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非道の街 下(黒死病 - ペスト)

後半です。

どうしても長くなりました。



 よく考えろ。血清もない。

仲間に黒死病(ペスト)を蔓延させない為。

手は打って来たはずだ――



 十字軍に参戦する事になる前より準備をしていた。

白魔術協会に仮面の作成依頼。

革細工商ヘ手袋の依頼、布協会ヘ口当て(マスク)


全てが全てではないが、八割は間に合った。

もちろん事前に流行病の詳細と、医療レベルの確認も。

アンドレア側に説明もしているしズッカもあちらに入るし白魔術士も多い。上手くやるだろう。


あとは、祈りがどの程度効果があるか。。


それを含めて。

街の状態はもう最悪だった。

汚染され尽くされ、ネズミは縦横無尽に。多くの死者が出ており既に間に合わなかったと言っていい状態だ。


 カネラはああ見えても戦時経験はないはず。

地獄のようなこの惨状を受入れて、行動をしないと。

キツい分こちらができるだけ。やるしかない。


――大丈夫だ。火事もない。瓦礫の山すらないではないか。まだ()()()()()()()だ。


「シューリヘト様。貴族街で生存者が居ると。あと教会にも複数名。。そちらは感染が進んでおりまする」


「わかった。教会から回ろう。時間が惜しい」


それから教会周辺を水球で一掃し。

死体は専属部隊にお願いし穴に埋めるよう支持を出す。

少なくない数の住民が教会に集まっていた。軽症も多く、なんとか持ちこたえたのだろう。

直ぐに白魔術士に住民の治療を頼む。


「トランポ。もう少しの間、白魔術の援護を。魔力回復薬は日に二度までだ。中毒に関わる。手が開けば炊き出しを。食材は持って来たもの以外は使うな」


「はい。シューリヘト様。その様に」


「ルシア、キツいがここを任せる。広いし生存者も多い。聖女様、一度貴族街に確認へ参りましょう。日がもう暮れます」


「はい。シューリヘト様も。。魔力は大丈夫ですか?」


「水は出し放題みたいですね。私の神は?」


「ウフフ。羨ましい事。私も古代神に祈ろうかしら?」


「神の子って呼ばれるだけあるわね。。」


 疲れてはいるが、この三人はいつもこんな感じだ。

皆それぞれ神に愛され。。祝福を持つ。


・・だけど普通の女の子。

僕達はお互いに苦労も尊敬もしている。


「さて行きますか。神の子を演じに」

「次は何が出るかお楽しみですねぇ♪」


やれやれ・・筋斗雲でも出すかな。確かあれもまた。。癒やしがあった様な?



□□□


「あれですね。洋灯が灯ってます。。が、、あれは」


「門から攻撃していますね。住民相手に。。」


ん〜どうしたものか。

正しくもあり。正しくも無い。。

こういう時は丸投げをするに限る。

空は夕日が見え、僕達は上空よりペカサスに乗っていた。


「どうしましょうかね?姫様。。」


「ふふふ。。我は古代の神にアテーナーへ祈り給う。光纏いしその白銀の鎧よ。。気高き強し槍を持ち。。穢れの血を清き芽吹き給え。。」


「っ!!」


 光が背中に落ちる。。ああ成功させやがった。三大処女神で一番と言われ。智慧と勇気を持つ娘。守護女神アテネか。。


「さぁ!門に近づきましょう!」


「・・壊さないでくださいね。。ピカピカ眩しいです」


「おお。私の美しさに気が付きましたか?」


バカはほっといて門際につく。


「癒やしの力を。。てぇい!」


足元より光が染み込み。。黒死病(ペスト)苦しむ人が。。治る。。解ってはいるが理不尽過ぎる!


「おお。。」「痛みが。。?」

「女神様じゃ。。空より女神様が。。」

「ああ、、歩けます!」「神の慈悲を。」


「皆!よく聞きなさい!教会で食事を取っています。清潔にし、ネズミに近づかない様に!シューリヘト!」


「はい。水の加護を。『水洗波(じゃばー)』」


「「ぐぇ!」」


水が波の様に皆を飲み込み、一斉に弾く。

そしてすぐに綺麗に。。びしょびしょなのは仕方ない。乾燥機能なんて当てにしちゃダメだ。怒ってはない!


「さぁ教会へ!もう一度いいます。ネズミには近づいちゃダメです!」


「「「は、はっ。聖女様 」」」


「では屋敷に参りますか。孫・・シューリヘト!」


「はい。行きましょう。なんかオリーブが生えて来てますけど。気にせず行きましょう!」


おほほと誤魔化す聖女をほっといて。


気にしたら駄目だ。

神アテネは強い反面「勝手気ままに振る舞っている」と言われる部分もある。まんまそのまま。。はぁ。。

似合いすぎだ・・


僕は門兵に叫ぶ。


「見たであろう!女神の姿、祝福を!当主に会う!」


「ハッ!」




□□□


 屋敷は大きく、鮮やかな陶磁器で飾られた屋根が印象深かった。石段を上がり更に上に上がる。

何重もの内門を通りながら、王族。ここは宮廷だなと感じた。


「王。連れて参りました!」


「うむ通せ。十字軍のものか?ハンガリー王国アンドラ二世である」


「はい。バチカンより神の導き。カネラでございます」

「同じく。プルトゥゲザ王国アルメイダでございます」


「・・儂を罰するか?民を殺した事に」


「失礼。シューリヘトです。お見知りおきを。アンドラ様の行動は正しく。黒死病(ペスト)の被害を抑えた、と思いまする。隔離は必須、このままお続けください」


実際にこの大きな宮廷には多くの貴族、そして避難民もいた。もはや街は救えない。そう判断しての籠城だろう。

 しかし謁見の間は皆疲労の顔をしており、体裁を整えた王もまた。表情はボロボロであった。


「ただ、籠城だけで収まる流行病ではありませぬ。我らは多くの白魔術士を連れています。しばしここを拠点にハンガリーの鎮静を願います」


「ふむ。そなたは神官か。。しかしそうここも持ちまい・・食料。特に井戸が。。既に使えぬのだ。危機を侵して川に行く日々・・」


「我は神の子シューリヘトなり―――」


両手を掲げ水の渦を謁見の間の上空で出す。

大きく揺れ波のようにうねらす。

皆目を見貼って驚いている。


「水の神は私の主神。まずは井戸を綺麗にします」


 四つ。大きな井戸がありネズミも居た。颯爽(さっそう)と始末し祈りで清め井戸は使える様に。連絡が行っていたのか、トランポ達も合流する。

 

 事情が事情なのでまずは門兵と騎士を変え休ませる。白魔術士で避難民の状況を確認し、ルシアと病に臥せっている尖塔へ足を向けた。トランポ率いるレグナム近衛は収納袋もあるので食事を支給。

部屋の場所や消毒はカネラとアルメイダに任した。


「・・これも神の試練なのでしょうか」

「なら神に挑めばいい。。行くぞルシア」

「はい。。クッ!」


 尖塔は中階と下に入口があり。中階より下は皆()()()()()。悪臭と吐き気しか感じない。

中階より上はいくつか広間があり。螺旋階段で上がる。藁を敷き詰めるだけの簡易ベッドべット。白魔術士が必死に看病しているが。半数以上が死んでいた。。ネズミもいる。。

痛みに抗う。。うめき声だけが鳴り響く。。地獄だ。


「一気に行くぞ。ルシア!」


「はい!『ファティマの聖母マリアよ その優しき祈り 汚れの悪を。また汚染されし者を救い給へ!!』」


『我は神に祈りしもの。双頭の蛇よ 我が地より天へ伸び 知恵と癒やしの神アスクレピオスの力を示せ!!』


シューリヘトの右手から双頭の蛇の緑の杖が。

そしてルシアの祝と共に光が落ち魔法陣が上がる。

柔らかな母光と杖より蛇が溢れ一斉に患者に噛み付く。


驚く表情をしているが動けない病人は。逃げれず蛇に噛みつかれる。恐怖の表情から驚きの表情に変わる。


痛みは消え。毒は中和され。

黒死病(ペスト)は消え去った。


「白魔術士よ。黒死病(ペスト)は消えども弱った者は持たぬ。黒くなった部分は動かぬ。切断し、苦しむ様なら・・看取(みと)ってやれ」


「「はっ!神アスクレピオス様!」」


いくら祝福使おうが。

黒死病で黒く変色した手足は戻らない。死んだ者が戻らぬように。

それは世界の秩序を壊す事になる。


「あの・・シューリヘト様ですよね?」


「ん?どうしました?ルシア」


「髪が黒く。。また右腕が。。着いてます?」


はっとして頭を触ると確かに。髪が。一気に伸び黒光って。。右腕が普通に双頭の蛇の杖を。というか。大人になってまし!


「大きくなっちゃった!ルシア、どうしましょう!」

「あは。あはは。。。」


ゆっくりと杖を消す。あ。戻った♪


「ふぅ。喜ばしい様な悲しい様な。。」


「どちらかと言えば今の姿がかわいいので好きです!」


「ありがと。。祝詞によって憑依みたいになるのか。。うーむ。分かんない!」



 ひと通り宮廷内を落ち着かせれば既に夜も更けていた。

簡単な食事、スープ系が弱った身体にいいので”鳥のつみれ汁トメト風味”を出した。大好評で何より。


僕たちも食事を済まし会議が始まる。


ブタペストの街は高い壁の貴族街は守れそう。ただ規模で行っても街全体の1/20。周辺の村々も同様の被害であるが、南西は無事のようだ。

この周辺は森に狼が多く、ネズミなど小動物も森以降拡がらないと。吉報だった。アメディア小国、レグナム神国までは止まりそうだ。


「しかしこれだけの規模。そして既に多く失くなって疲労者も多い。滞在を出す必要がありますな」


「確かに。ふむ2000程。。残らすか」


「生活は落ち着くまでは。。そうでしょう。誰が残りますか?」


「では儂が残ろう。落ち着き次第北上するとしようか」


「アルメイダ将軍。宜しいのですか?」


「うむ。今後救いは少なく。シューリヘトの言うとおり死体の焼却。病気の沈静と手間も力もかかる。水夫達の出番じゃろう。またドナウ川があるので北上はこちらのが早いかもな。フハハハ!」


僕が(あらかじ)め具体的に何をするかを説明したおかげで。皆口数が減っていたが。アルメイダ将軍は全て承知で答えてくれた。

正直()()()()()()()だ。騎士も既に百数十名以上感染している。進むにしろほっとけない数になる。


「アルメイダ将軍。キツい任務、よろしくお願いします。白魔術士も400お願いします。カロミラそなたも残れ」


「!しかしシューリヘト様!」


「教皇へ伝達、神国から応援。できる事は多くあろう。貴女は()()()()いるし」


「・・お気付きでしたか。分かりました。至急食料の援護の要請、周辺村の散策を行います」


「既に進むにしろ引くにしろ危険だ。重々慎重に。アルメイダ将軍宜しくお願いします。兄上の子を絶対に守れ!」


そして翌朝。23名もの者が寝込むことになり。三日間持たずして黒死病(ペスト)により十字軍も死んでいく。騎士団だけでなく、死体を火葬する水夫も。白魔術士も。日々感染は増えていく。



 僕らはブタペストで七日間滞在をした。

 白魔術士の活躍、そしていくら注意をしたとしても。

 適切な処置は数で行わないとどうしても難しい。

 癒やしで病原菌を取り治し。しかし感染るのだ。。

 元気な姿をしていても翌日寝込んでいる人もいた。



旅立つ時に十字軍は400近くの死者を生む。

1000を超す感染者も残す事になる。仕方のない事だ。


ブタペスト市民は12万人死んだ。この一月で。

20万も届かない街が、首都ブタペストが。。


静まり返る。。。ドナウの流れが聞こえる程に――



―――これが黒死病(ペスト)だ。


   無情であり。

   神の審判と呼ばれた・・・・・骨丘が無数に。

   髑髏(しゃれこうべ)が睨んだ気がした。

   僕が。ごめんなさい‥ごめんなさい!クッ…



静かに皆で黙祷をし。聖女が激励をかける。


「十字軍の皆よ!同胞よ!失う者もいよう。病に侵されるものも。だが我々は死者を踏みつけても進むのだ!救いの地へ!『神がそれを望まれる!(デウス・ウルト)』」


「「神がそれを望まれる!(デウス・ウルト)」」


聖女の顔が厳しくなっていた。


カネラにいろいろ面倒を見てくれてた側使えの神官。

ダマススは高熱で肺ペストにかかり亡くなった。

・・高齢者は持たないのだ。血を吐き苦しかっただろうに。。


彼女は泣くこともなく優しく微笑み見送る。

それだけだった。最後ダマススは幸せに微笑んでいた。


十字軍は数を6500程に縮小し。更に北上していく。

アルメイダ将軍は丘に立ち太い両腕を組み見送る。

僕らは旧スロバキア領に向かい馬を進めた。


『ク〜ク〜♪』

「クークー」

『ク〜ク〜♪』

「クークー」


久しぶりにアクと歌いながら馬を進める。

ほんの少し救われた気がした。


  進むしかない。皆は振り向かず前を目指す。


 

 この後残されたハンガリー王国アンドラ二世は神の子シューリヘトに救われた事を感謝し。アンドラーシュ二世と名前を変え母国後の発音も変える。残された国民を守り、戦い続けた。


ブタペストの復興また周辺国にも治療を行い。

多くの王族を失った小国をまとめハンガリー王国を代表する人物となる。


過ぎること数百年。

ブタペストにはそのアンドラーシュ二世の銅像と活躍が歴史に残る事になった。




毎日投稿していく予定です。

本日二部目。よろしくお願いします。


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