↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
北方帝国崩壊記――七つの国に引き裂かれた大帝国  作者: レモンティー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/14

■八話 鳴り響く帝国の鐘

ゴォォォォン――。

また一つ。

鐘が鳴った。

新生モスカル共和国。

午前二時。

街は眠っていた。

誰も鐘楼に近づいていない。

なのに――

帝国時代の古い鐘が、

勝手に鳴っていた。

ゴォォォォン――。

ゴォォォォン――。

三度。

巨大な鐘の音が、

夜の街を震わせる。

警備兵が鐘楼へ駆け込んだ。

「誰だ!」

返事はない。

扉を開ける。

そこには、

誰もいなかった。

ただ、

千年前に作られた巨大な鐘が、

まだ揺れていた。

兵士の一人が、

床に落ちていた古い石板を拾った。

そこには、

帝国時代の文字が刻まれていた。

兵士は読めなかった。

しかし、

最後の一行だけは読めた。

『七つに分かれし時、門は開く』

「……なんだ、これ?」

その瞬間。

鐘が、

もう一度鳴った。

ゴォォォォン――。

兵士は、

青ざめた。

「誰か、これを政府に持っていけ!」

だが。

すでに遅かった。

同じ頃。

東方連邦。

地下研究施設。

黒い魔晶石の前で、

研究主任が叫んでいた。

「全員、下がれ!」

研究員たちが後退する。

黒い魔晶石が、

淡く光っていた。

「何が起きている?」

「分かりません!」

「魔力反応は?」

「上昇しています!」

数値が、

一気に跳ね上がる。

100。

500。

1000。

5000。

そして――

計測不能。

研究員が震えた。

「こんなの……魔晶石じゃない」

「では何だ?」

研究主任は答えた。

「これは……」

黒い石を見つめる。

「何かを動かすための、鍵だ」

その瞬間。

地下深くから、

轟音が響いた。

ドン――。

研究所全体が揺れる。

「地震か?」

「違います!」

さらに、

ドン――。

今度ははっきり聞こえた。

地下から、

何かが動いている。

研究主任が叫ぶ。

「地下施設の図面を出せ!」

図面が表示される。

研究所の地下。

そこには、

存在しないはずの空間があった。

「この空間は何だ?」

「記録にありません」

「では、なぜ存在する?」

誰も答えられない。

そして――

地下深く。

巨大な扉が、

完全に開いた。

ゴゴゴゴゴゴ――。

その向こうには、

巨大な空洞が広がっていた。

そして中央。

そこに、

一つの巨大な機械が眠っていた。

全長――

五百メートル。

巨大な魔導砲。

いや。

それは、

もはや「砲」と呼べる大きさではなかった。

都市を丸ごと消し飛ばせるほどの、

巨大な兵器だった。

研究員が絶句する。

「……こんなものを」

研究主任は、

壁に刻まれた文字を見つけた。

古代帝国語。

その意味を翻訳する。

そして――

顔から血の気が引いた。

「どうしたんです?」

主任は、

震える声で言った。

「これ……」

「帝国最終兵器の名前だ」

「名前は?」

主任は答えた。

「天槍」

その瞬間。

研究施設の警報が鳴り響いた。

「敵部隊、接近!」

「どこの軍だ!」

「北東辺境国です!」

「なぜここが分かった!」

「分かりません!」

東方連邦の兵士たちが、

一斉に武器を構える。

しかし――

さらに報告が入る。

「西側からも部隊!」

「南側にも!」

「北側にも軍勢です!」

研究主任は、

愕然とした。

七つの国が、

すべて動いている。

誰も、

他国を信用していない。

そして。

その頃。

地下の巨大兵器の前では、

一人の男が立っていた。

皇帝の血を引く男。

男は、

天槍を見上げた。

「これが……」

ゆっくりと歩く。

「帝国が最後に残したものか」

その背後から、

声がした。

「違う」

男が振り返る。

そこには、

白髪の老人が立っていた。

男は警戒する。

「誰だ?」

老人は答えた。

「私は、帝国最後の技師だ」

「帝国は十年前に滅びた」

「知っている」

老人は笑った。

「だからこそ、ここまで待った」

男が眉をひそめる。

「何を?」

老人は、

巨大兵器を指差した。

「この兵器が完成していなかった理由だ」

男は黙った。

老人は続ける。

「帝国は、これを敵国を滅ぼす兵器だと思っていた」

「違うのか?」

「違う」

老人の顔から笑みが消えた。

「天槍は――」

「国を滅ぼす兵器ではない」

「では?」

老人は、

地面を指差した。

「大陸そのものを変える兵器だ」

男の表情が変わる。

「どういう意味だ?」

老人は答えなかった。

その代わり、

古い地図を広げた。

現在の七か国の地図。

その下に、

千年前の帝国地図。

二つを重ねる。

すると――

七つの国境線が、

奇妙な形で一本につながった。

まるで、

巨大な魔法陣のように。

男が呟く。

「……これは?」

老人が言った。

「帝国は、七つに分裂することを予測していた」

「そんな馬鹿な」

「予測ではない」

老人は静かに答えた。

「帝国自身が――」

「七つに分裂するように仕組んでいた」

男は、

言葉を失った。

老人はさらに続ける。

「帝国は千年前から知っていた」

「いつか巨大帝国は滅びる」

「だから、帝国を七つに分ける」

「七つの国を作る」

「七つの国に魔力を蓄えさせる」

そして、老人は最後の一枚を見せた。

そこには、

奇妙な文字が書かれていた。

『七つの国が生まれた時、

天槍は起動する』

男の顔が、

凍りつく。

「では……」

老人が頷く。

「そうだ」

「今の七か国は――」

「天槍を動かすための燃料なんだ」

その瞬間。

大陸全土が、

震えた。

北方共和国。

東方連邦。

南方王国。

西方諸侯連合。

中央帝国。

新生モスカル共和国。

北東辺境国。

七つの首都の地下から、

同時に光が立ち上がった。

七本の巨大な光柱。

それらが、

空へ伸びる。

そして――

大陸中央の上空で、

一本につながった。

夜空に巨大な魔法陣が浮かび上がる。

七つの国の人々が、

空を見上げる。

誰かが叫んだ。

「何だ、あれは!」

別の誰かが叫ぶ。

「帝国の魔法だ!」

そして。

大陸全土に、

千年前の声が響いた。

低く。

冷たい、

機械のような声。

『七国の成立を確認』

『帝国再建計画――最終段階へ移行』

『天槍――起動準備』

人々は凍りついた。

十年前。

帝国は滅びた。

誰もが、

そう思っていた。

だが――

本当は違った。

帝国は、

滅びたのではない。

千年前から、

「滅びた後」の計画を進めていた。

そして今。

七つの国が誕生したことで、その計画が、ついに動き始めた。

夜空の魔法陣が、

ゆっくりと回転する。

そして中央に、一つの文字が浮かび上がった。

――皇帝。

その瞬間。

逃亡したはずの皇帝プーチノフの消息を追っていた者たちのもとへ、

一通の報告が届いた。

「皇帝を発見しました!」

「どこだ!」

兵士が震えながら答える。

「北東辺境国のさらに北……」

「古代帝国の地下都市です」

「そして――」

兵士は、最後の言葉を口にした。

「皇帝プーチノフは、そこで軍隊を作っています」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。