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終焉の世界にて  作者: なおちゃん
終焉の世界にて

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4.亡霊

猛吹雪の向こうに、周囲の廃墟とは明らかに一線を画す巨大な影が姿を現した。




かつて軍の通信施設だったその場所は、今やコンクリートの防壁と有刺鉄線、そして幾重にも張り巡らされた監視カメラによって固められた「要塞」と化していた。



「通信施設というより、小規模な私設軍隊の基地だな」



俺は身を隠した崩壊ビルの2階から、軍用双眼鏡で施設を観察した。


アークを襲った山賊(バンディット)どもとは格が違う。

壁の上に立つガードマンたちは、統一された漆黒の防護服に身を包み、最新鋭のアサルトライフルを隙なく構えている。

胸のエンブレムには、記憶の断片に残っている「翼を模した剣」のマークが刻まれていた。



そのマークを見た瞬間、脳の奥底で開頭手術の傷跡がズキリと激しく痛んだ。

……知っている。



俺はこの連中を知っている。


「思い出すのは後だ。まずは中に入り込む」




俺は双眼鏡を仕舞うと、背中のアサルトライフルを引き寄せた。




正面から突っ込むのがかつての俺のスタイルだと感じていたがーーーおそらくーーー久しぶりに顔を合わせる連中だ。

ここはひとつお上品にいくとしよう。




吹雪が一段と強まり、視界が完全に遮断されるタイミングを待った。


今だ。



俺はビルの影から音もなく飛び出し、雪原を疾走した。


監視カメラの死角を縫い、防壁のわずかな隙間へと滑り込む。



見張りの兵士が、不審な気配に気づいて振り返った。



「誰だ――」


その言葉が紡がれるより早く、俺の左手が奴の喉元を掴み、声を押し潰していた。



同時に右手に握ったコンバットナイフを、防護服の隙間である首筋へと正確に突き立てる。


「静かに寝てろ」




崩れ落ちる兵士の体を支え、物陰に隠す。



奴の懐から通信施設へのアクセスキーカードを奪い取り、裏口の電子ロックに滑り込ませた。




ピピッという軽い電子音とともに、重厚な鉄扉が解錠される。




施設内部は、地上の寒さが嘘のように暖房が効いていた。

しかし、漂う空気は冷酷そのものだ。



電子機器の作動音だけが響く通路を、俺は影のように進んだ。


何人かのガードマンを音もなく無力化し、ついに目的の「メインサーバー室」へとたどり着く。




部屋の中央にあるコンソールに、アークでLukeから渡された解析用デバイスを接続した。


画面にデータが高速で流れ始め、ノイズ混じりの音声信号がクリアに再生される。




『……プロジェクト・アーク、フェイズ3へ移行。

被験者コード「Jason」の凍結を解除し、地上へ放出。

彼の戦闘データの収集を開始する……』




スピーカーから流れてきたのは、冷徹な男の声。


そして、画面に表示された俺のカルテには、俺がこの施設で「造られた」最高傑作の暗殺者であることが記されていた。




「なるほど。俺はただのサバイバーじゃなく、ここの飼い犬だったわけか」


俺は苦笑し、ポケットから最後のタバコを取り出して火をつけた。



紫煙が部屋の火災報知器に触れないよう、静かに吐き出す。




その時、背後の自動ドアが開き、部屋の明かりが一斉に赤く染まった。



『侵入者検知。全ユニット、サーバー室へ集結せよ』




大音量の警告音が響く中、通路から無数の足音がこちらに向かってくるのが聞こえる。


俺はデバイスを引き抜き、ホルスターの拳銃とアサルトライフルのボルトを同時に引いた。




「飼い犬だと思ったか? 勘違いするな。俺は鎖を引きちぎる狂犬だ」


俺はサーバーの影に身を潜め、押し寄せるかつての「同僚」たちを迎え撃つためにトリガーに指をかけた。






自分の過去は分かった。




なら、次はここのシステムをすべて叩き潰す番だ。

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