古臭い人間
アタシも水戸黄門のドラマは大ファンですから、思わず熱くなって金ちゃんに語ってしまいましたよ。
「いや〜、金ちゃんはそういった信念を持って歌っておられるんですね。アタシ、すっかり安心しました。だからこそ、私は金ちゃんの曲に惹かれるんですよ」
「おう、その通りだ」
金ちゃんは腕を組み、満足そうに頷きます。
「いや〜、私も最近のドラマをチラッと見ることがあるんですけど、もうさっぱりわかりません。話の流れを考える暇なんてありませんよ。『この人は何の仕事をしているんだ?』『この会社にはどんな歴史があるんだ?』……そんなことばかり気になって、肝心の物語が頭に入ってこないんです」
「だから、奇を衒うのはダメなんだよ!」
金ちゃんが力強く言います。
「その点、水戸黄門なんて一発でわかるだろ! 『江戸の時代』『こいつが悪者!』『でも最後には必ず解決する!』……これで十分だろう!?」
「なるほど。それが金ちゃんの言う『安心感』なのですね?」
金ちゃんは優しい瞳で私を見つめ、静かに言いました。
「そう、それが俺の魂だ。俺はこのやり方で50年、ずっと変わらずにやってきた」
私も金ちゃんを見つめ返し、思わず熱を込めて言いました。
「素晴らしい魂です、金ちゃん。
そんな強い人間の魂があるのであれば……当然AIなどに魂は感じませんよね?」
「あぁ、その通りだ。若手なりに頑張ってるのかもしれねぇがな。
でも、この世界で50年生き抜いてきた俺からすれば、あんなものに魂なんてねぇよ」
すると、ノックの音がしてイベント主催者が顔を出しました。
「金ちゃんさん、出番です。よろしくお願いします」
「おう、それじゃあ俺の魂の演歌を、たっぷり聞かせてくるぜ!」
金ちゃんは自信に満ち溢れた顔で立ち上がり、楽屋を出て行きました。
アタシはそんな後ろ姿を、笑顔で見送りました。
まぁ、こんなお話です。
金ちゃんの魂は、AIなどより遥かに太く熱い。
いつか金ちゃんのような、強い信念を持った人間たちによって、AI音楽や小説は淘汰されていくのでしょうね。




