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0025(三)05

「何や、ごっつうまいやんけ、先生!」


 美夏先輩が冷静さの仮面をかなぐり捨てて感嘆の声を上げる。笹本先生は首を傾けて恥ずかしそうに頬を赤くしたが、その間も正確無比な攻略を続けている。


 とうとう最終18面まで来た。ここまでただの1機も失っていない。理不尽極まりない駄ゲー群の一ゲームである『アフターバーナー』を、こうまで完全支配しているとは恐れ入った。


 雲雀先輩が叫んだ。


「最終ボスなので!」


 笹本先生はいささかの小揺るぎもしない。敵弾を正確に相殺しながら、ボスの黒い巨体にダメージを与えていく。俺はもはや何の心配もなく、笹本先生の操るトムキャットの躍動に見惚れていた。


 そしてとうとうボスは倒れた。エンディングが始まると、新しくて狭い部室が一挙に喧騒のるつぼと化す。


「凄いもん!」


「感動的やな」


「さすが顧問、面目躍如といったところなので!」


 風林先輩と真樹先輩が真心から賛美する。。


「お見事じゃ、先生。拙者は感服いたしましたぞ!」


「これが数々の修羅場を乗り越えてきた勇士のプレイか……!」


 俺と楓は拍手を送った。


「笹本先生の腕前は当時からちっとも衰えてなかったってことか」


「よく分からないけど、偉業だってことは肌で感じます。素晴らしいです、先生!」


 笹本先生はコントローラを置くと、子供のような笑顔を振りまいた。


「皆さん、これからも駄ゲー道に精進してください。ここはそのための部室なのですから」


 真樹先輩が直立不動の姿勢を取った。


「これこそが我々駄ゲー部員の目指す道! 皆、戦士に敬礼!」


 俺も楓も他の部員たちも、一斉に片手をこめかみに添えた。背筋を限界レベルまでまっすぐ伸ばす。何だこれ。


 笹本先生も真面目くさって敬礼で返した。


「この世には駄ゲーの大会もないし、他校に駄ゲー部のような部活はないから、活動する以上はこの翡翠中学単体で精進していかねばなりません。3年の袋田由紀さんと河井真樹さんは、受験勉強と平行して頑張ってね」


 手を下ろして軽く会釈する。


「長居しすぎました。もう職員室に戻ります。これからも基本、私は放任主義で皆さんと付き合っていくのでよろしく。それじゃ」


 笹本先生は部員一同に見送られ、部室を後にした。


 しばらくして真樹先輩が緊張を解いた。


「一七○六、本日の任務――部室引っ越しが完了。まだまだ片付けなければならない荷物は多数あるが、これらは明日処理しよう。では、今日のところは解散だ。散れ、兵士たちよ」


「はい!」


 酷い出来のマーク3版『アフターバーナー』をノーミスでクリアする。笹本先生は本当に凄い。あのレベルまで到達するために、若かった頃の彼女は一心不乱にトライ&エラーを繰り返したわけだ。俺たちも見習わなければ。


 駄ゲーを極めるために……


「帰ろう、高松君」


 楓がうながした。俺たちは今見てきた光景を胸に焼き付け、窮屈な部室から順番に出て行く。


 駄ゲー道、奥深し。

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