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SEED  作者: 泣きピエロToY
第十一章「ともに」
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第82話 琴

芽衣子はミホへ優しく笑いかけた。


「詳しい話はお酒がない時にしましょう。今日は達磨の暴露大会でしょ。」


その一言で、少し真面目になっていた空気が一気にほぐれた。


ミホも笑顔を見せる。


「はい。後で連絡先交換してください。」


「うん、わかった。」


芽衣子は軽く頷き、テーブルを見回した。


「じゃあ、達磨の何が聞きたい?」


待ってましたと言わんばかりに姫希が身を乗り出す。


「昔の面白エピソードありますか?」


達磨は即答した。


「ねぇよ。」


芽衣子はクスッと笑う。


「あるわよ。とっておきが。」


その瞬間、達磨の顔色が変わった。


「おいっ、やめろ。」


姫希は思わずテーブルを叩く。


「きたきた!」


「暴露大会だー!」


奏もジョッキを片手に笑う。


「これは気になるな。」


大地は楽しそうに達磨を見る。


「諦めろ。」


ミホまでクスクス笑っていた。


味方は一人もいない。


達磨は大きくため息をついた。


「達ちゃんが老舗旅館の四代目になる予定だった話、さっきしてたわよね。」


芽衣子は少し懐かしそうに目を細めた。


「昔の達ちゃんはほんとお坊ちゃんだったの。」


「可愛かったわ。」


達磨は額を押さえる。


「もうやめろ。」


「大地君、達ちゃん押さえててね。」


「了解。」


大地は笑いながら達磨の肩へ腕を回す。


「逃亡防止。」


「離せ!」


達磨が肩を揺らすたび、テーブルには笑い声が広がる。


芽衣子はそんな様子を楽しみながら話を続けた。


「お母様の言いつけで幼少期からお琴やってたらしいのね。」


「初めてうちに来た時、


『この家はどこで琴やるんですか?』


って聞いてきたの。」


一瞬だけ静まり返る。


次の瞬間。


「ぶはっ!」


姫希が吹き出した。


奏も肩を震わせて笑う。


達磨は顔を覆った。


「普通の家に琴なんかないっつうの。」


芽衣子も思い出し笑いをしながら続ける。


「琴がないのがすごくビックリだったみたいで。」


「少しからかったら、『じゃあ何ならあるの?』


って聞いてきて。」


姫希は笑いすぎて涙を拭く。


「ダメ……想像できる。」


芽衣子は肩をすくめる。


「『ベースならあるよ。』


って言ったら、それからどハマりしてんのよ。」


奏は感心したように頷いた。


「達磨の音楽のルーツは琴か。面白いな。」


姫希は目を輝かせる。


「琴の実物見た事ないんですけどー。」


芽衣子は優しく笑った。


「そのくらい純粋無垢な時代があったのよ。」


達磨はジョッキを持ち上げ、照れ隠しのように一口飲む。


「芽衣子の秘密も暴露してやるよ。」


芽衣子は少しも動じない。


「あら?」


「女の秘密を喋るなんて男の格が下がるわよ。」


達磨は言葉に詰まる。


「……。」


何も言い返せない達磨を見て、テーブルにはまた笑いが広がった。


盛り上がるテーブルを尻目に、程よく酒の回った颯太はいつの間にか静かな寝息を立てていた。


姫希はそんな颯太を見つめ、小さく笑う。


「久しぶりのライブ、楽しかったね。」


そっと肩へ手を添える。


「お疲れ様。」


「おやすみ。」


第十一章「ともに」 完

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