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スマイルいちばん

 東京クレイドルの一角、何の変哲も無い商店街を歩く一団がある。

 フェブラリーラボのメイデン達だ。

 和気藹々という表現が相応しい彼女達は、そのまま「飄々亭」という看板を立てた、若干古びた様子の店の中へと迷いなく入っていく。

 店員は気だるそうに入り口を見やるが、入ってきた少女達の顔を見て表情を一変させた。


「いらっしゃ……八子(やこ)ぉ! まあまあ、友達まで連れてきて……ホラ、座んなさい座んなさい」

「お母さんってば、ボクがまともに友達連れてくるの小学生以来だからってはしゃぎすぎだよ」

「ちょっと闇見せるのやめません?」


 ●


「いやー、東京に泊まりになるとはねー」

「横浜から出てもよかったんだけど、一応は東京クレイドルの管轄だからボクらがエトワールに協力する……って名目になるみたいだからね」


 クレイドル運営局などを交え作戦についての打ち合わせを進めた結果、東京クレイドルが知らなかったのでは世論やらの面から色々とマズいらしく

 一応は第一発見を東京クレイドルという事にしつつ、正式にエトワールに仕事を出しつつフェブラリーラボに協力を要請した、という話に纏まった。

 その結果、東京から共に出撃する事に決まったので

「やっちゃんの実家って東京だよね!?」

「中華料理屋さんって言ってたの覚えてますからね!」

 という2人の意見によりこうやって食べに来ているのだ。


「それで、注文は決まった?」

「やっちゃんのおススメとかある?」

「母さんの作る八宝菜は凄く美味しいよ」

「じゃあ麻婆豆腐」

「じゃあって何さ!?」


 そんなやりとりをしながらも注文を纏め、母さんに伝える。

 母さんが厨房に入ると、話題は店にちなんだものになる。


「そういやここっていつ頃まで住んでたんです?」

「中学出るくらいまでかな……」

「高校もアパートも横浜クレイドルのとこだっけ、一人暮らしする前提だったっぽいけどやっぱ家だと束縛多いとか?」

「そういうのじゃないんだけど……その、例の事件があってから、東京いると人の目があってさ……」

「「あー……」」


 振られた話題とはいえ、こうも空気が沈んでしまうと流石に罪悪感がある。

 楽しい食卓に相応しい空気にしようと話題を切り替える。


「そ、そうそう! 明日の作戦についてなんだけど、さっき調べたら工場型でも大型バリアントを作るのは手間取るらしいから、あんまり数は出ないらしいよ!」

「過去の資料とかあったんですか?」

「うん、前はメイデンになったばっかりで右も左もわからなかったのにエース扱いされちゃったから、なんとかしようと思ってよく図書館とかで資料見て勉強してたんだよね。 今日も集合までにそこ行ってきたんだ」

「勉強……そうか、勉強……」

「強さの秘訣ってやつですよね……」

「あれえ? どうしたのみんな、なんか静かじゃない!?」


 朗報を告げたはずなのだが、なにやらみんな考え込み始めてしまう。

 こうなるともう誰かといる時の沈黙が苦手なタイプのボクからすれば自分の責任という感じがしてきてならない。

 その雰囲気を裂くように、テーブルに料理が運ばれてくる。


「はいよ、麻婆豆腐と八宝菜とラーメンBセット、あとおまけに小籠包!」

「ありがと、八宝菜は玲花(れいか)だよね」

「あ、って事はやっちゃんも八宝菜頼んでないんじゃん!」

「だって母さん家でも八宝菜作るんだもん、美味しいけど流石に飽きるよ!」

「我が娘ながら目の前に母がいるのに、そういう事言う肝の太さは親子だよねぇ……」


 ついノリで本音を言ってしまったので、コホンと咳払いで話題をひと段落させる。

 そして3人揃って号令をかける。


「「「いただきまーす!」」」

「はい、召し上がれ」


 食事に関しては礼を欠かすな、それが雹堂(ひょうどう)家の教えだ。

 しっかりと手を合わせた後にラーメンに手をつける。

 流石に麺は手打ちではないが醤油ベースのスープは自家製で、細麺によく絡む。

 啜ると口の中にうまみが広がり、思わず顔も綻んでしまう。


「いやー、八子さん美味しそうに食べますよね……ホント美味しいから気持ちはわかりますけど」

「えっ!? そんな顔緩んでた?」

「超笑顔だった」


 乙女としては若干恥ずかしいところがあるが、久々に親の手料理を食べられたのだから笑顔になるのも仕方がない。

 間断なく食べていく事でそれを誤魔化す事にする。


「あんま早食いって良くないらしいけど、やっちゃんの場合ちゃんと味わってるのが顔でわかるから何か言う気しないわ……」

「天性のものですよね、これ……」

「母さん、おかわり!」

「「マジ!?」」


 何を驚いているのかわからないが、そんな事を考える暇があったら箸を動かすべきだろう。

 2杯目という事で若干の味変を加えて違う楽しみを堪能しながら食べすすめていく。

 そうして食べ終わったあたりのタイミングで、美樹(みき)がにやにやと話を切り出して来る。


「そういえばさ、やっちゃんはなんでメイデンになろうって思ったの?」

「んふ? あー、そういや話してなかったっけな……」

「私も気になります!」

「そうだね……ボクの父さんがクレイドルの運営に関わる仕事してたんだけどさ……」


 語り始めると露骨に場の空気が重くなったのを感じる、人の親のこういうネタはやはりどこも似たような扱いなようだ。


「い、生きてるからね!? ただちょっとバリアントの襲来にマジビビり入って、その拍子に高い所から落ちて大怪我はしてたけど!」

「労災?」

「ヒヤリハットというかなんというか……」

「ま、まぁ、そういう事もあって「しょうがないなー、パパはボクが守ってあげるから安心してね!」とか言ってるうちにホントに試験受ける事になって、って感じ……」

「その結果がエトワールのダブルエース……」

「八子さんのお父さんが事故らなかったら、この才能が埋もれてたかもしれないって事ですよね……とんだバタフライエフェクトですよコレ」


 なんだか好き放題言われてる気がするが気にしない。

 そもそも身内に対してもセメントなのがフェブラリーの社風……と入社して数週間だがわかるようになってきた。

 エトワールだとやれ礼儀作法だ上下関係だと言われて息苦しそうだったのを思い出したが、アレはすぐに自分がエース扱いされるようになり上の方になってしまったので結局身についていない。


「そういう美樹はどーなのさ」

「どうって、動機?」

「そうそう、玲花はともかく気になるじゃん」

「確かになー、玲花はともかくアタシは言ってなかったよね」

「ともかくってなんですか、ともかくって!」


 玲花が抗議の声を上げるが、デザートの杏仁豆腐が運ばれて来るとそちらに夢中になり怒りもなりを潜めたようだ。


「んー……実はね、高収入の求人サイト経由で始めたんだ……」

「高収入の求人サイト」

「あー、よくそういうバイトとかの宣伝トラック走ってますよね……」

「そんでもって、確かにボクらの収入ってかなり高いもんね……」

「しかもメイデンを適性が無くなるくらいまで続ければドレス開発とかそっちコースもあるし、意外と将来安泰じゃない? って思ってさぁ……」

「まあ、普通というかアリだよね」


 美樹にしては意外と現実的らしい話でちょっとビックリしたが、全くおかしな話ではない。

 メイデンはやりたがる人は少ないが、最近のアイドル的な推し方もあって憧れられたりする職業ではある。

 似たものを挙げるとするならばプロスポーツ選手のような扱いだ。


「……んー、食べ終わったしそろそろ混んで来たから帰ろっか」

「うん、ボクは泊まるけど美樹も玲花もホテルだよね」

「やっすいビジネスホテルですけどねー」


 そんな今日の夜から明日にかけての予定を確認しながら、店の外まで見送りに向かう。

 それぞれ駅の方に向かう後ろ姿を見届け、店に戻ろうとした、その時だった。


「──? なんか、寒気する……?」


 まだ初夏だというのに服装の面で油断し過ぎたか、あるいは感じるこの違和感がなにかの視線なのか。

 理解出来ない悪寒のようなものを感じながら、今日は早く寝ようと店の奥から二階の自室に向かうのだった。


「…………やっと、見つけた」


 ●


「それじゃあみんな、準備は出来てるわね?」

「オッケー!」

「イケる」

「はいっ!」

「ばっちり!」

「大丈夫です!」


 一応はリーダーという事になっている(めぐみ)さんの点呼に、エトワールもフェブラリーもなく5人が揃って応える。

 それぞれが既にドレスを身に纏い、いつでも飛び立てる状態だ。


「もう一度確認、目標は八丈島のコンジュラー撃破。 それまでにかなりの小型・中型を中心にした抵抗が予想されるから残弾やエネルギー残量には気をつけて」

「エネルギー残量だよ、わかってるかいやっちゃん?」

「うん、リミッターは外さないよ……なるべく」


 その言葉に6人中5人がドン引きと言った様相を見せる。

 とは言われても自分専用に調整されたシラヒメに慣れてしまうと、多少チューンアップされた程度のラプターでは物足りなくなるのは当たり前の事なのでどうしようもない。


「し、信用できねぇ〜……っ! まあ、それはいいとしてもう一つ……わかってるな?」

「はい、撃墜数を競うんでしたよね」

「一応、中型は小型3体換算でやろうと思ってるわ、データが残るから自分で計算する必要もないし安心して戦ってね」

「お? 乗り気じゃなかった恵にしてはファインプレーじゃん」

「ちゃんとルール決めないであーだこーだ揉めるほうが面倒なのよ……」


 恵さんはなんだか遠い目をしながらも、簡易ブリーフィングは終わりという事で配置につく。

 それに倣うようにしてカタパルトにつき、号令を待つ。


 多少の遅れはあれど、ほとんど同じタイミングで表示灯がOKの字を灯せばそれに呼応するように恵さんが声を張り上げる。


「それでは……エトワールコーポレーション、フェブラリーラボによる工場型合同破壊作戦、開始──ッ!」


 一斉にカタパルトが起動し、6人の処女達が空へと舞い上がった。

アニメだと声優でバレバレになるような謎の声シーンがやりたかったので初投稿です

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