【Day 5】午前11:00:無法地帯(アナーキー)と作戦会議
5日目の朝、マルドローの街からは人間の社会性という名の
メッキが完全に剥がれ落ちていた。
アレンの拠点の周りに残されたわずかな防犯カメラが捉えていたのは
生き残った人間たちがゾンビよりも凶暴な獣――
「略奪者」へと変貌し
血眼になって生存者を狩る姿だった。
銃声は途切れることなく響き
いくつかの建物からは火の手が上がっている。
「生き残っている連中。
俺の通信が聞こえるか?」
ガレージの机の上で、アレンが昨日修理した
広帯域無線トランシーバーがパチパチとノイズを立てた。
街の北側に隠れていた生存者のグループからの通信だ。
『軍の封鎖線に近づいた奴らが
容赦なく機関銃でハジかれたって話だ……!
完全に閉じ込められた! マルドローはもうおしまいだ!』
絶望的な悲鳴の直後、激しい銃声と肉を裂くような音が
スピーカー越しに響き、通信は不気味なホワイトノイズへと変わった。
アレンはトリプルモニターの前に立ち
前髪をかき上げて画面に表示された地図のデータを睨みつけた。
以前の彼なら「他人の自業自得だ」と切り捨てていただろう。
しかし今の彼の目は、隣でパイプレンチを厳重に点検している
金髪ポニーテールの相棒、サラを捉えていた。
「サラ。街の境界線はすべて軍に物理遮断されている。
脱出するルートはただ一つ……。
僕の夢に出てくる、あの深い森の奥の『軍事基地』だけだ。
あそこの地下制御室へ潜入し、軍のメインフレームを
直接ハッキングして封鎖信号を解除する。
それしか僕たちが生き残る論理はない」
サラはアレンの真剣な裸眼の目を見つめ
レザージャケットのジッパーをきゅっと上げた。
「いいよ。あんたの頭脳が弾き出した答えなら
アタシはどこへだってついていく。
ただの引きこもりオタクが、ずいぶん頼もしい顔付きになったじゃない」
「……君のおかげだ。僕一人の計算だけじゃ、昨日で詰んでいた」
アレンは小さく、しかしはっきりと改心の兆しを含んだ微笑みを返した。




