第7話 勧誘だ!
高校二年の昼休み。
昼休みのチャイムが鳴ると同時に、教室の後ろへ人が集まり始める。
窓際に腰掛けた奏と、その隣に立つ颯太。
二人がギターを手にすると、教室は自然と静かになった。
誰かに頼まれたわけでもない。
昼休みになれば二人はギターを弾き、クラスメイトはそれを聴く。
いつしかそれは、このクラスの風物詩になっていた。
演奏が終わると拍手が起こる。
「今日も良かった!」
「新曲?」
そんな声が飛ぶ中、教室の入口から見覚えのある制服が近付いてきた。
軽音部だ。
相変わらず勧誘は続いている。
「そろそろ入ってくれてもいいだろ?」
「うちなら文化祭もライブも出られるぞ」
何度断っても諦めない。
最近では少し迫力のある三年生まで勧誘に来るようになっていた。
奏はギターケースを閉じながら笑う。
「悪いけど、コピーはやらないんで」
二人がやりたいのは、誰かの曲をなぞることじゃない。
自分たちの音楽だった。
勧誘が去ると、颯太がぽつりと口を開く。
颯太
「軽音部には入りたくないけど、ライブやりたいよな」
奏
「曲も溜まってきたしな」
少し沈黙が流れる。
二人とも、同じ景色を思い浮かべていた。
奏
「あの腹に響く感じ、スタジオじゃ味わえないじゃん」
颯太
「分かる。音が体を突き抜ける感じ」
奏
「照明が反転する瞬間とか、めちゃくちゃかっこいいし」
颯太
「でかいアンプで大音量。考えただけで最高」
奏は笑いながら頷いた。
奏
「ライブに必要なものかぁ」
颯太
「うん?」
奏
「まさかインストライブやるわけじゃないだろ」
颯太
「あっ……歌詞がない」
奏
「誰が歌うんだよ。俺は歌わないぞ」
颯太
「俺もギターに集中したい」
二人は顔を見合わせる。
奏
「じゃあ、ボーカル探すか」
颯太
「イメージは?」
奏
「曲を聞き直してから考える」
颯太
「中学の時作った『DIVE』あるじゃん。俺、あのイメージのままずっとアレンジしてるよ」
奏は少し考え込む。
奏
「……パワフルな女性ボーカル?」
颯太
「うん。そのくらいの声じゃないとギターに負ける」
奏はニヤリと笑った。
奏
「探してみるか」
ギターケースを肩に掛ける。
奏
「次の休み、ライブハウス行こう」
颯太
「決まりだな」
奏は拳を軽く握った。
奏
「勧誘だ!」




