四候会議と仮面晩餐会
「ふう。。流石に疲れる」
ジュゼッペ・グリマルディは長椅子に持たれかけ。一息つく。
此度の四候会議は思った以上に濃い内容になった。
貿易の流れ、新植民地の産業と定期航路、また戦乱が落ち着いた復興案件、豊作など嬉しい事もあった。
ジェノヴァ共和国に関せば大きな問題はないが、イタリシ共和国の教皇、健康問題が大きく影響しそうだ。高齢の為寝たきりで、冬まで持たないとの噂。
ジェノヴァが四大貴族で成り立つ様に、イタリシは教皇独自権利で成り立つ。その中々の派閥の争いは避けられない。もちろんジェノヴァ共和国としては中立であるが。。
現教皇が30年に渡り君臨していたのだ、影響は計り知れない。
「今年もいろいろ起こりそうだ。。」
ジュゼッペにとってこの二月は濃い内容と振り返る。まずはシュリンプの登場だ。まさに神の導きとしか思えない。初めは恐怖しかなかった。メデューサの苦悶に満ちた表情を思い出すと今だ吐き気を催す。まさに人の世界ではなかった。
それから探る様、慎重に接してきた。少々の費用や借金などはどうでも良いのだ。お布施と同じ。ただ望む様にやらせて上げる。そうして街を守ろうとした。
だから商会組合に紹介し、商会を立ち上げる事に協力した。昼食会に王妃やグレータを巻き込むのも考えがあった。自分の範疇を越えた時、誰が抑えてくれるだろうか、と。
もちろんその事は誰にも言っていない。だが少なくとも巻き込め関わりを作る。そして三商会、大聖堂と。。気がついた時皆が巻き込まれていた。これで私が死ぬとしても、誰かが着くだろう。不思議な魅力を持つ神の使いだから。
そこまで考え、また何をしてきたのかを考える。
発想という点は類を見ない。料理にしろ、仮面にしろ。グレータの言う様に天才だ。まだまだ今後も大きく世界を変えるだろう。
これはジェノヴァには幸運だ。特に貿易を主とし、発展して来た歴史もそうだと言っている。神の手でどう変わるのかを見てみたい。
――しかしいつかは違う国に行くだろう。それでも良い。止める事自体間違えと。神は救いを求めるものの所に行く。
この国にいる間は見守る。
ジュゼッペ・グリマルディは新たに誓う。
「世の中面白いものだな。神嫌いの私が。神に会う…か」
□□□
四候会議が近づくに連れ街は賑わいだす。もちろん他国が直接会議に参加する事は無い。だが、その後の大晩餐会、王宮での情報交換は小国であれど大切な事。
国の大きさはイタリシの1/8にしか無いが、その経済はイタリシを超えると言われるジェノヴァの恩恵を周辺国は探り入れる。
また、他国の貴族が増えると同様に、庶民も興味を持って集まって相乗効果を呼ぶ。この時期はジェノヴァに取って一番賑わいのある時だ。
「ふむ。今年も賑わっておるな。ジェノヴァは毎回特産が増え楽しみである。そなたもゆっくり過ごすが良い」
「はっ。スヴャトポルク公様」
「しかし暖かいのはいい。エーリア、祖国が懐かしいか?」
「いえ。冷えるほうが性に合います故。発展しておりますね。些か楽しみでございます」
ふむふむと高価な馬車が雑踏を通る。一見高位な貴族にしか見えない。東欧の最大国。キエフ大公国よりお忍びで来るなど誰が想像できただろうか。宮殿を後ろに馬車は宿に向かう。
すれ違う様に馬車が止まり男女が降りて行く。
「ほう。海鮮が賑わっておるのぅ。天中海の魚は臭みが少ないと聞くが。リアも懐かしかろうて」
「そうですね。場所は違えど漁港の匂いは同じ。エストリス、そちらは汚れますよ」
手を差し出し繋いでエスコートを。奥方の頬が赤く染まる。
(ほ、ほう。場所が変われば態度も・・とミニョンが言っておったが。。確かに。。悪うないかも♪)
新婚旅行だろうか。初々しく手を取り出店歩く姿もまたこの街では良く見かける。宝石商も多く喜ばれるのだ。その横を子供が。
「何往復目だろ。。うぅ。。みんなに収集袋ほしー!」
横を通り抜ける片手の子供が、ぶつぶつ言いながらドゥカーレ宮に向かう。式典の準備か多くの人が集まって。宮殿の前は既に祭りの様に露店が並べ立ちいい観光名所となっていた。
神のお導きか、この三者三様。同じ場所にいた。
運命の糸を操る神モイラ。クロートーが紡ぐのはもう少し後。
□□□
その日、ドゥカーレ宮は伍の刻前というのに大勢が訪れた。
近衛騎士がキレイに整理をし、宮殿内に案内を行う。警備も王宮以上で目立った混乱もなく記帳を進めている。
既に青空だが、ライトアップされ遠目にもその柱の美しさが際立つ。
「ほう。入ると見事な建物ではないか」
「はっ。あちらにて”仮面”を購入しないと入れない用です」
「ふむふむ。余興の一環か。良い、好きに選べエーリア」
一つ参加料金と合わせ30金貨か。まぁ土産にもなろう。・・中々凝っておるな。おお着けると不思議だな。
視界は開けているが口元は空いているので食事に不備はない。
「似合うか?エーリア」
「もちろんです。それにしても皆着けるのですね。これでは見失う可能も。。」
「まぁそれも一興。。なるほど、四候の入れ知恵か。。分からんようにするのが目的だな?」
四候も年を取り、そろそろ世代交代をする。
若きものの遊びと思えばよい。
特に合わねばならん者はおらんし、知られないのはこちらも同じ。好都合でないか。
大晩餐場に通される。先程の部屋に比べ少し暗いな。
ふむワインか、悪くない。料理はもう少し後か。皆戸惑っておるの。
ザワザワが少しずつ大きく変わる。日も落ちて来た。
テーブルに前菜類が並び、側使えは素顔のままか。面白い。
「エーリアよ。適当に話しをしつつ面白いものを呼べ」
「御意」
カーン!カーン!カーン!と陸の鐘が鳴り響く。
奥より四候らしき人物が登場する。
「各国より多くの賓客。喜ばしく思う」
貴族連中が足を躓く。この声ジャコモ王か。若いの。
「四候より面白き提案があり”仮面”を用意しつけて貰っておる。そのままつけてお聞きを」
「此度は我侭をすみません。仮面を是非とも楽しんでいたらければ。では説明を」
「はい。貴族、賓客の皆様。この場ではお立場をお捨てください」
ザワザワと周りが騒ぎ出す。
「この場だけでもよろしいのすが、無理でしたら自ら名乗り出ても問題ありません。知られるだけですから。字名、略語、名も好きに」
「この場は社交の場です。盛り上げる為守って頂きたい事は三つ。一つ、名乗られたら名を返す。子供でもできますね。二つ目、話しの内容は好きな事を聞き、正しく答える。三つ。仮面着用の事。絶対です。これはルールです」
「つまりこの四候含め王族もおります。聞きたい事があれば何なりと。逆に聞かれた事は正しく。言い回しに気を付ければ。問題ないでしょう?」
「うむ。別に聞かれて困る事はない。逆に他国の重臣に聞きたいのぅ。皆も楽しもうぞ!」
『オオーーーーー』
「では祝杯の挨拶を。この仮面を考えたシュリンプ」
「はっ」
小さな仮面を着けた子供が前に立つ。。杯を持ち。
トーン・トーン・トーン・トーン
なんだと?空を。。飛ぶ?いや、跳ねるようだ。
トーン・トーン・トーン。シャララ…
中央シャンデリアに乗り。杯を掲げた。
「豊穣と酩酊の神 バッコスに祝杯を」
「「祝杯を!」」
天井の洋灯よりチラチラと金の祝福が
皆の仮面が色鮮やかに浮かぶ
洋灯は輝きを取り戻し
天井に描かれた神の祝福の絵画が美しく
ここに仮面晩餐会は開かれた
「おお。綺麗な。。」
「・・祝福の一種でしょうか」
「何か仕掛けかしら?」
「料理も出てきたし。。行くか」
「ふむ面白い。四候を探すぞ!」
大晩餐場は再び盛り上がり次々と会談が始まる。
ふと見上げると、そこに小さな子供はいなかった。
不思議なものを見たのぅ。。
◇◇◇
人数は厳選されている為か、通路には余裕があった。壁際には椅子や長椅子、会談ができる様対になっている。
ほほう。珍しい料理であるな。前菜にもチーズが。側使えに支持をし取り繕う。ふむふむ。さっぱりとしたチーズだな?これは牛に近いが。。はて。トメトと良く合う。
「シュリンプです。お見知りおきを」
「ああ。スヴャトポルクだ。おお先程の子供か?空を掛けておった。。」
「あはは。楽しんで頂けました?空は秘密ですが、祝福は洋灯に魔石を忍ばしているのです」
見上げると、確かに石が見える。魔力と組み合わせか。揃いも揃う同色な石、それも大きいのぅ。
「この年になればそう驚かん。久しぶりに良いものを見たわぃ。してそなたは何が聞きたい?」
「この料理も監修しておりまして。どうでしょうか?何品か感想を頂ければ。もしよろしければ特産の食材など。。てへ」
「面白い。儂とて食うしか楽しみがない。良いぞ」
側使えに料理が運ばれ口に入れ感想を言う。
「ふむ。これは良い」
「このマルゲリータは。美味いの!」
「もう少し塩か。胡椒を利かしてみよ」
「・・なんじゃこの肉は。年寄りには少々食べにくいかの」
「魚介は良い。ふむ酒に合わせばいいがスープなども着ければどうか?今度ペリメニでも入れたいのう」
「スヴャトポルク様、お待たせ。。こちらの子供は?」
「おおエーリア。空掛ける子供だ」
「シュリンプと申します。エーリア様。お見知りおきを」
丁寧に礼儀をしてるが。右腕がない戦争孤児か。。青い髪は嫌だな、神の子を思い出す。まぁ生きて入ればもう大きいはず。
「かわいいシュリンプ様ですね。主、少し時間よろしいですか?スヴャトポルク様、あちらプルトゥゲザ王族。ご挨拶をしたいと」
「ふむ。国が遠い分いい話しが聞けそうだ。シュリンプよ、ありがとうな。名産はどうしようかのぅ。。」
「いえいえ。社交が大事です。そこらの警備騎士でもメモして渡しといてください〜エーリアさんも食べてね〜」
パタパタと走って行く。小さいな本当に。
プルトゥゲザ王族の二人がゆっくりと近づく。
「初めまして。プルトゥゲザ王国の第二王子、リアコタス・デ・ボルゴーニャです。お見知りおきを」
「妻、エストリスですわ。もう正体がバレるとわ。。」
「ふむ。エーリアが気づいての。わしはキエフ大公国。スヴャトポルクじゃ。礼は及ばん。そういう会だしのぅ。面白い奴に合ったし」
「ほぅ驚きました。どなたとお話を?」
「空掛ける子供と料理についての。ほらあそこに。。」
「はわわっ!」
「きゃーかわいい子供ね?」
「仮面も似合うわ。息子に持って帰ろうかしら?」
「商会は何を売ってるの?ぼく」
「マ、マルコーヘルプミー!」
暇をもてなす女子貴族の群れが出来てた。
社交は基本男の場だし仕方なかろう・・どんどん増える。
「懐かしいな。弟が小さい頃思い出しました。では有意義な話し合いを行いましょう、スヴャトポルク公」
晩餐会は無事に終わり。
ジュゼッペ達は諸外国の知らない情報が思う以上に集まったと喜んでいた。
「私プロポーズを三回も受けましたのよ♪おほほ♪」
あれだけ派手な格好すれば皆分かるだろうに。
グレータ嬢は相変わらずだ。
まぁ大きな問題もなく、無事に終えれた。
・・僕はもみくちゃにされて、酔っ払いにキスされましたが何か?解せん。
そして、仮面晩餐会の話しは多く広まり、他国でも似た様な催しが行われた。ヴェネチア資本国では貴族の婚姻パーティーと、思わぬ形で定着されていく。
ジェノヴァではこの後に通年。
四候会議の後は仮面が使われ。
学生達のコンクールも派手に行われ、名物となっていった。
毎日投稿していく予定です。
本日2話目!
是非ブックマークいただけると嬉しいです。
下の評価、レビュー、応援コメントなど、どれでも嬉しいのです。モチベーションが上がります!




