第79話 みんな知らないんだ
ライブを終えたJJは、そのまま打ち上げ会場へ集まっていた。
テーブルいっぱいに料理と飲み物が並び、ライブを終えたばかりの熱気がまだ誰の身体にも残っている。
姫希はジョッキを高く掲げた。
「打ち上げだー!」
「かんぱーい!」
「「「かんぱーい!」」」
グラスがぶつかり合い、乾いた音が店内へ響く。
ライブの緊張から解放された五人の表情は、自然と笑顔になっていた。
達磨は一口ビールを流し込み、大きく息を吐いた。
「いやー、久しぶりのライブだけど盛り上がったなー。」
その言葉に全員が頷く。
大地もグラスを置きながら笑った。
「おぉ、まだ体の芯が振動してる感じがするよ。」
ステージを降りたはずなのに、耳の奥にはまだ歓声が残っている。
颯太も笑顔を浮かべた。
「奏のオープニングMCかっこよかったね。」
奏は照れくさそうに頭をかく。
姫希は何かを思い出したように携帯電話を取り出した。
「今日、ミホ見にきてる筈。」
「連絡あったから。」
「打ち上げに呼ぶねー。」
そう言いながらメッセージを送り始める。
颯太はその様子を見て苦笑した。
「姫ちゃん、よってる?」
姫希は顔を上げると、呆れたように笑った。
「お酒飲んでないよ。まだ十九歳。」
達磨はニヤリと笑う。
「一杯くらい飲めよー。」
姫希は真顔になり、首を横へ振った。
「ダメだよ。」
「どこで誰が見てるかわからない。」
「その一杯でバンド解散とかだってあり得るんだから。」
少し笑って続ける。
「誕生日来るまで我慢する。」
ふと何かを想像したように笑みを浮かべた。
「誕生日に颯太と飲んで、酔っ払ったらどうなるのかまず知ってからかな。」
「その時は頼むね、颯太。」
颯太は迷わず頷く。
「りょーかい。」
そのやり取りを見ていた達磨が吹き出した。
「酔った勢いで颯太を押し倒すなよ。」
姫希は即座に達磨を睨んだ。
「うるさい。」
「デリカシーってもんが無いのか?」
「だから彼女いないんだよ。」
その瞬間、大地が思わず笑いを漏らした。
「そっか。」
「みんな知らないんだ。」
達磨の笑顔が引きつる。
「おい、大地。」
しかし大地は止まらない。
「達磨、彼女いるぞ。」
店の空気が一瞬止まった。
「「「えっ!!!」」」
姫希、颯太、奏の声が綺麗に重なる。
姫希は達磨を指差した。
「マジで?」
達磨は額に手を当て、大きくため息をつく。
「大地、余計なことを。」
大地は悪びれる様子もなくジョッキを持ち上げた。
「俺、酔うと口軽くなるから。」
その一言で店内は大きな笑いに包まれた。




