↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SEED  作者: 泣きピエロToY
第二章「flower」
PR
9/84

第9話 早く声聴きたいね


二組目の演奏が始まる。


ドラムのカウントと同時に、重い低音が床を震わせた。

アンプから吐き出される音が空気を押し、胸の奥まで響いてくる。


照明が一気に切り替わり、赤と青の光がステージを交互に染める。

さっきまで散っていた客が、じわじわと前へ詰めていく。


客席の空気が少し変わる。


前の方へ人が集まり、スマホをしまう客も増えた。

スピーカーの振動で、足元の床が細かく揺れている。


颯太は腕を組んだまま、じっとステージを見つめている。


落ち着かない。


音に身を任せるでもなく、頭の中で別の音を鳴らしているようだった。

鳴っているギターのフレーズを、無意識に組み替えている。


奏

「颯太」


返事はない。


歪んだギターの音が会話をかき消す。


奏

「今日はメンバー探しな」


颯太が我に返る。


奏

「気持ちは分かるけど」


颯太

「エフェクター使いすぎ」


ステージから視線を外さない。


照明がフラッシュのように瞬き、ギタリストの手元が一瞬だけ浮かび上がる。


颯太

「早弾きできないなら、ギターソロ変えれば良いのに」


奏

「同意」


小さく笑う。


(こいつ、自分のレベルの高さ分かってねぇな)


奏はボーカルへ目を向けた。


スポットライトを浴びたボーカルが、観客に向かって大きく手を広げる。

歓声はまばらだが、前列の数人だけが熱を帯びている。


奏

「ボーカルはどうよ?」


颯太は一瞬だけボーカルを見る。


颯太

「気持ち悪い」


奏

「早いな」


颯太

「自分に酔いすぎ」


一拍置く。


ドラムのフィルが空気を切り裂く。


颯太

「顔が良いだけ」


さらにステージを見つめたまま言う。


颯太

「うちにはいらない」


奏

「珍しく毒舌だな」


二組目が終わる。


最後のコードが鳴り終わり、余韻がスピーカーからじわりと消えていく。

客席からは控えめな拍手。


前列の数人だけが大きく声を上げていた。

それ以外の客は、ドリンクを飲んだり、隣と話したりしている。


ボーカルが笑顔で手を振り、ステージを降りる。

照明が落ち、転換のための白い明かりに変わる。


奏

「ボーカルは大学生らしい」


ドリンクを一口飲む。

氷がグラスの中で小さく鳴る。


奏

「音楽がやりたいんじゃなくて、モテたいだけなんだろうな」


颯太

「バンドってモテるの?」


本気で不思議そうな顔をする。


颯太

「彼女とか作ってる暇なくない?」


奏は思わず吹き出した。


奏

「それは俺らが特殊なんだよ」


フライヤーを開く。


紙の擦れる音が、転換中のざわめきに紛れる。


奏

「次は女性バンドだな」


出演順を指でなぞる。


ステージでは機材の入れ替えが進み、マイクスタンドが新しく立てられる。


奏

「このバンド、全然情報がないんだよ」


奏

「一応コピーバンドみたい。ネットの人気曲中心にやってるらしい」


少し間を置く。


照明が再び落ち、次のバンドの準備が整う気配がする。


奏

「全員、女」


颯太はステージへ目を向けた。


暗闇の中、シルエットだけが浮かび上がる。


颯太

「早く声聴きたいね」


奏も小さく頷く。


低く唸るアンプのノイズが、次の始まりを予感させる。


奏

「おぅ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。