神の声(ヴォクス・ディ)
キツい表現多いですが。。
三章は戦場とペストが多いです。
東ルートを通る十字軍は順調であった。
アルプス山脈を抜けるのは時間がかかったが、大きな被害もなく順調に下山出来た。山脈には魔獣も少なく、どちらかというと万年雪が降り積もる吹雪の方が痛手である。
足を滑らせ、凍傷にかかりなど脱落者はいたものの、無事に山越えを終えることが出来た。およそ一月掛かるが、予定通りに進めた。
旧オーストリア神国に入り、村や街の住民は十字軍に比較的友好であった。これは教皇から十字軍が送る事は既に欧州全土に知れ渡り、尚かつ旧東ゴードを救うとあれば尚更。神国とあるように教会の存在は住民には絶大なものであった。
飢饉で食材もない中、休憩や場所の提供、そして情報がどんどん入って来る。帝国より一万の兵がリンツに入り。ロンメル元帥が守っていると。また流行病は南東部地域に蔓延して。連絡が取れないなど。
東部より黒死病の影響を受けた街を廻る。初めは傾向がなく、街自体は普通に過ごされていた。が、グラーツに入ると、何人か感染者を見る様に。
「水の汚染が危険だ!まずは周囲の安全と井戸に祈りを!エリサートお願い。また清潔なものが必要だ!周囲の宿に白い布など連絡を」
「ふむ。シュロスベルクの丘が丁度良く開けておる。陣をそことし、教会や櫓を借りるぞ。思いの他被害は出ておる」
グラーツは元々ローマ帝国が築いた砦をベースに街が立つ。シュロスベルクの丘は街を一望するには持って来いだった。まさか十字軍が山脈を降りてくるとは思わず、門兵は何もできないまま捕まった。帝国兵ではなく貴族の私兵という。
「拠点を此処とし。周辺の散策、村の状態を廻る。けして戦闘を仕掛ける訳ではない。黒死病の重病者を救いに。白魔術士、よろしく頼む。騎士や神兵は邪魔立つものを切伏せろ!」
「「ハハッ!」」
西ルート大将アンドレア・ドーリアの慕われる理由は。例え兵に厳しくとも白魔術士に命令する時も。きちんとお願いをする。
これはこの時代貴族より派遣される軍将とは異なる。まず話かける事すらないのである。ズッカ達が言う事も配慮してくれた。
それは住民に対しても同じ事。強いものが弱きものを救うのは当然だ。そして現場の声を聞き被害が広まる前に対処をする。その使い分けが上手く軍は指揮が高く保たれていた。
コンドッティエーロとして培った技術だと言えるだろう。
彼はもとより一傭兵からのし上がったに過ぎない。
海軍提督になるまでどれだけ戦場に出た事であろうか。
□□□
斥候部隊の報告は周囲の村々には帝国の姿は見えないが、一部ハプスブルク家の私兵が駐屯していると。数はそこまで大規模ではない。
黒死病の被害は北東部、スロバキア国境方面より感染が見られるとの事。つまり東が感染源だ。
「…であるからして。これより東北部が主要となりまする」
「まずはウィーンの奪還か。。簡単な話ではないぞ?」
「周辺の村を先に手を打ちつつ。またこの地に戻るのはいかがでしょうか。帝国軍はリンツに拠点を築く事でこちらには来ませぬ故」
「確かにまだ時間はある。戦場に出るまえに救えるものは救う。民衆もまた従って頂けるだろう。時間が惜しい」
少ないといえどもグラーツも既に死者が出ていた。
六月初旬。
20余りの村を救いに各部隊が展開する。
白魔術士を割り振り黒死病に抵抗する十字軍の行動が始まった。
村々にて小競り合いは起こるものの、病気に関せば皆従ってくれる。食料は騎士が主に調達してくれるお陰で。
10近くの村が黒死病より救われた。
どこでも井戸から汚染されており。
皮肉な事にローマ帝国が作り上げた地下水道よりネズミが侵入した形跡があった。つまり生活要路が感染に至る原因である。
何より飢饉で餓死が出そうな村は感謝をした。
四つの村は大きな変化もなく。食料を渡すだけで終わる。
しかし。六つの村は廃村となる。
黒死病の勢いは北部に近づくに連れて酷くなる。
ズッカ率いた軍も同様に知る事に。
「こ、これは。。」
「・・近づくでない。感染るぞ」
――溜池一帯に死体の山が。
処理に困った為か、水を求めに来たのだろうか。
水死体は体が膨れ上がりブシューっとガスが抜ける。
その光景はもはや地獄以外何でもない。
カラスが餌場と言わんばかりに突っつく。
破れる。
異臭を放つ。
腐った池からは小動物の死骸も溢れる。
「――我が魔剣アンシャルの導き金色の糸よ。哀れなる死者を天に戻し給へ」
溜池全体に糸が囲い。
カラスやネズミは引き裂かれ。
死体に眉のように黄色の糸が巻き付く。
ゆっくりと。沼の中に死体は沈み出した。
「我は唯一神に祈りと天使の加護を給わり。悪しき汚れの水を大天使ミカエル様の息吹において。森羅清き自然に戻し給へ!」
大きな魔法陣がくるくると周り。
黒褐色だった池の色が緑色になり。
周りの腐った草も伸び。
周囲の景色は良くある溜池の姿になった。
皆、沼の前にひざまずく。
「天国でゆっくり過ごされし。神は見守っておる。皆、黙祷」
ゆっくりと祈る様に。。
皆しばらく話もなく行軍をする。
再びグラーツに戻る頃は三週間過ぎていた。
丘の上には簡易的なテントが複数あり、街の業者が出店も出していた。感謝の気持ちからか、十字軍はグラーツの民に慕われ。
このシュロスベルクの丘には後に時計台が立つ。
感謝の念を、十字軍の活躍を。
街を一望出来る時計台が作られたという。
□□□
神の声と呼ばれる黒飾箱は。
教皇自ら渡された聖キリストの血が入っているという。聖遺物の一種らしい。
何はともかく連絡が繋がる。二個ずつ各部隊に渡されていた。
一つの箱が開く時。
残りの四つも同じく光開く。五個セット。
六月の最終の星のたどる休日の昼。
アンドレア・ドーリアが周りの状況を把握する為に開いた。
「西十字軍は現在グラーツにて。周辺の村落を主に流行病を治療終えました。被害死亡者騎士34名、白魔術士143名。その他病気脱落者450名程度。街にて治療をしてます」
「東十字軍は旧スロバキア地区の森。川沿いを北上し、10日程でプラハに到着予定です。被害多数。現在総員約5800名です」
「!それ程・・大丈夫か?シューリヘト!」
「あぁすまんな。アルメイダである。ブタペストにて今もなお病と戦っておる。元気なのは1800程か。。しばらく動けんな」
「…なるほど。二部隊に分けたか。ブタペストの被害はそんなに酷いのか?」
「粗方止まったと思うが。13万に行きそうだ。まだ死体が5万程燃やせてない」
「おぉ。。なんと。神よ。。」
確かにグラーツは小規模の都市であり7万程度の街だ。それも全面的に流行前に来れた事で、被害は押さえつつあるが。。じわじわ死人も減る事はない。
東ルートは最前線と聞いたがこれ程だとは。十字軍も吸血鬼以外で約2000人亡くなっているではないか。1/5が黒死病で失われるとは。。くっ!いや、シューリヘトだからそれで済んだのか。
「教皇様。どうしましょう?当初の予定通りプラハで集合という訳には行かないと思いますが」
「・・アンドレアはどう思うかの?」
「こちらの軍は被害が少なく。また飢饉による影響が強いので。ウィーンはともかく、逆よりの西リンツを攻めるのも手かと。。ただあちら帝国軍の兵力がわからないのもあります」
「ふむ。シューリヘトよ。プラハは任せれそうか?」
「ブタペストと同様の被害でしたら問題なく。住民の話を聞く中、既に旧オーストリア領以外は帝国軍は捨ててます。戦時には至らないかと」
「ふむ。ともかくプラハに着いたら連絡を。西はまずウィーン奪還が終わらないとどちらにも動けまい。カネラは何かあるか?」
「ふ、ふぁい!なにもありませにゅ!「ドカ!」いったぁ!」
「・・申し訳御座いません。”食えるとき食わないと死にきれない”と勝手に食ってました。はぁ」
「ふぉふぉふぉ。元気そうで何よりじゃ。シューリヘト、川の安全が分かったのは吉事。ピレウスにおるダ・カマとヴェネツィアよりオルデラフォ・フェリエロを既にブタペストに送っておいた。食料などはしばらく待たれよ。アルメイダ将軍」
「おお。助かります!確かに食料状況は困っております故。ダ・カマはどんどん使いくだされ!」
「うむ。小国やらからも援助は増えておる。今が厳しいと思うが、皆の働きは世界に届く。神はいつも見ておる」
「「「ハハッ!」」」
「皆が無事に帰る事を祈っておこう。誰も死ぬでないぞ!」
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