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最強メンバーのクラス召喚  作者: 柊さなと
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第八話 固有魔法

 翌朝、俺は拠点の中で唯一常に整えられた部屋、客室へと足を運んでいた。

 セレスト・サリア宮廷魔導士殿を円滑に解放するためである。


 昨日水無月にさんざん捌かれた上に、忍たちによる拷問で情報を吐かされきった彼女は、俺に記憶消去の魔法で昨日夕方からの記憶を失され、ぐっすりと眠っている。


 正直この魔法は正確に発動しているのかを確かめるのがかなり難しいので少々使いづらい。使った感覚から記憶の魔法上での扱いはなんとなく理解できたものの、その内容を分析するのは人の頭では厳しいように感じた。精神も似たような感覚だとすると、おそらく彼女の言う思念操作と隷属魔法は人の意識の中身を作り変えているのではなく、外側から指示して思考を強制しているのではないだろうか。同様の理由で精神の回復も現段階では難しい。よって気軽に試すわけにもいかず、やりきれない気分にさせられている。


 そんな感じで精神関係の魔法の考察をしていると、ようやく彼女が目を覚ました。


「ううん。もう朝ですか」

「おはようございます。先生」

「蒼野君…。ここはどこですか?どうして私はここにいるのでしょう」


 昨日殺されかけたことを思うと恐ろしいが、手の内は把握しているので今や大した脅威ではない。というか、この人の素はあの古めかしい言い方のほうだと思っていたが違うのか。いや、一日中演技が解けないということかもしれない。


「昨日、私が先生に質問しようとしたら急に倒れられたので、私たちに与えられた屋敷へと運び、寝かさせていただきました」

「そうだったのですか。ありがとうございました。では今日は昨日の分もはたらかないとですね」


 そう言い、サリアさんは微笑む。どうやら記憶消去は今のところうまくいっているらしい。そうでなきゃ俺は出会い頭に魔法ぶっぱされるだろう。


「いえいえ、どうかお気になさらずに。今日もよろしくおねがいします」

 そう言い残し、俺は客室から退出する。これで昨日の後始末は完了したかな。



 それから少したって、本日の講義の時間がやってきた。

 昨日あんなことがあったとは思えないほど、今日という日は何事もなく進んでいる。

 まだまだ魔法の十分な理解には程遠いので、しっかりと聞いておかねばならないね。


「今日は固有魔法についての話をしようと思います」

 固有魔法か…。そんなのもあったのか。


「この世界の生き物はみな魔法が使えます。そして、それぞれの個体が固有魔法を持っています。固有魔法とは、文字通りその個体だけが持つ魔法です。基本的にその個体にとって有用で、扱いやすい魔法になります。ですので、固有とは言いましたが種族単位で同じ固有魔法を持つ生き物もいますし、似たような習性の生き物が似たような固有魔法を持つこともめずらしくありません」


「人の場合は本当にまちまちです。いろんな魔法を持った人がいます。固有魔法は体が十分大きくなるころには発現していることがほとんどです。どのような魔法なのかは、主に育ってきた環境や好みなどがかかわって決まると考えられています」


「固有魔法は一人に一つしか持てませんから、かなり強力です。全体的に威力や効果に対して消費魔力と詠唱時間が短いという特徴があります」


「魔法を使っていけば、そのうち目覚めると思いますから、皆さんも魔法をしっかり訓練して頑張って目覚めさせてくださいね」


 どうやら固有魔法というものはかなり使い勝手がいいものらしい。これは是非とも強力なものがついてほしい。

だが、今まで育ってきた環境や思想が影響するとなるとあまり攻撃的なものにはならないのではないだろうか。補助系のものばかりになりそうで少し不安ではある。

 

 その後はいろいろな生き物の固有魔法と生活環境や習性などを説明され、魔法の訓練へと移っていった。



「重大発表~」

 定例報告会にて、水無月がこう切り出した。

 どうやら水無月がなにか発見したらしい。

 いったい宮廷魔導士を開いて何を見つけたというのか。


「この世界のヒトは、根本的に地球のヒトとは違う生物だったよ」

 まじかぁ。うん、まあ、魔法普通に使ってるもんね…。異世界の人が同族のほうがおかしいか。


「ここでは治療はたいてい魔法でどうにかするからあまり医学は進んでいなかったんだね。まあ臓器の配置や働きくらいは押さえていたみたいだけど」


「まず初めに、体の基本的な構造は地球のヒトと同じだ。だが、脳に関しては大きく異なっていた。後頭部のあたりは常に魔力が集まっていて、魔法使用時に活発に働くことが確認された。魔法の処理は主にここで行っているものと思われる。構造的にもその部分は分かれているから、別の臓器だと考えているよ」


「さて、そこでなんで私たちが魔法を使えているのか。という疑問が浮上するわけだけれども。それは私たちの脳にも同様の機能が加わったというだけのようだね。これを見て改めてあたしたちの脳を調べてみたが、頭頂葉と後頭葉が主にその機能を担っていた。これがサナト神とやらの仕業なのか、この世界に来たことによる影響なのかはまだはっきりとしないね。もしかするとこれが恩恵ってやつかもしれない」

 

 水無月が魔法使っているときの脳の観察をしていなかったことが驚きなんだけど、実験台になってくれる人もいないし、ほかにも異世界には魅力的な研究対象がたくさんいたんだろう。


「この世界の人間は一人ひとり固有の魔法を持つそうだけど、それはこの魔法を扱う臓器、言ってみれば『魔マジック(マジックオーガン)』が各々違うからだと思う。魔臓そのものの構造を術式の中に組み込んで発動する魔法が固有魔法なんだろう」


 水無月の解説が固有魔法にも飛んで行った。

 なるほど。確かにその理屈なら固有魔法が存在し、環境によって変化する理由が説明できる。それに、一部を術式として処理しているのなら、使用魔力が少ないのも納得がいく話だ。


「残念ながら、脳や臓器の構造や働きはわかっても、それがどういう術式を示しているのかは現状わからない。みんな頑張って訓練しよう」

 その辺も任せるしかないのは少々心苦しいが、そのうち彼らなら解き明かしてくれるだろう。未知に出会ったことでモチベーションは最高潮だしね。俺もできる限りのサポートをやっていくこととしようか。


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