【Day 4】午後1:30:ガソリンを求める二人の頭脳(ロジック)
電力が落ちたことで、社会の崩壊は最終段階へ突入していた。
ネットは完全に遮断され、ラジオからは不気味なホワイトノイズが流れるのみ。外からは略奪者の怒号と、昨日より明らかに増えた死体の呻き声が重低音のように響いている。
「アレン。アタシの修理工場にある大型のバン、あれが動けばこの街の軍の封鎖線を突破できるかもしれない。でも、燃料が空っぽなんだ」
サラが真剣な表情で、磨き上げたパイプレンチを肩に担ぎながら言った。
街のガソリンスタンドは、どこも電力が死んでいるため給油ポンプが動かない。さらに、周囲には数日前に感染した元住民のゾンビたちが群がっている。普通なら自殺行為だった。しかし、アレンのギークな頭脳が、サラの言葉に高速で反応した。
「……いや、方法はある。ボブのガソリンスタンドの地下貯留槽には、まだ数百ガロンの燃料が眠っているはずだ。給油ポンプが動かないなら、手動のロータリーポンプを直接タンクの通気管に接続して、物理的に吸い上げればいい」
アレンは机に広げたガソリンスタンドの構造図面を指さした。
「ただし、タンクのハッチを開けるには電子ロックの解除が必要だ。僕がノートPCでスタンドの制御盤に直接ハッキングを仕掛ける。その間、君が僕の『肉体的な盾』になってくれるなら、この作戦は成立する」
サラはアレンの顔を見つめ、不敵に笑って彼の背中をバンと叩いた。
「交渉成立。あんたのそのデカい頭脳、頼りにしてるよ。アタシがあんたに指一本触れさせやしないさ」




