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エーリスの提案

新章始まります!

よろしくお願いします!


 竜玄歴 1207年 八月


 プラハに集まるのは全員でなく。

シューリヘトと馴染みの深い人物が選ばれ集合していた。

聖女カネラ。トランポ公爵。ヴァシリキ。ジョヴァンニ。そして話を切り出すエーリスと黒潮衆。


「皆様。夜分にすみません。是非とも皆様のご意見をお聞きしたいと思いまして。シューリヘト様の事です」


 現在仮死状態となってはいるものの安定している。本人はまるで深く眠りについている様に。だが起きる気配もない。


「多くの神々が加護を受け入れられる皆様ならお分かりの様に。この世界は死者を蘇生する事は禁戒とされております。例え()()()()()()()()()()


「ふむ。エーリスの主神はハーデス。冥界の王たる由縁の話もいくつもあろうて。となると・・イストモスの何処かか?」


「トランポ様の言う通り多くの神話で復活はありまする。しかし現実として()()()()()()など。一人しかおりませぬ」


「……唯一神。キリストか?」


―――キリストの復活によって全ての人が生きるとされ。死者は復活するとされる――


 カネラはふと思い出した様に口に出す。

皆が驚いて一斉に振り向く。


「エーリス。分かりました。必要な物を集めシュリを戻しましょう。何が必要で。どこに行けば良いですか?」


「はっ、聖女様。『聖杯』そして『神の血』一つはバチカンに。そしてもう一つは聖地エルサレムにて」


「相分かった。ではそれぞれ準備を進め。追って連絡を」


「「「ハッ!」」」


 こうしてシューリヘトの復活へ。

 皆は動き出すのであった。




□□□


 エーリスは一度ペロポネソス半島に戻っていた。もちろん一族に狙われる可能性を承知の上である。

 元来一族を抜ける事は禁忌とされている。

理由はなんであれど一族揃って狙われる事になるのだ。


なのでエーリスは敢えて単独で行動し、黒潮衆は別任務を与え黒海周囲の街に派遣している。エーリスが訪れる目的は。

絶対に敵わない弟ヘ合うためであった。



 エリス島の管理をするバトロル一族は”レグナム神国の暗器”である。多くの人を闇に葬り去り、けして見つかる事のない暗躍の一族。

この穏やかな半島では火山も森も川もあり。

どこにおいても訓練が行われる施設が存在した。

 エリス島の主神とするハーデースは神々の中でも神話は少ない。が、この島では古来より伝承があるという。


―人を現世を超えて神性へと到らせ、(ごう)(あがな)いを保証し、その人を神と成し、その人の不死を確かなものとなす―


俗に言う”エレウシスの秘儀”の事である。

冥界の神とされるハーデースは、秘儀に参加した者は死後における幸福を掴むことが出来るとされる。ただ、何人足りともその内容を口外することは禁止されバトロル一族だけ口伝いに伝わる。


 そういう特殊な一族であるためか、家族内でもよく模擬戦が行なわれていた。エーリスしかり。幼き頃より様々な争いで育つ。


 エーリスの名がそうである様に、産まれ持ってから魔力が高く百年に一度と言われし才能は武芸であっても、神の加護の強さとも強大であった。まさに一族の跡取りとして育てられた。


 エーリスは親族を入れ10数名の中で育つ。

時に厳しい任務や宝探しや収集、魔獣討伐など任務を受けながら。それは順調に。そして”エレウシスの秘儀”への挑戦。


 秘儀故に内容は語られないが、一度エーリス・バトロルは死んでいる。跡継ぎや一族上位のみが成人前に行なう伝承。

黄泉からの帰還が達成された時に再びこの世界に戻れる。内容は個々に異なる事はわかるが、基本的な部分はわからない。

秘儀を終えたものは誰もが震え話さなかった。


 エーリス10歳の時。参加者は長兄ピルゴス、長女エーリス、末弟ヌジャビ。ヌジャビに至っては6歳であったが、才能を見出され参加をする。そして結果はヌジャビが一番に生き戻る。


 半日の後にエーリスが。そして12歳を迎える長兄ピルゴスはそのまま戻らず亡くなった。驚く事ではない。十人に一人戻ればいい儀式であり分かっているから能力不十分者は参加しない。驚く事はヌジャビの存在であった。


 エーリスが意識しだすのはこの秘儀からである。

当の本人は。空虚というか、いつもうわの空である。暗器の扱いは糸に長けているが、それ以外は中の下であった。


 正式に跡取りはエーリスと噂されていた収穫祭の時。


「エーリスよ。そしてヌジャビ。二人で戦えばどちらが勝つかのぅ?」


現バトロル盟主ペロポニソス・バトロルの言葉は酔っていてからか、また単に疑問に思ったのか。これが悲劇の始まりであった。

二人は模擬戦を行う事になる。


正直エーリスは負けないと思っていた。

体術、分身も操れる様になったし、軽くあしらう程度であった。

しかし攻撃が当たらない。

速度も力も上である上に、リーチや全てにおいても上なのに。・・まるでエーリスが()()()()()()()()()()()


 結果エーリスは()()で伸びて気を失う。

ヌジャビが懐に入り無情の”重手(かさね)”の一撃を。


場は静まり帰り、言葉を出すものはいなかった。

実の母であってさえも、あまりの衝撃でナニ起きたのかわからない。

ただそこにうつむせに倒れたエーリスがいた。


翌年エーリスは跡継ぎを辞退した。

ヌジャビもこれを拒否し未だ決って居らず。



「んぁ?姉さん久しぶり。戻ったの?」


「ヌジャビ。手を貸してくれないか?」


「…僕も()()()になれって事?」


「どちらでも良い。ただ主を救うのは。ヌジャビの力が必要なんだ」


……久しぶりに会う二人は八年振りであろうか?それだけ避けていた。それだけ近づかなかった。


 ヌジャビはアルフィオス川に釣り糸を足らし少し考える。目の前で深々と下げる姉を。頭をポリポリと掻きつつ困った顔で話す。


「うんいいよ。会ったら殺せと言われたけど。そっちのほうが面白そうだね。詳しく聞かせて姉さん。綺麗になったね♪」


釣り竿を上げると魚が三匹掛かっていた。

糸が不自然に絡まり合い。

魚が糸に捕縛され。

釣り竿には針一つなかった。


 まだ幼さが残るが既にエーリスより背が同等でひょろっとした背格好である。相変わらずボーッとしてとらえところはないが。


運命の糸使い(マリオネット)』と呼ばれ、年明けに16歳になるヌジャビ・バトロルが参戦した。



□□□


竜玄歴 1207年 十月半


 ジェノヴァに戻りいつもの書斎につく。

あまりに色々な事がある中、無事に帰れた事を安堵する。冒険者組合(ペリークリト)の被害は少ない理由ではない。多くの騎士もまた東欧の地に眠る。


「森の妖精達は皆無事のようだな。。グッ」


ジョバンニ自身半分火傷を追っていた。精霊を使う炎や水の類いの傷は癒やしの治療では治らない。まして自身の精霊の力をオーバーして行った戦いのダメージは蓄積されていた。


黒死病、闇の亡者、神の使徒。。

生きているだけましか。


机に収めていた商会証(コレト)が淡い光を帯びている。

連絡が付きジェノヴァ王国に入国出来たようだ。


「どこで話をするか。。トラットリアを借りるか。ユーグか。久しいな」


秘書に連絡し”Trattoria Arvigo”に連絡をする。

自身は商会証(コレト)でメッセージを送り、副ギルド長としての事務作業に入る。


 報告書は四候を初め多くの重臣にも伝わるだろう。



――第一回十字軍遠征。


此度無事に教皇の目的は達成されし。我がジェノヴァ騎士団も勇敢に其の存在を示す事できマルタの地を頂けました。

しかしその被害は大きく。ジャコモ率いる騎士団300名中163名が死亡。内16名は黒死病にてブタペストの地で埋葬済み。プラハにて重症者が42名が治療中。

 戻れた騎士は100名弱といえども。

その存在をバチカンに示せれた事成功致しました。

組合よりも遺族に保障を行う段取りを進めます。また四候の方々。各家に援助共々よろしくお願いします。


 トーリア家 ドリアーノ公爵。死亡

 クラハル家 ユドルフ侯爵。死亡・・・


 多くの騎士は貴族より徴兵されていた。

光輝く騎士団の鎧姿は勇ましく。恥じない誇りある戦いを見してくれた。若きもの。武芸に秀でるもの。多くのものが失われる。これはジェノヴァだけでなく欧州に応援で出した各国全てに言える。


皮肉な話ではあるが、多くの貴族に未亡人や跡取りを失い。各国貴族は翌年以降多くの婚姻や他国との繋がりをより大事にしていく。貴族間の繋がりは国を出だす。


本格的に冬に入ろうかという時期。

中央サン・ロレンツォ大聖堂において。

サルヴァトーレが代表し盛大な葬儀が行なわれた。


  新年の様に大規模な祝福はなく。

  ただ大勢の遺族が悲しみに喪す。

  


  ・・そこには新年居た子供二人の姿はなかった。

ヌジャビの名はNujabesより。

曲がとても良いので聴いてみてください。


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