聖者の行進
首都アテネ。
そしてリュフォーリルとの再会は。。
翌日。首都アテネに向かう。
馬に乗り込み馬車は食料だけでなるべく自力で歩む。
五月というのにこの国は暑い。いや流れる汗が祖国に着いたと知らせる。
「皆、アテネは挨拶だけで北へ進みます。我々には時間がない!」
「おお!」
道は広く木々は低いアテネの台地。鳥のさえずりが心地よい。そしてオリビの匂いはどこでも感じる。
一万もの大軍は、後ろを見ても最後尾すら見えず続く。
改めて軍の大きさに気を引き締め、アテネに向かい馬を進めた。
「聖女様はシューリヘト様と仲良ろしいぶひ〜」
「あーまあ理由は。。」
カネラが眼が見えない事。そして小さいから馬に二人乗っても大丈夫な事など教えた。ちなみにアクも乗って三人(?)乗り。
「それは。まぁ仲良くいいぶひね。あとアテネに入る前ですが、沙悟浄」
「はっ。シュリ様、仮面をお願いします。無論私も同様アテネでは顔が知れております故。誤解なら良いのですが、足止めの可能性が十分あります」
「うん。いいよ。貴族には知られてそうだし。僕はこっそり様子見の側使えで」
「そうですね。悟空肩をもみ。。「ドカッ」ううっ。。最近私へ対応が酷くないか?」
ちなみに鳩尾にエルボー。
小さいから前に座ってる。
聖女は調子に乗せたらだめだ。
馬だからガタ。ポヨ。ガタ。ポヨと楽しむくらい。
「リュフォーリル様が最近。というか別人と思いください。。何があったのか。無理難題押し付けられる可能性もありますぶひ」
うん。エーリスには”影”の存在を聞いてみた。が検討もつかないと。母上の様子は僕も気になるが。。今は先に進まないと。
ヴェネチア組は既に着いてから五日行進している。単純に航路が近いのと高山越えだから苦労しそうだが。競り合う訳ではないが僕らも進まないと。
懐かしい大門が見えて来た。
ああ。首都アテネ。いろいろな思いが巡る。
□□□
「バチカン聖女。カネラでございまする」
「レグナム神国代理リュフォーリルです。聖女様以後お見知りおきを」
―――おかしい。母上なら。目上の人に必ず祝福をする筈だ。祝福の素振りも見せない・・
「ゆっくりしたいのですが、民は飢饉と伝染病で苦しんでおります。早速北上しようかと」
「あらあら。残念ですわね。知っての通りレグナム神国も内戦明け。民に祝福をして貰えると思っておりましたわ。フフフ」
にこりと笑みを返す。
「それならば神殿長にお願い致したら?あら申しわけございません。既に居ない様ですね」
トランポよりヴァシリオス神殿長は内乱で亡くなったと聞く。うまい事言うが。。怖い。
「・・聖女様と御一行にアテネを通る許可をしましょう。但し一言も話さない事!天使の教えなど話されるのも汚らわしい!」
おいおいおい。。カネラは少し考えて口を開ける。
「宜しいでしょう。ただ私一人は許可頂けますか?行軍の指揮がございますゆえ」
「よろしくってよ。では今より。『聖女カネラ以外の私語を首都アテネにおいて禁ずる!』」
こうして僕らは王宮を去る。
分かっていたが。。母上の容姿以外別人だ。。
周りの側近も皆違う。ロンツォもヴァシリキもいない。。話さず大丈夫か?僕はカネラに魔力で尋ねる。
ニコッと微笑んで皆に声を掛けた。
『今より行軍を進める!皆首都を出るまで言葉は禁ずる!皆着いてこい!返事は要らぬ!』
ゆっくりと聖女は歩き出す。
(シュリ。振り香炉を準備して 沙悟浄に楽器の準備を)
「足を合わせ。音を合わせ。。我は祈ろう」
ゆっくりと振り香炉を大きく振り。
エーリスはバイオリンの様なものを出す。
そうか カネラは カネラ・レ・ミゼラブルは
歌が上手い 合った時から歌っていた
- Ever close your eyes〜♪
Ever stop and listen,
Ever feel alive
And you've nothing missing
You don't need a reason
Let the day go on and on -
僕らも足を合わせゆっくりと。
ダンっ!と曲に合わせる。
エンヤか。よくエーリスと歌っていたな。
− Let the rain fall down
(降る雨を拒まないで)
Everywhere around you
(あなたが何処に居たとしても)
Give into it now
(それに身を委ねるの)
Let the day surround you
(その一日に包まれましょう)
You don't need a reason
(理由などいらないの)
Let the rain go on and on -
(過ぎ往く雨に身を任せましょう)
僕も心で祈りシャボン玉を道に弾ます。
これくらいはいいよね。話してないし。みんなも美しい声に惹き込まれ。所々壊れた首都の民衆も道を明け聞き出す。
既に雑踏の音は止まり カネラの声がアテネに響く
何という
何という愛しい日
素晴らしい
この素晴らしい営み
何という
何という愛しい日
野に生きる子となるに
ゆっくりと繰り返し歌は止まない
だんだんと意味が頭に入ってくる
この歌は 生きる喜びを 死した人への鎮魂歌なんだ
上から羽光を飛ばしながら 心で歌い香炉を揺らす
「これが。。聖女様。。」「十字軍がこれ程の規模とは」「いや。皆一言も話さず。。堂々たる姿」
「十字軍か。。祝福で溢れておる」「これは。。聖者の。。行進だ!」「そうだ!聖者の行進だ!」「生きているから。。乗り越えれる!」「あぁ。神の祝福を」
歌はアテネを出るまで途切れる事なく響いた。
聖女カネラ・レ・ミゼラブルはアテネにその存在と十字軍の名を知らしめる。
□□□
僕らは北上し次なる村を探す。
アテネの頑張りか、カネラは出て寝てしまった。
僕では支えきれないので馬車にそっと休ませた。
丘を上がると騎士20人程の。。神国近衛隊か。
「なんじゃ!儂らは言われの通り話さず、首都を抜けた!邪魔するならたたっ切るぞ!」
「失礼。私はレグナム神国近衛隊。領夫人の不届き申し訳御座いませんでした。我ら20名!聖女率いる部隊と同行したい!」
馬から降り一斉に跪く。
声は女性らしいが、しっかりとした声だ。
「おい!シュリ!そなたの国の者。信用できるか?」
「出来なければ私が斬ります。女騎士、名は?」
「ハッ!我が名はカロミラ・オズベルタス!国を捨てる覚悟!どうぞご同行を」
オズベルタスだと?ゆっくりと馬を寄せ、仮面を脱ぐ。
「ふむ・・私は神の子。シューリヘト・オズベルタス・レグナムである。某方は見た事がないのだが。。親族の家系か?」
「こ、これは!!あ。。あ。。。生きてらしたのですね。。私は、シューリヘト様の兄上。。ラインストーン様と結ばれ。。今や忘れ形見ですが、嬉しく!我が命を捧げます!」
なんとライン兄上の嫁さんか。。と言う事は。
「よし我が隊に付け。悪いなジャコモ。先行を頼む」
「おう。行くぞ!もうすぐ川に出る。そこで休む」
カロミラは僕と並行して様々な王宮内部の情勢を教えてくれた。正直今の母上のやり方は邪魔するものは斬り。遠方にと。なので近衛隊の中隊として出来ることを悩んでいたらしい。
「教皇より十字軍の噂はアテネにも。無駄に動かずよいと司令がありましたが。。もはや神国守るに足らず。私、ライン様を殺したのは。母上君と思ってます」
!!爆弾発言。。だが別邸で侵入の跡もなく。
前後におかしな人物もいない。何より魔剣が盗まれた。と。。。
「まぁそれは今はよしとするぶひ。先ずは西小国の救援だ。辛いものになるぶひ」
「トランポ様。。くっ!エーリスそなた。。」
「仕事での恨みがあればいつでも。私とてシューリヘト様を置いて死ねません故」
「はいはい。仲良くしないなら帰らすよ?」
「・・はい。シューリヘト様をお守りします」
水辺に着いてゆっくり喉を潤す。
まだまだ旅は始まったばかりだ。もうすぐ大理石の山越えなので今のうちにゆっくりと。。ん?
「どうしました?修道士さん?」
遠く、川の対岸をずっと見つめている。
そういえば。。少し光って。。いた様な?
「いえ。あなたが『神の子』なのですね」
キョトンとしてみる。修道院まで噂合ったかな?
「私はルシアです。聖母様に聞きました。末永くよろしくお願いします」
「聖女様でなく僕でいいのですか?ルシア」
「はい。シューリヘト様に付けと予言が。こう見えて癒やしの白魔術は得意なのですよ?うふっ」
それから僕は水辺で黒死病について詳しく話した。
癒やしの魔法を使うにしろ絶対に直接触ってはいけない。血や体液が当たらない様に保護する事。また仮面や短杖を使い清潔に保つ事などを説明する。
ルシアは真剣に聞き、また修道士に共有しますと。また原因などについても説明した。汚い環境、死骸などから発生する悪きもの(ノミ、ダニ)だが分かりやすくする為にそう伝える。
見えないものなどないが、ノミダニはどこで噛まれるかわからない傷。赤い点が付けば注意をと呼びかける。
僕は毎日夜営の都度、各部隊を周り黒死病の注意をする。できる事はやらないと。
「しかしなぁ。噛まれたらどうなるんだ?」
「高熱に襲われ、二日もすれば液胞ができ、血が吹き出し5-7日で死に至ります。皆伝染ると。。大体この人数の3/4は死にます」
黒死病の死亡率は60〜90%だ。
「・・そんな酷いのか」
「アテナイの国は黒死病で滅びたと伝記がありますよ」
「分かった。真剣に聞こう。。」
僕たちはラリサ、テッサロニキで補充しつつ更に北上して行く。
国はアメディア小国に変わり警戒をしていたが、復興が進んで農産物も順調な様だ。不思議にも十字軍に好意的なのは驚いた。
・・しかしアメディアは若い人が居ない。
戦争の影響か。老人と子供。
偶に山賊を撃退しつつ西小国へ向かう。
「この辺りは兵もおらん。が。。既にハンガリー王国では流行病が流行り出したと聞く。。それも雨期に入る頃の話じゃ」
「ありがとう、お婆ちゃん。元気で頑張ってね」
「ああ。主はいい眼をしとる。昔の賢者様のようじゃの」
僕たちは進むしかない。
そして遂に西小国に着いた頃。六月上月だった。
皆少しずつ疲労はあったが。大きな脱落者もいなく順調だった。
「へっくし!」
ダメ聖女雨で風邪引いてたが。。仕方ない事だ。
既に雨期に入っていた。温い温度と湿気がアメディアの印象を深く現していた。低い森の木々。土の泥道を進むのは誰でもきつい。
思ったより予定通りには行かなそうだ。
そして舞台はハンガリー王国へ。
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