↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
530/545

529.『飛行』の差





 クノンらの「飛行」による旅は、順調だった。


 天候並びに気流にも恵まれ。

 術者エリアは、快調に速度を上げていく。


 そんな移動中、クノンは考え事に没頭していた。


 ――気にならないわけがない。


「実力」代表ベイルと、エリア。

 二人の関係はどうなっているのか。


 本人たちからはともかく。

 本人たちの周囲からも、続報がない。


 付き合っているのか。

 いないのか。

 エリアはフラれたのか。

 逆にベイルがフラれたのか。

 どうなのか。


 珍しく気になっている。

 魔術に関わらないことは、あまり気にならないのだが。


 クノンには珍しく気になっている。


 ――まあ、それは一番ではあるが。


「……違うなぁ」


 クノンの呟きは、誰に届くこともなく。

 風の中に消えていった。


 違う。

 これまで何人かの風魔術師の「飛行」で運ばれたが。


 全員、何か、どこかが違う。


 傍目には同じ「飛行」。

 練度によって速い遅いが多少ある。


 それくらいに思っていたが。


 実際飛んでみると、結構違う気がする。





 途中で休憩を入れるため、地上に降り立つ。


 街道すぐ脇の空き地である。


 キャンプの痕跡がいくつかあるので、旅人の休憩所になっているのだろう。

 座りやすい岩もあるし。


 まあ、クノンには水椅子があるが。


「こうしてこうして、こう!」


 手早く火を起こして。


「ほう」


 お茶の準備をする侍女リンコの手際を。

 エリアは興味深そうに見ている。


「いいですか? アズユ茶はお湯の温度でかなり味が変わります。


 沸騰したお湯は、少し冷ましてから淹れる。

 すると甘みが出て、渋みと相まって丁度いいのです」


「へえ」


 料理関係が強い侍女リンコは、お茶にも詳しい。


「クノン様も唸った味ですよ。

『こんなんワイはじめてやでぇ』って興奮してましたからね」


「え、あのクノン君が?」


 ――ちょっとした女性の嘘はともかくだ。


「エリア先輩ってどうして『実力の派閥』に入ったんですか?」


 のんびり見守っていたクノンは聞いてみた。


 麗しき女性たちの会話を邪魔するのは野暮だが。


 でも、気になったから。


「やだなクノン様。

 いつも通り『今ちょっとええですかエリアはん?』でいいんですよ。


 お二人とも、遠慮する間柄でもないんでしょ?」


「え? 僕いつもなまってるかな?


 でも君が望むなら、僕はそういう僕でもええんよ」


「いやクノン君、普通でいいよ。普通でいいから」


 ――エリアは思った。


 なんとなく、クノンの性格成型の理由がここにあるのでは、と。


 この主従の二人。

 なんとも軽すぎる。


「えっと、何? 私が『実力の派閥』に入った理由?」


「そうです。

 たまに思ってたんですよ。エリア先輩は『実力』っぽくないって」


「実力の派閥」。

 言うなれば、個人技主体の派閥だ。


 優秀な個が集まる反面。

 あまり誰かと協力するという意識が低い、らしい。


 そう考えると。


 まとめ役である代表ベイルはともかく。

 エリアは結構異質である。


「ずっと気になってたことでもあるんですけど。


 でも今は、明確に気になるようになったっていうか」


「明確に? なんで?」


「『飛行』が違うからです」


 クノンは語る。


 うんうんそうそう、そうだね、と。

 わからないのにわかっている顔をしている侍女の隣で。


「率直に言うと、ほかの人の『飛行』と違うんです」


 同期リーヤ。

 聖女の侍女フィレア。

 そして婚約者ミリカの姉である王宮魔術師レーシャ。

 そのほかにも何人か。


 ――リーヤは安定。


 速度は控えて、とにかく安全面に気を付けている。

 飛んでいる時の風圧も、一番軽減する。


 ――フィレアも同じくだ。


 ただ、すべてがリーヤより少し上のレベルに感じる。


 ――レーシャは、とにかく巧みだった。


 速度を出す時、安定を求める時。

 状況に合わせて細かく調整していた。


 ――一応「合理」のカシス。


 彼女とも飛んだことはあるが。

 さすがに距離が短かったので、何か思うほどではなかった。


 ――そして、エリアだ。


 彼女は初めてのタイプだった。


「そんな感じでタイプ分けすると、エリア先輩は加速型です」


 初速は安定。

 それから、安定を維持したまま、少しずつ速度を上げていく。


 そんな感じだと思う。


「加速型、か……」


 エリアは思案げな顔をする。


 自覚があるのか、ないのか。


「それが、私が『実力の派閥』なのが気になった理由?」


「はい。

 いや、正確には『やっぱり』って感じでもあるんですけど。


 やっぱりエリア先輩も『実力の派閥』なんだな、って」


「やっぱり、ねぇ……その根拠は?」


「『飛行』の工夫。

 ただ飛べればいいって感じの飛び方じゃないですよね。


 あれは滑空を入れた飛び方だ。

 少ない力でより速く、より遠くへ行くための飛び方だと思います」


「……いや、本当に君は優秀だねぇ。


 同じ風属性でも気づかないところに気づくね。

 それもすごく細かいところなのに」


 そう言うエリアは、どこか呆れているようにさえ見えた。


 見えないが。


「――どうですこの考察力。うちのクノン様のことどう思います?」


「ええですねー」


 なぜか棒読みでなまっていたが。


「誤解がないように言っておくけど、私はちゃんと『実力の派閥』だよ。


 単純にね。

 誰かと何かするよりは自己研鑽の方が好きなんだよ」


 そうだろう、という感じだ。


 あの「飛行」は、研鑽と工夫の賜物だと思う。


「飛行」できるだけで満足しなかった。

 そんな飛び方だ。


「派閥の理念に納得した結果なんですね」


「うん。

 クノン君がどう思ったかは知らないけど、自分では順当だと思ってるよ」


「でも協調性もありますよね?」


「揉めたいわけではないからね。できれば誰とでも仲良くしたいよ」


 なるほど。


「エリアちゃんはモテる」みたいな話を聞いたことがあるが。


 これはモテそうだ。






 ゆっくり話すのは到着してから、ということで。


 小休止を入れた三人は、再び飛び立つ。


 そして予定通り。

 昼には国境を越えて、新王国オスベミルズに入国。


 目当てであるゴージュへと到着した。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍版『魔術師クノンは見えている』好評発売中!
『魔術師クノンは見えている』1巻書影
詳しくは 【こちら!!】
― 新着の感想 ―
要は、ドローンより飛行機をモデルにしてる感じかな?
> なんとなく、クノンの性格成型の理由がここにあるのでは、と。 > > この主従の二人。 > なんとも軽すぎる。 あながち間違ってないけど、真の性格成型はこの二人共通(クノンには侍女として、リンコに…
これだけ簡単に個人に飛行能力があると、国境越えの入出国管理が気になりますね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。