラリアが馬鹿をやってくれたお陰で成り立ったのである。


 トドメを刺そう。

 私が華麗に断罪して魅せますわ!


 


最後まで読んで頂きましてありがとうございました!

 短編版も投稿していますので、そちらの方でも読んで頂けると嬉しいです。


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お読みいただき有難うございます!
初恋だった彼女が死んだ。だから俺はタイムリープした。
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