第十四話 勇者のお披露目
王都中央闘技場。それは西4b区に大きく陣取る円形闘技場で、その規模は彼のコロッセオにも引けを取らない。観客席も相応に大きく、五万人は軽く収容できそうだ。
この施設では今日行われるような御前試合から腕自慢たちが競い合う武芸大会、果てには貴族たちの音楽会に至るまで様々な行事が開催され、広く人々に親しまれているのだとか。
そんなこの場所で、今日俺たちは最強クラスの冒険者を相手にし、打ち勝たなくてはならないのだった。
会場の熱気が入場通路に控えている俺たちにまで伝わってくる。観客席は当の昔に満員になっているそうだ。どうにも興奮冷めやらぬらしく、がやがやと話し声が響いていた。
しかしその音も開会時刻が近づくにつれだんだんと弱まり、抑えがたき期待と言い寄れぬ緊張が次第に高まっていった。
ゴーン。ゴーン…。
開会を告げる鐘が鳴り響く。
その余韻が十分に抜け切ると、国王の声が聞こえてきた。
ここまで届くのはさすがに異常なので、拡声の魔法を併用しているのだろう。
「今日我が諸君に集めたのは、我が国の切り札を紹介するためである。
今まで我が国は魔族との戦争を続け、いたずらに国力を消費し民を疲弊させてきた。
よってこの度、我は長きにわたる魔族との戦いに終止符を打つべく勇者たちを召還した。
彼らの手により、我が国には平穏が訪れるであろう」
一瞬の沈黙の後。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
会場は大きな歓声に包まれた。
確かに勇者はこの国の伝承に幾度か登場してきたが、そんなに興奮するに足る存在なのだろうか。勇者が協力的でなかったり、役に立たなかったりするかもしれないだろうに。
彼らのその辺の感性はまだよくわからない。
それもあるとき突然引いた。国王が何かして静まらせたのかもしれない。
「それでは来たまえ、勇者諸君よ」
ようやく俺たちに呼び声がかかった。
しばらくの間ずっと整列していたので、俺は少々退屈してしまっていた。
「それでは行きましょう。くれぐれも失礼のないようにして下さいね」
皇さんの一声で、俺たちは進み始める。
先頭は俺と彼女の二人だ。後の連中は二列で後ろに続いている。
なんだかんだ言いつつ優秀なので、礼儀作法の類は大丈夫ではあるはずなのだが、何分普段が普段なので多少の不安は拭えない。
入場口をくぐると、盛大な拍手に出迎えられた。
俺たちは一糸乱れずに行進し国王席の正面で膝をつき、口をそろえて言った。
「「我ら勇者、召喚に応じ参上しました」」
どこの英霊だよって感じだが仕方がない。これは王都市民、ひいては全国民や全人類へのお披露目なのだ。こんな忠実で優秀な演技も必要なことだ。
「うむ。ご苦労であった。
この者らこそが我が召喚せし勇者たちである」
再び騒がしくなる客席。どうやらそれなりに好印象なようだ。
今日の目的は強めの冒険者に勝利して実力が確かなものだとアピールし、協力してもらうことである。国王からすれば、自分の支持をより強固にするいいチャンスだろう。
「とは言っても、言葉だけで信頼するのは難しかろう」
だから、きっと冒険者の上位でも俺たちに勝てそうな適切な人選をしてくれるに違いない。
「そう思って今日は、十分な相手を用意しておる。
『雷術師』イリーナ・ランチェス、『聖盾』アルフレッド・スコード。入場するがよい」
その名を聞いて、観客席の盛り上がりは一層大きくなった。
その名を聞いて、俺たちの周りの時が停止した。
この二人の名は、俺でさえ知っていた。つまり彼らは宮殿にまで届くほどの功績の持ち主であった。
イリーナ・ランチェス。彼女は『雷術師』という二つ名を持っている。『雷法師』ではない。『雷術師』である。
つまり、彼女は雷の魔術を扱うことができる。
雷魔法は扱いづらく消費魔力が大きいが、発動から到達までの時間が極めて短い上に威力はかなり高い。当たればマヒやしびれは免れず、下手したら即死である。
さて問題です。魔術とは、事象を正確に理解することで魔法を少ない魔力で速く打つようにしたものを指します。雷魔術を扱うトップレベルの冒険者はどれだけ強いでしょうか?
そしてアルフレッド・スコード。彼は『聖盾』の異名の通り守りに特化している。
彼は魔法により広範囲を守ることができるのだとか。また相手の狙いを強制的に自分に向けさせる技もあると聞く。
またその鍛えられた肉体から放たれる攻撃は極めて強力で、魔法による支援なしで容易に岩をも砕くほどらしい。
この二人のチームが俺達の相手だそうです。
ねえ、この王様本気で俺たち倒しに来てる気がするのは俺だけ?
俺たち負けると困るの王様のほうだよね?違う?




