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528.旅行のようなもの





 クロディウスがゴージュへ行けない理由はわかった。


「ゴージュへ行くのは構わないんですけど」


 少し考えて、クノンは言う。


「でも、僕は単位があります。

 あまり長く掛かるのはまずいんですが……」


 特に、ディラシックから離れるのがまずい。


 クノンは単位もあるし。

 商売もある。


 一応、今はほっといても収入がある状態ではあるが。

 もしもの時は対応せねばならない。


 たとえば。


 ――霊草シ・シルラ関連。


 聖女レイエスと共同制作している商売だ。

 流通が増えつつある丸薬と紙型傷薬は、今のところクノンしか作れない。


 急な注文が入るかもしれない。

 その時不在だと困るだろう。


 ――魔建具関連。


 後輩セララフィラと考案した魔道具だ。

 かなり調子がいいらしく、今彼女は掛かり切りになっているらしい。


 何か大きな動きがあるなら、手伝いたい。


 霊草と魔建造具の二つは、念頭においておきたい。


 それと、魔道式飛行盤か。

 生産が追い付いていない、みたいな話を聞いている。


 時間が取れれば、製作に協力はしたいが……。


 あと、気になることがちらほら。


 ――やはり、長く空けるのは難しいと思う。


「関わる以上は、完成まで付き合いたいですけどね。

 でもたぶん最後までは……」


「そうだな。

 思ったより難易度が高い開発だと、俺も判断している。


 非の打ち所がない完成を目指すなら、一年以上掛かりそうだ」


 クノンもそう思う。


 クロディウスがただものじゃないのはわかる。

「朽黒の魔術師」であることも、疑ってはいない。


 だが、まだ、ちゃんと実力を見せてもらっていない。


 だから彼のことはともかく。


 ロジーは知っている。

 ちゃんと実力があることを知っている、すごい人だ。


 正直、クノンとはレベルが高すぎると思う。

 クノンが師事するには、遠いと思う。


 造魔学を学んでいる時は、付いていくのがやっとだった。


 一からの素人に根気強く教えてくれて、感謝している。


 ゆえに、だ。


「ロジー先生が参加してまだ進展がないっていうなら、完成はかなり遠いと思います。


 ずっと付き合いたいですけどね。 

 気になる魔道具だと思うし、完成したら色々できそうだし。


 でも、ずっと参加するっていうのは、現実的じゃないです」


 仮に、ディラシックから離れなくてもいいなら。

 ここに残っていいなら。


 それなら少し話は変わってくるのだが。


 しかし、それならクノンじゃなくてもいい、みたいな話になりそうだ。


「伝書水魚」の件も。


 レポートがあれば再現くらいできるだろう。

 教師の実力ならば。


「気楽に参加してくれればいい。

 先に言った通り、魔技師の意見がほしいんだ。


 少しでも進展があればいい、程度の気持ちだ。

 期待はしているが、現状維持でも構わない。


 多くは望まない。

 俺やロジーが参加してこの程度だからな。


 ――十日くらいでどうだ? 行ってくれるか?」


 十日。

 それくらいなら大丈夫だろう。


「わかりました。

 では十日間だけお手伝いさせていただきます」


 こうして、クノンのゴージュ行きが決定した。





「――というわけで、十日間くらいディラシックを離れるから」


 話をつけて、クノンはロジー邸を後にした。

 そしてまっすぐ家に帰ってきた。


 クノンの外泊は、専属侍女リンコも同行するから。

 早めに話をしておかねば。


「新王国のゴージュへ行くんですか?」


「うん。都合悪いかな?」


「何言ってるんですか。

 クノン様の都合に合わせるのが私の仕事ですよ。


 伊達に高給貰ってないんですからねっ」


 ばちんとウインクまでつけての快諾だった。


 よかった。

 嫌な顔をされたらどうしようかと思った。


 見えないけど。

 嫌な顔をされても。


「出発はいつですか?」


「明後日の早朝かな」


「明後日の朝ですか。急ですね」


 準備期間が今日と明日しかない。


 確かに急かもしれない。


「ほら、早くリンコと旅行したいっていう僕の気持ちが溢れてるんだよ」


「えっ!? 一緒に豪華グルメ旅行へ!?」


 まあ、それでもいい。


「本当に旅行みたいなものだと思っていいよ」


 クノンは忙しいと思うが。

 仕事をしに行くようなものだが。


 侍女はそれなりに余裕があると思う。


 というか。


 やることがないかもしれない。


 クノンの傍に四六時中いる必要もないし。

 大して世話も必要ないと思うし。


 だから、ぜひ観光でもグルメでも楽しんでほしい。


「旅行かぁ。じゃあご近所さんにお土産買って帰らないとなぁ」


 そうしよう、とクノンも思った。


 せっかくの遠出だ。

 同期くらいには何か買ってきてもいいだろう。


 ゴージュに何があるかは知らないが。

 特産品とかあるのだろうか。


「明後日の朝早くに出発して、昼には到着してるかな。

 風魔術師に飛んでもらうからね」


 徒歩や馬車だと遠出になるが。

 風魔術師による「飛行」なら、すぐに到着する。


 そしてゴージュでカイユと合流するのだ。


 クノンの「水球」でも飛べるが。

 断然、速度が違う。

 ここは専門家に頼むのがいいだろう。


 問題は、運んでくれる風魔術師が捕まえられるかどうかだ。


 同期リーヤに頼むか。

 それともほかの人か。


「合理」のカシス辺りは頼みやすい。

 つい先日、第一校舎の件で会っているし。


 あえて学校関係者ではなく。

 運搬業を生業にしている、街の風魔術師に頼むのもありだろうか。


 とにかく。


 明日は風魔術師探しだ。





「――それじゃ出発するね」


 クロディウスらと会った二日後、早朝。


 クノンと侍女は、ディラシックの出入り口付近にいて。


「よろしくお願いします。今日も可憐なエリア先輩」


「はいはい飛んでる時はしゃべらないでね。舌噛むからね」


 ――「実力の派閥」エリアに運ばれるのだった。





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風魔術の運搬中って盗賊とかに襲われたりするんかな。飛行持ちレベルまでいくと盗賊にならないんかな
確か新王国って英雄の傷跡に厳しいんだっけ? クノン大丈夫かな。
新王国はシロト先輩の出身地でしたか そして先天的な欠損を「魔王の呪い」と呼ぶ国でもある そっち方面での事件の匂いがしますな
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