【Day 4】午後4:00:初めての共同戦線(マルチプレイ)
夕方、二人は息を潜めてボブのガソリンスタンドの裏手に潜伏していた。
辺りには、かつての住民だった動く死体が徘徊している。その中には、変わり果てた姿のボブも混ざっていた。アレンはそれを見て一瞬だけ胸が痛んだが、すぐに感情を殺した。今の彼には、背中を守ってくれる相棒がいる。
「サラ、行くよ。僕のカウントで突入だ。……3、2、1、起動」
アレンがノートPCを抱えてスタンドの外付け制御盤へ走り寄る。サラがその斜め前に立ち、パイプレンチを構えて周囲を警戒した。
アレンは制御盤のカバーをバールでこじ開け、ハッキング用のケーブルを接続した。キーボードを叩く指が焦りでわずかに震える。画面にはエラーコードが並ぶ。
「くそ、バックアップ電源が死んでる……。暗号化をバイパス(迂回)しなきゃならない……!」
「アレン、後ろから2体来るよ! ハッキングに集中しな!」
サラの鋭い声と共に、肉を裂くような鈍い音が響いた。サラは襲いかかるゾンビの頭部を、正確にレンチで叩き割っていた。ライダースジャケットに黒い血が飛び散る。彼女の戦う姿は、アレンの目には信じられないほど勇敢に映った。
「あと10秒……いや、5秒……!」
アレンの額から大粒の汗が流れ、ノートPCのエンターキーを叩いた。
『――CLICK(ロック解除)』
スタンドの地下ハッチが重い音を立てて開いた。サラは手際よく手動ポンプを通気管に突っ込み、凄まじい腕力でレバーを回し始めた。持参したポリタンクに、ドクドクとガソリンが溜まっていく。
「やったね、アレン! 大成功だ!」
サラがガソリンの詰まった重いタンクを持ち上げ、アレンに向かって笑いかけた。アレンは初めて、危険な「現実のフィールドワーク」で他者と目的を達成した達成感に、身体の奥が熱くなるのを感じていた。
「……僕の理論と、君の筋力があれば、生存確率は跳ね上がる。これは……悪くないコンビだ」
アレンの口から、初めてサラを「相棒」と認める言葉が自然と零れ落ちた。




