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0036(五)06

 由紀先輩はこらえきれない感情の波に上半身をふらつかせたが、マイクスタンドを握ってどうにか体を支える。


「テレビゲームが趣味だと聞いて、ボクを嫌悪する人もいるかもだもん。しかもつまらない、くだらない駄ゲーだと知れば、特に。それでもボクは言いたいもん。駄ゲーを遊んでて、とっても楽しい。みんなと笑い合えて、とっても嬉しい。駄ゲーはボクの人生だもん。たとえどうなったって、絶対やめたりはしないもん!」


 最後は高ぶる感情を抑えきれないかのようだった。


 ぺこりと頭を下げる。


「審査員の方々、結果的に騙して申し訳ありませんでしただもん。以上だもん」


 スピーチは終了した。耳が痛いほどの静寂が館内を貫く。だがそれは直後、賛辞の拍手で吹き飛ばされた。


「良かったよ!」


 審査員の一人が思わずといった感じで叫んだ。面を上げた由紀先輩は、叱責を覚悟していたのだろうか、場内の反応に目を疑っている。


 どうやら俺のスマホに映った駄ゲー部員たちの顔が、由紀先輩の演説を最後の最後でひっくり返したらしい。それが功を奏したことは、この会場の反応で明らかだった。




「157番!」


 満席の会場は結果発表に一喜一憂した。俺と由紀先輩の母親は、由紀先輩の番号が呼ばれたことに狂喜乱舞した。彼女自身、その結末に人生最大であろう驚きで呆然としていたが、すぐ鮮やかな笑顔を咲かせた。舞台に上がって前列に並ぶ。


 多くの落胆と僅かの歓喜、そして健闘を称える精一杯の拍手の中、こうして最終選考――全国大会に進出する3名が決定したのだった。


 もちろんその夜は駄ゲー部員も、賞賛と感嘆のLINEで和気藹々(わきあいあい)と喜び合った。主役の由紀先輩はようやく本領を取り戻し、「最終審査も見ててだもん」と大見得を切った。俺たちは笑顔のスタンプを送りつけた。


 オーディションの最後、全国大会は夏休み中に開催される。それまで、俺たちは夢に浸っていられそうだった。

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