表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/100

神の声(ヴォクス・ディ)

キツい表現多いですが。。

三章は戦場とペストが多いです。

 

 東ルートを通る十字軍は順調であった。

アルプス山脈を抜けるのは時間がかかったが、大きな被害もなく順調に下山出来た。山脈には魔獣も少なく、どちらかというと万年雪が降り積もる吹雪の方が痛手である。


 足を滑らせ、凍傷にかかりなど脱落者はいたものの、無事に山越えを終えることが出来た。およそ一月掛かるが、予定通りに進めた。


 旧オーストリア神国に入り、村や街の住民は十字軍に比較的友好であった。これは教皇から十字軍が送る事は既に欧州全土に知れ渡り、尚かつ旧東ゴードを救うとあれば尚更。神国とあるように教会の存在は住民には絶大なものであった。

 

 飢饉で食材もない中、休憩や場所の提供、そして情報がどんどん入って来る。帝国より一万の兵がリンツに入り。ロンメル元帥が守っていると。また流行病は南東部地域に蔓延して。連絡が取れないなど。


 東部より黒死病(ペスト)の影響を受けた街を廻る。初めは傾向がなく、街自体は普通に過ごされていた。が、グラーツに入ると、何人か感染者を見る様に。


「水の汚染が危険だ!まずは周囲の安全と井戸に祈りを!エリサートお願い。また清潔なものが必要だ!周囲の宿に白い布(シーツ)など連絡を」


「ふむ。シュロスベルクの丘が丁度良く開けておる。陣をそことし、教会や櫓を借りるぞ。思いの他被害は出ておる」


 グラーツは元々ローマ帝国が築いた砦をベースに街が立つ。シュロスベルクの丘は街を一望するには持って来いだった。まさか十字軍が山脈を降りてくるとは思わず、門兵は何もできないまま捕まった。帝国兵ではなく貴族の私兵という。


「拠点を此処とし。周辺の散策、村の状態を廻る。けして戦闘を仕掛ける訳ではない。黒死病ペストの重病者を救いに。白魔術士、よろしく頼む。騎士や神兵は邪魔立つものを切伏せろ!」


「「ハハッ!」」


 西ルート大将アンドレア・ドーリアの慕われる理由は。例え兵に厳しくとも白魔術士に命令する時も。きちんとお願いをする。

これはこの時代貴族より派遣される軍将とは異なる。まず話かける事すらないのである。ズッカ達が言う事も配慮してくれた。


 それは住民に対しても同じ事。強いものが弱きものを救うのは当然だ。そして現場の声を聞き被害が広まる前に対処をする。その使い分けが上手く軍は指揮が高く保たれていた。


 コンドッティエーロ(契約する者)として(つちか)った技術だと言えるだろう。

彼はもとより一傭兵からのし上がったに過ぎない。

海軍提督になるまでどれだけ戦場に出た事であろうか。



□□□


 斥候(せっこう)部隊の報告は周囲の村々には帝国の姿は見えないが、一部ハプスブルク家の私兵が駐屯していると。数はそこまで大規模ではない。

黒死病ペストの被害は北東部、スロバキア国境方面より感染が見られるとの事。つまり東が感染源だ。


「…であるからして。これより東北部が主要となりまする」


「まずはウィーンの奪還か。。簡単な話ではないぞ?」


「周辺の村を先に手を打ちつつ。またこの地に戻るのはいかがでしょうか。帝国軍はリンツに拠点を築く事でこちらには来ませぬ故」


「確かにまだ時間はある。戦場に出るまえに救えるものは救う。民衆もまた従って頂けるだろう。時間が惜しい」


 少ないといえどもグラーツも既に死者が出ていた。


六月初旬。

20余りの村を救いに各部隊が展開する。

白魔術士を割り振り黒死病ペストに抵抗する十字軍の行動が始まった。


村々にて小競り合いは起こるものの、病気に関せば皆従ってくれる。食料は騎士が主に調達してくれるお陰で。

10近くの村が黒死病ペストより救われた。


 どこでも井戸から汚染されており。

皮肉な事にローマ帝国が作り上げた地下水道よりネズミが侵入した形跡があった。つまり生活要路が感染に至る原因である。


何より飢饉で餓死が出そうな村は感謝をした。

四つの村は大きな変化もなく。食料を渡すだけで終わる。


しかし。六つの村は廃村となる。

黒死病ペストの勢いは北部に近づくに連れて酷くなる。

ズッカ率いた軍も同様に知る事に。


「こ、これは。。」

「・・近づくでない。感染るぞ」


――溜池一帯に死体の山が。

処理に困った為か、水を求めに来たのだろうか。

水死体は体が膨れ上がりブシューっと()()()()()()


 その光景はもはや地獄以外何でもない。

カラスが餌場と言わんばかりに突っつく。

破れる。

異臭を放つ。

腐った池からは小動物の死骸も溢れる。


「――我が魔剣アンシャルの導き金色の糸よ。哀れなる死者を天に戻し給へ」


 溜池全体に糸が囲い。

カラスやネズミは引き裂かれ。

死体に眉のように黄色の糸が巻き付く。

ゆっくりと。沼の中に死体は沈み出した。


「我は唯一神に祈りと天使の加護を給わり。悪しき汚れの水を大天使ミカエル様の息吹において。森羅清き自然に戻し給へ!」


大きな魔法陣がくるくると周り。

黒褐色だった池の色が緑色になり。

周りの腐った草も伸び。

周囲の景色は良くある溜池の姿になった。


皆、沼の前にひざまずく。


「天国でゆっくり過ごされし。神は見守っておる。皆、黙祷」


ゆっくりと祈る様に。。

皆しばらく話もなく行軍をする。


再びグラーツに戻る頃は三週間過ぎていた。


丘の上には簡易的なテントが複数あり、街の業者が出店も出していた。感謝の気持ちからか、十字軍はグラーツの民に慕われ。


このシュロスベルクの丘には後に時計台が立つ。

感謝の念を、十字軍の活躍を。

街を一望出来る時計台が作られたという。



□□□


神の声(ヴォクス・ディ)と呼ばれる黒飾箱は。

教皇自ら渡された聖キリストの血が入っているという。聖遺物の一種らしい。

何はともかく連絡が繋がる。二個ずつ各部隊に渡されていた。


一つの箱が開く時。

残りの四つも同じく光開く。五個セット。

六月の最終の星のたどる休日の昼。

アンドレア・ドーリアが周りの状況を把握する為に開いた。


「西十字軍は現在グラーツにて。周辺の村落を主に流行病を治療終えました。被害死亡者騎士34名、白魔術士143名。その他病気脱落者450名程度。街にて治療をしてます」


「東十字軍は旧スロバキア地区の森。川沿いを北上し、10日程でプラハに到着予定です。被害多数。現在総員約5800名です」


「!それ程・・大丈夫か?シューリヘト!」


「あぁすまんな。アルメイダである。ブタペストにて今もなお病と戦っておる。元気なのは1800程か。。しばらく動けんな」


「…なるほど。二部隊に分けたか。ブタペストの被害はそんなに酷いのか?」


粗方(あらかた)止まったと思うが。13万に行きそうだ。まだ死体が5万程燃やせてない」


「おぉ。。なんと。神よ。。」


 確かにグラーツは小規模の都市であり7万程度の街だ。それも全面的に流行前に来れた事で、被害は押さえつつあるが。。じわじわ死人も減る事はない。


 東ルートは最前線と聞いたがこれ程だとは。十字軍も吸血鬼以外で約2000人亡くなっているではないか。1/5が黒死病ペストで失われるとは。。くっ!いや、シューリヘトだからそれで済んだのか。


「教皇様。どうしましょう?当初の予定通りプラハで集合という訳には行かないと思いますが」


「・・アンドレアはどう思うかの?」


「こちらの軍は被害が少なく。また飢饉による影響が強いので。ウィーンはともかく、逆よりの西リンツを攻めるのも手かと。。ただあちら帝国軍の兵力がわからないのもあります」


「ふむ。シューリヘトよ。プラハは任せれそうか?」


「ブタペストと同様の被害でしたら問題なく。住民の話を聞く中、既に旧オーストリア領以外は帝国軍は捨ててます。戦時には至らないかと」


「ふむ。ともかくプラハに着いたら連絡を。西はまずウィーン奪還が終わらないとどちらにも動けまい。カネラは何かあるか?」


「ふ、ふぁい!なにもありませにゅ!「ドカ!」いったぁ!」


「・・申し訳御座いません。”食えるとき食わないと死にきれない”と勝手に食ってました。はぁ」


「ふぉふぉふぉ。元気そうで何よりじゃ。シューリヘト、川の安全が分かったのは吉事。ピレウスにおるダ・カマとヴェネツィアよりオルデラフォ・フェリエロを既にブタペストに送っておいた。食料などはしばらく待たれよ。アルメイダ将軍」


「おお。助かります!確かに食料状況は困っております故。ダ・カマはどんどん使いくだされ!」


「うむ。小国やらからも援助は増えておる。今が厳しいと思うが、皆の働きは世界に届く。神はいつも見ておる」


「「「ハハッ!」」」


「皆が無事に帰る事を祈っておこう。誰も死ぬでないぞ!」

毎日投稿していく予定です。


是非ブックマークいただけると嬉しいです。

下の評価、レビュー、応援コメントなどどれでも嬉しいのです。モチベーション上がります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
面白いと思えばポチッ。とお願いします!
▼ ▽ ▼ ▽ ▼ ▽ ▼ ▽ ▼ 
小説家になろう 勝手にランキング!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ