第6話 同じ高校行こうよ
二人は中学三年生になっていた。
放課後になると、颯太はいつも奏の家へ向かった。
ギターを弾き、曲を作り、録音し、聴き返しては作り直す。そんな毎日を繰り返し、書き溜めた曲は五十曲を超えていた。
奏はパソコンに並ぶ曲名の一覧を眺める。
「まだ満足できないやつ、たくさんある」
隣でギターを抱えた颯太が笑う。
「完成したやつだって、まだまだやれそうな気するし」
「完成って言ったの誰だよ」
「奏」
「あれは、その時点での完成だ」
「じゃあ、一生完成しないじゃん」
「それでいいだろ」
二人は顔を見合わせて笑った。
奏は時計を見る。
「時間が足りない」
「もう夕方だもんね」
「違う。人生の時間だ」
颯太は思わず吹き出した。
「大げさだなぁ」
「せめて同じ学校なら休憩時間にも出来るのに」
颯太は何気なく言った。
「なら同じ高校行こうよ。ギターいっぱい弾きたいし」
奏は少し考えてから聞く。
「俺、頭良いけど、お前はどうよ」
「これから頑張るんだよ。ギターの為に勉強やる」
「本気か?」
「本気」
奏は小さく頷く。
「勉強は俺が教えてやる」
「マジ?」
「絶対受かれよ。マジで」
いつも冷静な奏が珍しく真剣な顔をしていた。
「今も時間もったいないと思ってるんだから」
「そんなに?」
「これは投資だからな」
颯太は少し照れくさそうに笑った。
「がんばります!」
颯太はギターを抱え直す。
「よし!」
ジャーンとコードを鳴らす。
「勉強ロック!」
奏は思わず笑った。
「なんだそれ」
「気合い入った」
「意味はわからん」
「俺も」
二人は笑いながらギターを弾き始めた。
指のタコが少し柔らかくなってきたころ、高校入試を迎えた。受験勉強に追われ、ギターを握る時間は減った。
それでも机の横には、いつもギターケースが立てかけてあった。
入試が終わると、二人は待っていたようにギターを抱えた。毎日のように弾き続け、少し柔らかくなっていた指のタコは、また硬さを取り戻していく。
そして、合格発表の日。
掲示板を見つけた瞬間、颯太が拳を突き上げた。
「受かった!」
奏は受験番号を確認すると、小さく頷く。
「当然」
颯太は背負っていたギターケースを軽く叩いた。
「これから家行って良い? すぐに弾きたい」
奏は呆れたように笑う。
「合格発表にギター持って来てんだから、もともと来るつもりだろ」
「バレた?」
「最初からな」
帰り道、颯太が言った。
「入学したら軽音部入る?」
「入らない」
「え?」
「家の方が環境良い。それにガラ悪い奴多かった」
「先輩に気を使うとか奏出来なさそうだしね」
「音楽に年齢関係ないだろ」
「それ言いそうだと思った」
颯太は笑いながら空を見上げる。
「とにかく楽しみだね」
ギターケースを軽く叩く。
「ギター漬け生活!!」
奏も小さく笑った。
「おぅ」
第一章 「Rainbow Rainbow」 完




