閑話 黒と黄色だけの線世界
私はこの世界が憎い。
争いや非道の限りばかりが蔓延している。
何故この世界に来たのか。
何をこの世界で求められたのか。
そんなものもないのかも知れない。
暗い裁縫工場の地下から出た当時に話だ。
たどり着いたのは周りの街と違い賑わっていたから。
ともいえ私には寝る場所もなく知り合いがいる訳でもなく。安い旅宿を主に魔獣退治を行っていた。
この辺りはサーペンダーという蛇が良く出て、街を脅かす。大きいもので3mを超える蛇は。私の収入源になる。
都会に来れば分かるが、物の価値がお金に変わる。冒険者組合に登録できる年齢ではないが、受付の姉さんは魔石は買い取ってくれた。魔石は一番換金レートがいい。
「はいよ。小さいのに頑張るね、あんた」
ふぅ〜と煙管を吸いつつ金貨をくれる。
別にこの受付の姉さんが真面目でない訳でもない。四階建で古い冒険者組合は地元の人の酒場に近い。
大きな任務がある訳でもなく。
いつも誰かが酒を飲んでる。
お姉さんも通常営業なのだ。
カルリーン地区にある冒険者組合は。対岸に淫婦街のあるマニニ地区に近いのでいつも誰か屯っていた。
ミュシャとあったのもこの酒場が初めてだ。
「おうカネラ。キョシクでタバッコ買って来い」
「また?いいけどお釣りもらうよ」
「おう、こっちも頼む〜」
「はいはい」
行くところがないので私も屯っているが。キョシクはキヨスクでそこら中にある。チケットから薬草までなんでもあり。
タバッコのお使いも私には少なくない収入源になっていた。場所によって、種類によって値段が違うのだ。
秋に入り、夕方前になると路地に女性が増える。
この辺りは麦畑が多く、農民主体でもあるので。売春もまた稲刈りの後が増えるのだった。
「カネラ。前言った服屋に行った?」
「ん〜ミュシャ。適当に買ったよ。ありがと」
「もう!可愛いくすればいいのに。基はきれいなんだから」
眼はぼやけて見えるし、きれいに成れば攫われるし犯される。なので服装は適当。破れてボロボロに近い。
「でも冬が近いし。ちゃんと貯めたの?」
「まぁなんとか。。暖炉のある所探すよ」
「はぁ。。逞しいと言うか。投げやりというか。。!そうだ。蒸風呂で働けば?近くにある所聞いたげる!」
「え。。お風呂あるの?」
プラハにある蒸風呂は基本的に湯舟はない。本当にサウナそのものである。その分定期的に蒸さないと行けないので、火を組んだり、薬草を敷いたりと子供が使われる。
そう。私はプラハに来て半年の8歳の女の子。
ミュシャが話をつけてくれ、また冬の間は家に誘い同棲もしてくれた。とても面倒味のいい10代の淫婦だった。
私はミュシャに感謝をしている。
たまに彼氏かパトロンが泊まるので、その間は安宿に。サウナの仕事は問題なく定期的な収入源になる。
死ぬ前の人生と異なる事は。
基本男女混浴なので、偶に本番している人がいる。
別にいいのだが、声がうるさい。あと様々な陰部や裸を嫌でも感じる毎日なので。不感症にならないか心配なくらいだ。欧州らしく男性器は立派だった。
とてもじゃないが入る気がしない。
思った以上に普通の生活をしていた。
ミュシャは妹を若い時に亡くして。私を同じ様に愛してくれた。もちろん両親の事は話さない。淫婦に良くある売られた話である。
春になる頃私は教会に連れて行かれ、祝詞を教わる。魔法も使えるなら祝福もできるのではないか、とミュシャの親心であった。
仕組みはわからない部分があったが、ヤン・ミリーチ司祭は優しく、目も見えない孤児の私に聖書を読んでくれ教えてくれる。
夏になる頃には天使の名前を覚え。
祝福は使える様になり喜ばれた。
私はその髪と半眼が目立ち。
小さな聖女とからかわれつつも楽しんでいた。
――世界はそんな幸せな時は続けてくれない。
西では帝国との戦争が激しくなって。教会もまた重症者や戦場より避難民で溢れだした。癒やしの魔法はこの時覚えた。
街はゆったりした雰囲気から、徴兵や門から出るのもギスギスしだし。いつかここも戦場になるのかと思いつつまた冬を迎えた。
9歳になった私は、初めて洗礼式を上げる。
嬉しかったし、子供達が喜ぶのも眼の前で見えた。思った以上ミカエルが羽ばたかせ。プラハでは小さなが取れ『聖女』と呼ばれ出した。
終わった後にミリーチ司祭が私に仔証をくれたのは嬉しかった。初めて・・この世界で認められた様に。
ちなみに春になる頃ミュシャはお腹が大きくなった。
淫婦としては失格だが、私としてはお姉ちゃんに子供が出来た感覚だ。とっても嬉しい。嬉しかったのだ・・
しかし神は非道で。戦場から帰る兵士に殴られ罵られ。
それでもミュシャは懸命に子供を守った。
仕事である故断る事もできず。
子供を育てる為に資金がいる。
出産を僅かな時期にミュシャは病気にかかった。
単純な破傷風だ。男に酷い事をされたのだろう。。
何故この様な無情が。
ミュシャに訪れるのでありますか。余りに酷い。
ミュシャは子を産む前に亡くなる。
最後死際に彼女は子供に誤っていた。
”ごめんね 生めなくて ごめんね こんな母に”
『唸れ風刃』
きれいに舞い上がる血とミュシャの頭部は
ゴトッ・・ゴロ……と。
ボーリングで玊を落とすように響いた。
私はその音を忘れない。
私はこの世界で二度目に泣いた。
お姉ちゃん。。ありがとう。ごめんね・・と。
その後私はミュシャの部屋に住む事になる。
戦争は部隊をハンガリーに向け。
友好国であるプラハに帝国の姿が増えて来た。
□□□
既に東ゴードの七割は帝国傘下になっていた。
水商売も楽ではない。一般に比べると兵士達は腕力が強く地が強く怪我をする淫婦も多く出てくる。
骨折程度は日常茶飯事で、下手をすると内臓破裂などひどい状態もあった。私は癒やしの祈りを定期的に行う様になった。
売春宿にライトが来たのはその頃であった。
偶に訪れ、人気の女の子を指名する。
数週間いて好きに遊び飽きると帰って行く。
4,5年に一度のでペースで抱きに来ただけ。金払いはいいので黙っているが、数人の売春婦は壊れる。
私とあったのもたまたまだ。
未成年に手を出す変態の気持ちはわからないが犯された。
ただそれだけ。思い出したくもない。
そこには気持ちもなくただ単純に陵辱されただけ。
涙すら出なかった。
私は痛い苦痛と、こいつには敵わない魔力の渦を見つめていた。
―――ミュシャと共に悲しみの感情は消えていた。
祝福が知れたのだろうか。
バチカンより騎士が来て連れて行かれた。
初めて見た教皇は白粉の匂いがしたが、何処か死臭を隠してる様な匂いであった。
バチカンで生活をする事になるが、特に変わる事はなかった。
魔法を教わったり、聖書について講義を受けたり。食事、寝泊まりについて心配は無くなるが、相変わらず自由はない。
眼はますます見えなくなる夢ばかり見ていた。
私はこのまま祝福を贈りながら死ぬのだ。
自分の姿形もわからないまま。。
シュリンプとの出会いは。
私の世界を広げてくれた。
「救いの神を探せ。か。。」
神が何を望んで転生させたのかわからない。
だけど、あの子供について行けば何か変わる筈だ。
あれだけ嫌だった”聖女”のあだ名が。
今なら少し受け入れた気がする。
「相分かった。ではそれぞれ準備を進め。追って連絡を」
目の前は全く見えない。
だが魔力が格段に上がっからか。
蠟燭の明かり程度の気配から。
まるで線で書かれた範囲が、形が、人物が。
黒と黄色だけの線世界。
さあ行きましょうか。この世界は嫌いで救いがない。
少しでも救いのある世界に変えに。
私は”聖女”だもん!
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