【Day 5】午後4:00:ギークの仕掛けた罠(トラップ)
「おい、返事がねえな! 突入するぞ――」
スキンヘッドの男がドアに足をかけた瞬間
アレンの家全体から、凄まじい大音量のパトカーのサイレン音と
超高音のハウリングノイズが響き渡った。
Day 1にアレンが仕込んでおいた
改造スピーカーと隣のアパートの火災報知器の連動システムだ。
「な、なんだこの音は!? 耳が引きちぎれるッ!」
略奪者たちが耳を押さえてうずくまる。
だが、この罠の本当の恐怖は音そのものではなかった。
街中に響き渡る爆音。
それは、マルドロー中の「動く死体」を呼び寄せる最悪のディナーベルだ。
通りの角から、路地裏から、数え切れないほどのゾンビの群れが
津波のようにガレージの前に殺到した。
その数は優に数百を超えている。
「ウ、ウソだろ!? ゾンビどもが集まってきやがった!」
「おい、撃て! 撃ちまくれ!」
略奪者たちはパニックに陥り
狂ったように猟銃や拳銃を乱射し始めた。
しかし、死体の波は怯むことなく彼らに群がり
一人、また一人と地面に引きずり落としていく。
「今だ、サラ! ガレージの裏口から脱出する!」
アレンはノートPCをバックパックに叩き込み、バールを握りしめて叫んだ。
「了解! 遅れるんじゃないよ、アレン!」
二人は激しい銃声と悲鳴が響き渡る正面を避け
ゾンビの薄いガレージの裏手へと飛び出した。
迫り来る数体の死体を、サラの正確無比なパイプレンチが叩き割り
アレンもまた、襲いかかる腕をバールで必死に弾き飛ばした。
かつては運動不足だったオタクの身体が
サラを守るという意志だけで、驚くほど動いていた。
二人はそのまま、サラの自動車修理工場へと全力で走り抜けた。




