第81話 達ちゃんお疲れ
達磨はジョッキを置く。
「俺の話はおしまい。」
「次は大地の暴露しようぜ。」
姫希はすぐに首を振る。
「大地さんは生き倒れて拾われた話聞いたから別に。」
「芽衣子さんの話、もっと聞きたい。」
ミホも頷いた。
「今日夜勤なんですよね?」
「何の仕事されてるんですか?」
「看護師だ。」
達磨は短く答えた。
「いつも忙しそうだからライブには呼ばないようにしてる。」
その時だった。
後ろから肩を叩かれる。
「なっ。」
達磨が振り返る。
「達ちゃんお疲れ。夜勤変わってもらえたからライブ見に来ちゃった。」
「ずっと後ろにいたのに気づいて貰えなくて出るタイミング探してたよ。」
女性は軽く頭を下げた。
「みなさん初めまして。芽衣子です。」
「姫希ちゃんだよね。」
「雑誌見たよ。」
「断然、実物の方がかわいいね。」
「うわぁ、ありがとうございます。」
ミホは少し遠慮がちに口を開いた。
「今も一緒に住んでいるんですか?」
「住んでるよ。私が借りた部屋に。」
「ヒモだ。」
姫希が横目で達磨を見る。
「金は入れてる。」
達磨はすぐに返した。
「ミホは今日長野からライブ見に来てるんです。」
「ここだけの話ですが、奏の彼女です。」
「オッケー、ここだけの話ね。」
ミホは真剣な顔で芽衣子を見る。
「一緒に住むってどんな感じですか?」
「いい事ばっかはじゃないですよね?」
芽衣子は優しく微笑んだ。
「なるほどね。」
「こっちに引っ越してくるか迷ってるんだ?」
ミホ
「はい。」
「私、何の役にも立てないと思うんです。」
「だから、こっちに出てくるなら何か理由が必要なんです。」
「ちゃんと自立しないとって。」
奏がすぐに口を開く。
「そんなの後で良いんじゃね。」
ミホは首を横へ振った。
「ダメだよ。大事なことは先にやらなきゃ。」
「もし別れたら、私は一人で長野に帰らなきゃなんだよ。」
「別れないよ。」
「絶対。」
バンっ。
ミホはテーブルに激しく手をついた。
「絶対はないんだよ。」
ミホは奏から目を逸らさずに続ける。
「だから何があっても自分で立って歩けるようにならなきゃなんだよ。」
店内を流れるエアコンの風が、テーブルの紙ナプキンを小さく揺らした。
芽衣子はミホを見つめたまま、小さく頷く。
「うーん。気持ちわかるよ。」
「私いないと達ちゃん野宿だしね。」
少しだけ笑う。
「今は、いっぱい悩みなさい。」
ミホはゆっくり息を吐いた。
「奏君の左手の件もあるし、できれば早く決めたいです。」
芽衣子は優しく微笑む。
「焦っちゃだめ。」
「悩める時は真剣に悩みなさいね。」
「はい」
芽衣子は少し考えてから口を開く。
「仕事なら何か紹介出来るかも。」




